三菱「HF−73」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦後mT管トランス付きスーパーラジオその5 > 三菱「HF−73」修復記

修理を依頼された、三菱電機(MITSUBISHI)の「HF−73」 の修復をして見ました。


修復前の様子。三菱電機に勤めていたという、祖父の形見のラジオだそうである。当時の三菱電機製の高級HiFiラジオである。使用真空管は、6BE6(周波数変換)、6BD6(中間周波数増幅)、6AV6(検波&低周波増幅)、6V6−GT(電力増幅)、5Y3−GT(整流)、EZ−6E5(同調指示)である。動作確認したが、通電は確認したが、放送の受信は確認出来なかったそうである。


修復前の内部様子。しばらく祖父の部屋に飾っていたというラジオだそうだ。内部は黒い埃が溜まっていて汚い。


シャーシーはHiFiラジオにふさわしく、出力管を増強したmT管とGT管の混成である。真空管は何故か自社製ではなくマジックアイを除いて、全て当時一流だったマツダ製が付いている。ひょっとすると交換されたのであろうか?


もちろんスピーカーは、三菱のダイヤトーンの高級品である。HiFiラジオにふさわしく、ウーハーとツイーターを搭載するツーウエイ仕様である。


マジックアイは、トーヨー製に交換された様で有るが、ご覧の様に全く光らず。


修復前のシャーシー上部前面の様子。これでもエアガンで埃を吹き飛ばした状態です。かなり汚れが目立ちます。


修復前のシャーシー上部後方の様子。ダイアル糸が切れている。HiFiラジオにふさわしく、電源回路にチョークコイルを用いて、ハム音の低減を図った贅沢な作りである。


修復前のシャーシー内部の様子。事故や修理の痕跡は見られないオリジナルの状態かと思ったら、ガリが有ったのかボリュームが交換され、出力管のカップリングコンデンサーが交換され、また何故かPU回路の配線が無くなっている。ブロック型ケミコンが内部に横たわっている珍しい作りだ。


修復が完了したシャーシー内部の様子。全てのペーパーコンデンサーと一部のケミコンを交換しました。ブロック型ケミコンは漏洩電流を計測したところ、230Vで0.38mAと安全なレベルなので、このままとしました。堅くなっていた電源コードも交換しました。シャーシー後ろ側にマジックアイの消灯用のスイッチを取り付けました。普段は消灯して、貴重なマジックアイの輝度低下を防止して、大切にお使いください!


タバコのヤニで、ものすごく汚れていたキャビネット前面のパネルは、外して水洗し綺麗になりました。


HiFiラジオらしく、左側のトーン切り替えは5段階に調整でき、それと連動してH/M/Lのランプが点灯する憎い設計である。右側のモード切り替えであるが、ラジオはDX/HiFiの切り替えができ、PU回路はSP/LPのイコライザーが搭載されているが、残念ながらPU回路の配線が外されている。


動作チェックしてみたがまだ不都合があるのか、残念ながら鳴らなかった。色々とチェックしていると、1枚上の写真の右側のSELECTORのロータリースイッチの配線が、ご覧の様に全て外されている。PU外部入力回路の他に、せっかくのHiFiラジオの特徴であるIFTの帯域を広げて高音を伸ばす回路まで殺されている。なんという事だ!何故こんな改悪までされたのであろうか疑問で有る?動作しない原因は、この辺に関係があるのだろうか?何か理由があって改悪の改造をされたと思うので、調査した。B電圧が掛かる接点部分を絶縁試験したところ、ここが絶縁不良となり煙が出てきた。改悪した原因はこの接点の絶縁不良による発煙事故が原因と特定できた。この部分を除外して、HiFi機能だけを生かす修復とする。


キャビネット内部に貼ってある見にくい回路図を追っかけて、一つずつロータリースイッチの回路をチェックして、やっと原因が特定できた。意外と時間が掛かるラジオでる。やれやれ・・・。


やっとの事で、ロータリースイッチの配線を復活させたところ。絶縁不良で危険なB電圧の接点には配線してませんので、PUに切り替えてもマジックアイが消灯しません。これでHiFiラジオの特徴である、IFTの帯域を拡張して高音が伸びる本来の良い音を楽しめます。


音が出たのでこれで完了と思ったら、左側の5段階のトーンコントロールを切り替えても全然音に変化が無い。よ〜く見るとトーンのロータリースイッチも何故か配線が外されている。こちらも回路図とにらめっこして、配線を復活させた。これで本来の性能を回復できた。ずいぶん時間と手間が掛かったラジオである。


修復が完了したところ。HiFiラジオの本来の音を楽しめる。ハム音も全く気にならず、当時の三菱の高級ラジオが復活した。おじいさんの形見のラジオ、大切にお使いくださいね!

以上、修復作業時間は約16時間、交換部品代は約6,300円でした。

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月22日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」と、CQ出版社から2010年4月19日発売の「CQハムラジオ」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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