シルバー「DX−300」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 自作ラジオとその他のラジオその4 > シルバー「DX−300」修復記

修理を依頼された、白砂電気(SILVER)の「DX−300」 の修復をして見ました。


修復前の様子。電池管使用のポータブルラジオである。使用真空管は、1R5(周波数変換)、1T4(中間周波増幅)、1S5(検波&低周波増幅)、3S4(電力増幅)と、電池管ラジオの王道である。キャビネットには、少し汚れが目立つ。


修復前の内部様子。電池でもAC電源でも使用可能な様だ。下部に青い放熱板のセレン整流器が見られる。


内部には回路図も貼られている。A電池は単一電池が2本使われている。


内部の電源切り替え。このラジオもACプラグを差し込む事で、電源を外部電源と内蔵バッテリーで切り替える仕組みだ。中央の赤いスライドスイッチは、内蔵スピーカーと外部イヤホンの切り替えである。


シャーシーを取り出したところ。部品が高密度で実装されており、修理は手間が掛かりそうだ。


シャーシー前面の様子。こちら側からは部品にアクセス出来ない。


シャーシーを下側から見たところ。薄いシャーシーに高密度で実装されている。


TEN真空管使用とのエンブレムが裏蓋に見られるが、何故か1S5のみNEC製が刺さっていた。不良となり交換されたのであろうか?真空管を試験してみると、交換されたと思われるNEC製の1S5は、フィラメントの導通がない。回路的にどこか問題が有って、断線したのかもしれない・・・。困った事に僕の所では、電池管ラジオの修理は基本的に行わないので、電池管の在庫がない。どこから入手しなくては、動作確認が出来ないのである・・・。


ベークライト製のキャビネットは、水で洗ってタバコのヤニを落として、少しは綺麗になりました。


いろいろとネジを外して、やっと部品にアクセス出来る様になったが、実装密度が高くて、簡単には部品交換が出来ない!


中央下部のコンデンサーが、ヒビが入っている様に見えるので、念の為交換することにする。


電池管のポータブルラジオでは珍しく、ブロック型のケミコンが使われているのだが、漏洩電流を計測してみると、多かったので交換する事にする。調べてみると、セレン整流器がショートして、ケミコンに交流電流が印可されたみたいだ。このラジオは、ACラインにヒューズが付いていないので、大事故になる直前だったのかもしれない。1S5のフィラメントが断線しているのも、この関係かもしれない。思ったより重症なラジオである・・・。


セレン整流器の代わりにシリコンダイオードを取り付け、安全の為にヒューズも追加しておきました。その他、オイルコンデンサーとケミコンも交換してあります。


ブロック型ケミコンは、普通のケミコンに交換し、結束バンドで固定しておきました。


ここで困った事が起こった。この電源スイッチ兼音量調整のボリュームであるが、スイッチを入れても導通が無いのである。これと同じ形の可変抵抗器は入手出来ず、特殊な形状の為代用品も無い。


見逃していたが、よーく見るとこれもペーパーコンデンサーだった。形状が通常のペーパーコンデンサーと違うので、気づかなかった。絶縁抵抗を計ったらやはり低下していたので全数交換する事にする。これが狭い場所に配置されており、交換に時間が掛かりそうだ・・・。いろいろと手間と時間が掛かるラジオである。


ペーパーコンデンサーなど交換が終了したところ。実装密度が高く、いろいろと順番に外さないとコンデンサーを交換出来ないなど、非常にメンテナンス性が悪い。また回路図に無い部品が付いていたり、抵抗値が異なっていたりと、非常に解りにくかった。とても時間が掛かりました。これから電源スイッチをどうするか思考中です。


注文していた1S5が届いたので、動作確認したが鳴らない。原因を調べるとこのバリコンの軸がずれているのか全域でショートしてしまっている。普通は一部の周波数でのショートで、羽を調整すると直るのであるが、このバリコンは頑張ってもショートが解消されない。普通のラジオならバリコンを交換出来るが、この様なポータブルラジオでは、寸法的に全く同じバリコンでないと交換出来ないのである。全く同じバリコンが入手出来ないので、依頼主の方と相談し、修復は断念する事になった。非常に残念である。

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月22日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」と、CQ出版社から2010年4月19日発売の「CQハムラジオ」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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