「電池式3球レスレックス」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 読者様の真空管ラジオのページその4 > 「電池式3球レスレックス」修復記

山形県のH.M様が修復したラジオです。(以下、ご本人様記載の文章を、そのまま転載させて頂きました。)

12、電池式3球ラヂオレフレックス型 その1(電池及びスピーカーなし) オークション価格(高額につき 秘密)

外見は米国クロスレイ社製トリルダイン特別型(1926)によく似ているが米国製ではなく、日本の小さいメーカーで組み立てられたものと思われる
   写真は修復後のもの
 スピーカーの代わりにドイツ製の受話器がついていたが残念ながら両耳とも断線している。

.. この写真は修復前

現況と回路の特徴

 レフレックス方式は昔回路図で見たことはあったが、現物は初めてである、最初に回路を読む、改造の跡は無くオリジナルのままのようだ。シャーシーは杉板、正面のパネルはベニヤ板である。電源用の1メートル足らずの5本束になった布まきのコードが付いているが、本体の中で−はと直結しており、事実上4本で、バイアス電位の為の回路はない。フイラメント電圧の半分がバイアスになるのであろう。回路はすぐ理解できた。初段を高周波増幅 検波後の低周波増幅と2回使うことである。そのためにAFT1個はどうしても必要な回路である。直径、2mm位の錫メッキ銅線を使った立体配線で、同調コイルも立体的なかご型に出来ていて、しかもカラフルである。2段目のコイルに回転できる部分があり、再生の調整のようだ。



 真空管はUX−201‐A 3本使用、(メーカーはElevam,1本・Hope,2本)フイラメントは3本ともOK,AFT」と表示のある1:3と1:6の2個ついているが1:3の側断線、レオスタットは2個とも生きている、当時の電池との接続コードにプレートがついていて、B‐、B22,5、、となっており、A+B‐が一緒になっている。 2箇所のコイル(5回路)はみな断線なし キヤビネットは上蓋を開ければ中が見えるようにできていて、正面パネルにバリコン2個、レオスタット、フイラメントスイッチ、スピーカージャック、再生調整つまみ、が直接ついている。ベニヤ板の正面パネルが分解しそうになっていたので、木工ボンドで固める。4隅の脚が1箇所なかったのでラワン材で作る、上蓋の蝶番えも付け直した。

エリミネーターの製作

 電源がなければ試験もできない。できれば電池を探せばいいのだが、かえって大変なので、ありあわせのものを生かして一般的な電源を作ることにした。電源も直流にしなければならないので、ダイオードを探す。
 使えなくなった20年ほど前のビデオレコーダーを分解してみると、4個セットのダイオードと大容量のケミコンがついていた。また例のオークシヨンで、小さいシヤシーに電源トランスと整流管、ブロックコンデンサーのついた格好のものを見つけて早速購入した。(2500円)その他抵抗器、コンデンサー、ラグ板、ターミナルその他で2500円ほどで部品がそろった。電源は5V、B25V、B90〜135V、のほかも作ってみる。そのために次のような回路にした。

電源部回路



 
 シャシー上と内部

 上の回路図で、今回作ったものは、R1=420Ω、R2=7KΩ、R3=50KΩ、としR4は無くてもまにあうがの電圧安定のためとスイッチを切っても残る電圧を逃がすために200〜500KΩを入れておきたい。A電源は6,3Vをそのまま使ったので電圧が高すぎる、201−A3本使った状態で26オームを通せば良いのだが2,2オームの抵抗を入れたので、やや高めの5,1Vとなった。

本体の修復

 A電源をつないで点灯試験をするが点かない、立体配線は大部分がネジ締めであり、はんだ付けのところは僅かである。テスターで導通を調べると、0Ωであるべきところが数Ωあったりする。ネジ締めのところは全て紙やすりで磨いた。スイッチの接点も磨いて生き返らせた。これで3本とも点灯確認。 レオスタットが検波管用に1個、他の2本用に1個別々についており、5Vから2,5Vくらいまで落とす事が出来るようになっている。断線しているAFTは逆にしてFG側をBPにしてFG側はCR結合にして実験をする。真空管が働かない。いろいろ差し替えて調べてみると、1本は何とか働く.1本はプレートが、もう1本はグリットが足まで届いていない事が後で解かった。Elevam,1本・Hope,1本アウト) 幸い12Aの手持ちが2本あったので、それを使うことにする。

受信試験

 終段のAFTは断線のためCR結合での試験であるが、受信可能である。試験は全て電燈線アンテナで、窓枠をアース代わりにしていたが、アースを完全なものにすると発振も少なく安定して受信できるようになる。ラジオの基本はアンテナとアースだということを忘れかけていた。当時の放送は周波数の低い方で550KCであったので、NHK山形第1(540KC)は受信に苦労する、バリコンに20〜30PFかさ上げをして受信している。

レオスタットの効用

 検波管はフイラメント電圧を4V程度まで下げても働く、ぎりぎりまで下げて使うと、発振も少なく音質も良くなる。もう一つの方は音量調整として使えることになる。レオスタットが二つついている理由が納得できる。なお検波管のB電圧は20V〜25Vが適当と言う事も確かめられた。また増幅管のバイアスのためのC電圧であるが、なくても働くが−4V程度あればいいようだ。当時のC電池は4,5Vが定番であったようである。

その後のこと

 AFTが不完全なために巻きなおしを思い立った。.西崎電気さんで出来るとの情報があったのでコアを送ってお願いした、もとのケースに入れたい為である、結果は新しいコアで作ってくれたが、少し小ぶりだったのでうまく元の鞘に納めることができた。その後の試聴では際立って改善したとはいえないが、修復をする者にとっては大いに満足である。 また(マツダランプ)のUX−201−AとCunninghamのCX−301Aが手に入ったので、それらで働かせている。



誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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