RECEPTRAD「SUPER-HETERODYNE」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 自作ラジオとその他のラジオその3 > RECEPTRAD「SUPER-HETERODYNE」修復記

修理を依頼された、(RECEPTRAD)の「SUPER-HETERODYNE」 の修復をして見ました。


修復前の様子。いつもお世話になっているばざーらさんからの修理依頼品である。横幅が93cmと、大きすぎて全体の写真がかなり小さくなってしまった。この機種に関して、詳しくはこちらをご覧ください。これと少しバージョンが違うみたいです。でも日本で言えば、まだラジオ放送が始まっていない大正時代のスーパーヘテロダイン受信機です。これだけでも日米の技術力の差が解ります。かなり貴重な機種です。いつもの作業台に乗らないなぁ!困った困った。使用真空管は万能管のUV−201A(高周波増幅)、UV−201A(局部発振)、UV−201A(中間周波増幅1)、UV−201A(中間周波増幅2)、UV−201A(中間周波増幅3)、UV−201A(検波)、UV−201A(低周波増幅1)、UV−201A(低周波増幅2)である。電源は電池を使用して、B電源は+45Vと+90Vの2種類が、そのほかにA電源+6VとC電源−4.5Vが必要である。いろいろとめんどくさい。


あまり大きいので、3分割しました。一番左側のパネル部分です。これは同調ツマミと局部発振ツマミです。この頃はバリコンが連動ではなく、同調と局部発振を別々に調整しなければなりません。ツマミの外側のノブでバリコンの羽が1枚だけ動いて、微調整ができます。


真ん中のパネル部分です。各種真空管のバイアス電圧調整用のレオスタットです。


左側のパネル部分です。これは受信音量によって、検波出力をそのままスピーカーに出力するか、1段増幅して出力するか、2段増幅して出力するかを選択できます。それぞれのゲイン調整(ヒーター電力)のツマミと、一番下側は電源のスイッチです。実は出力段は、一番右の出力ジャックしか配線されていませんでした。


修復前の内部の様子。配線はご覧の通り、ネジ止めの空中配線です。各真空管から次段への伝送は、IFTとAFT(高周波と低周波のトランス)で結合しています。この頃は大容量のコンデンサーが出来なかったので、CR結合ではありません。局部発振と受信電波の混合は、一番奥に見える緑と白のコイルで周波数変換しています。


これは正面中央上部のエンブレムです。


簡単にチェックしたら、IFT3段目(写真右)の1次側の導通がありません。これが故障の主原因だと考えられますが、このIFTは入手出来ませんので、巻き直すしかありません。さーてどうしよう???周波数特性はこちらに記載がありますが・・・。修理には自作電池管ラジオ用電源装置が活躍しそうですが、フィラメントの電流が2Aも流せないので、不足ですね。A電源だけ別電源を用意します。


おや、部品の欠品がありそうである。線がつながっていない。調べてみたら、このコイルから出ている接続線の導通がない。こんな短い太い線なのに、2本とも導通がない。何でだ・・・?他の同じ様な線も導通がないので、全て交換しました。このコイルは1段目のIFTみたいです。


ここにも意味ありげに端子のみ付いている。これも部品の欠品か?原型がよく解りません?回路図など技術的資料が何もないので、推測するしかありません。


導通の無かった2段目のIFTは、分解したら端子の所で線が切れているだけだった。接続し直して復活した。良かった良かった・・・。これを分解するのにも、相当苦労しました。同調周波数は実測で約52KHz程度と低い。


UV−201Aを8本挿してみた。これだけでも迫力である。ヒーター電力だけでも全部で5V2Aで、トータル10Wも消費するのである・・・!乾電池では苦しい。真空管だけでも何万円もするであろう・・・。恐ろしい!


実は低周波増幅段は最終の2段目の出力しかジャックが付いていなかった。あちらこちら怪しい・・・。配線からみて、最初から付いていなかったと考えられる?初期のロットか?


外付けのアンテナループコイルが無いので、とりあえず自作でコイルを巻いて、同調範囲などをチェックしたいと思います。いろいろと手間がかかるラジオですね!本当は大型ループアンテナを自作したいところなんですがね。


上記コイルで実験し、コイルのインダクタンスと同調範囲の目処がたったので、改めて綺麗にコイルを製作してみました。これでアンテナは通常のロングワイヤーで大丈夫です。高周波ニスも塗って、ばっちりです!


動作確認をしているところ。各段の信号をオシロスコープで観察して、動作チェックを実施しました。UV−201Aはトリタンフィラメントなんで、点火すると明るいです。


修復が完了したところ。机に載っからないので、写真を撮るのも大変です。音はあまりよろしくないが、大正時代のラジオが見事復活しました。あちらこちら調整つまみが多いので、綺麗な音で放送を受信するのも、電源を用意するのも大変です。博物館級の大変貴重なラジオを修理させて頂き、勉強になりました!

以上、修復作業時間は約18時間、交換部品第は約500円でした。

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月22日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」と、CQ出版社から2010年4月19日発売の「CQハムラジオ」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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