日本電波「吉田式スタンドラヂオ」修復記2


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦前〜戦時中〜終戦直後のラジオその5 > 日本電波「吉田式スタンドラヂオ」修復記その2

修理を依頼された、日本電波工業研究所の「吉田式スタンドラヂオ」 の修復をして見ました。


修復前の様子。都内の某所に飾られていたラジオであるが、是非とも復元したいとの事で修理にやって来た。使用真空管はUZ−58(高周波増幅)、UZ−57(検波&低周波増幅)、3Y−P1(電力増幅)、KX−12F(整流)と、以前直した同型のラジオと球の構成が違う。(こちらの方が新しい)


修復前の内部様子。昭和10年頃65円で販売されていた高級ラジオだそうである。詳しくはラジオ少年の博物館の内田様のHPのこちらに紹介があります。内部はケミコンが交換された様な形跡があった。電源コードが途中で切られていた。電源平滑用のチョークコイルが断線している。相変わらずヒューズも付いていないが、火が出てもキャビネットがオール金属製なんで、大丈夫なのであろうか・・・?!


エンブレムは以前と同じ様だ。真ん中の赤いのは、日の丸をイメージしてるらしい・・・。


マグネチックスピーカーはコーン紙がかなり破けているが、コイルは導通があった。電球はオリジナルは普通の40W電球が付いていたらしいが、何故か緑色の2燭光(約7W)の電球が付いている。戦前の電球の明るさの単位は”燭光(しょっこう)”でした。ちなみにろうそく1本の明るさが1燭光≒1カンデラです。


ガラス部分は洗浄して、数十年の汚れを落として、綺麗さっぱっりになりました。


スピーカー部分を外すと、こんな感じです。それぞれの4本柱の中に、真空管が入ってますが、UZ−57は背が若干高くて、取り出すのに大変苦労しました。真空管の長さのばらつきが、全く考慮されていない設計で、メンテナンス性が悪いですね。がんばって取り出したUZ−57ですが、トップグリッドキャップが破損しており、交換する羽目に。背の短い真空管が有ったので、それに交換しました。やれやれ・・・。


電気配線の修復が完了したところ。ほとんどの部品と配線を交換しました。安全の為、ヒューズも取り付けました。ここで困った事が発生しました。音量調整用のボリュームがショートされており最大ゲインとなってました。嫌な予感が的中です。音量調整用の可変抵抗器が不良でショートされたみたいです。ボリュームを交換したいところですが、ツマミを固定しているイモネジが割れており、錆び付いていて回らず、ツマミが外れません。また電源プラグの片側がシャーシーと導通がありました。原因を調べてみると、交換出来ない部分の電球への布巻線の絶縁が悪く、シャーシーの貫通部分でシャーシーと接触して導通がありました。この部分に熱収縮チューブを巻き、絶縁を確保しました。ここの配線の様に、交換出来ない部分の布巻線の絶縁が心配です。いろいろと問題が出てきますね!電源トランスは正常で、絶縁も良好でした。各種点検後、通電動作試験を実施し、正常に受信できる事を確認しました。


コーン紙が破れているマグネチックスピーカーの補修に取りかかります。幸いな事に、コイルの導通はありましたが、この頃のマグネチックスピーカーのコイルは、銅線の材質が悪く、使っているうちに電触にて断線する事が多かったみたいです。今回はこのままとし、断線したら巻き直す事にします。


接着剤にて、破れていた部分を接着して補修しました。


コイルはコーン紙の内側に配置されています。


修復が完了したところ。各種試験後、問題無さそうなので完了とする。スピーカー部分のてっぺんがつぶれていたので、補正しました。ランプはご覧のとおりかなり暗いので、明るい球に交換した方が良いかもです。感度はあまり良くないので、長いアンテナ線が必要です。なんでも鑑定団でも高額な査定が付いた貴重なラジオです。是非とも大切にお使いください!

以上、交換部品代は約7,500円、修復作業時間は約10時間でした。
何と、これと同じラジオが最近オークションに出てました!最終の落札価格は、何と104,001円でした!(以前は40万円以上の値がついてましたが・・・。)

これと同じ型のラジオを以前に修理したことがあります。詳しくはこちら

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月22日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」と、CQ出版社から2010年4月19日発売の「CQハムラジオ」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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