ナショナル「EA−655」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦後mT管トランス付きスーパーラジオその2 > ナショナル「EA−655」修復記

修理を依頼された、松下電器産業(NATIONAL)の「EA−655」 の修復をして見ました。


修復前の様子。短波付きの2バンドである。オークションの出品者の説明では一応鳴るらしいが、安全に末永く使いたいとの事で、修理&点検にやって来た。使用真空管は、6BE6(周波数変換)、6BD6(中間周波数増幅)、6AV6(検波&低周波増幅)、6AR5(電力増幅)、6X4(整流)、6Z−E1(同調指示)である。


修復前の内部様子。年代を考えると、綺麗な方である。出力トランスも断線していなかった。mT管ラジオの昭和30年代は、かなり巻線の材質も良くなり断線は少なくなってきているが、まだ2〜3割は断線する。


マジックアイの6Z−E1は、マジックアイテスターで確認したところ、残念ながら暗くしてやっと見える程度である。真空管を試験したところ、かなり劣化している。どれも交換されておらず、かなり使われた様子である。


修復前のシャーシー上部の様子。若干の埃が有ったが、エアーガンで吹き飛ばして、綺麗になった。タバコのヤニは見られないので、空気が綺麗な環境で使われた様だ。良かった良かった・・・!


修復前のシャーシー内部の様子。事故や修理の跡は見られなく、完全オリジナルの状態である。危険なペーパーコンデンサーもそのままである。ナショナルラジオ特有の豆電球の配線は、相変わらずボロボロの状態である。


回路図も残っているが、かろうじて読み込める程度である。この頃流行の、ワイヤードリモコンに対応している。それ以外は、オーソドックスな回路である。


キャビネットは完全分解し、前面のプラスチックパネルは洗浄することにした。パネルは以前分解されたのであろうか、一部のネジが欠品であった。


修復が完成したシャーシー内部の様子。全てのペーパーコンデンサーと一部のケミコンを交換しました。ナショナルラジオ特有の、ボロボロの豆球の配線も全てやり直しました。ケミコンテスターで徐々に高圧を掛けて、ケミコンの漏洩電流を試験していたところ、突然ロータリーSW付近からスパークして煙が出てきた。PU切り替え時にマジックアイとIF増幅のB電源を切断できる回路なのだが、ロータリーSW内で、僅か数ミリの間にB電圧が掛かるのであるが、この部分が絶縁不良でスパークしたらしい。この頃のラジオでは、よく起こる事である。このスイッチをバイパスしたが、PU切り替え時にIF増幅が動作したままなので、ラジオが混入する可能性もあります。またPU時にもマジックアイは消灯しません。安全の為に、仕方がないですね。


修復が完了したところ。各種試験後、問題無さそうなので完了とする。真空管は劣化しているので、鳴らなくなったら交換してください。(真空管は貴重なので、ギリギリまで使って鳴らなくなったら交換してください!)マジックアイは新品に交換しましたが、後ろに消灯用のスイッチを付けましたので、普段は劣化を防止の為、消灯して大切にお使い下さい!!!

以上、修復作業時間は約5時間、交換部品代は約4,600円でした。

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月20日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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