テレビアン「M−44」修復記その2


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修理を依頼された、山中電機(テレビアン)の「M−44」 の修復をして見ました。


修復前の様子。大切な形見の品であるとの事で、出来る限りのレストアを希望された。使用真空管はUY−224B(再生検波)、UX−26B(低周波増幅)、UX−12A(電力増幅)、KX−12F(整流)である。一度直してもらって、最初のうちは音が出るそうであるが、数分経つと聞こえなくなるそうである。真空管の不良であろうか?(このラジオと同型のラジオは、以前にも修理した事があります。詳しくはこちら。)


修復前の内部様子。何と初段には、RCA製のUY−224のナス管が挿してあり、シールドケースに入らなかったのであろうか、銅板で遮蔽されている。内部はどんな修理がなされているのか、不安である。


内部には、宮城県電気局白石出張所の検査表が貼ってある。試験は昭和16年に実施されたらしい。持ち主の方の名前も書かれている。貴重な品だ!絶縁抵抗は50MΩとある。PSE法に対応しているのであろうか・・・(笑) 当時は電気は夜間だけの通電で、従量制ではなく定額制だったので、消費電力を計測していたのである。


修復前のシャーシー上部の様子。若干の錆は出てきているが、年代を考えると、状態は良いようだ。上部の低周波チョークは断線しており、配線が外されている。


修復前のシャーシー内部の様子。最近、修理の手が入った様であるが、当時の部品や配線が残っていたりと、まだまだ危険なところが多い修理である。ヒーター中点のケミコンの耐圧が160Vだったり、ヒューズに5Aの物が付いていたりと、怪しい修理である。ヒューズが5Aでは、全然役に立ちません!ああ、恐ろしや・・・。


ブロック型コンデンサーも追加されているが、少々大型過ぎて、12Fがかわいそうである。また段間低周波トランスも最近の物が追加されている。完全分解にあたり、回路図を書いてみました。


何と、マグネチックスピーカーも巻き直しが実施されていた。それなりの知識がある人が、修理した様であるが・・・。


シャーシーは再塗装をご希望との事で、完全分解し、洗浄しました。(写真は洗浄後です。)


キャビネットは家庭用洗浄剤で洗浄し、万能ワックスクリーナーで磨きました。サランネットは張り替えを実施し、飾り金具も再塗装しました。見た目はかなり綺麗になりました。


シャーシーは錆を落として、防錆処理後、再塗装を実施しました。他のトランス等の再塗装できる物はすべて再塗装してあります。どうです?


再塗装後、部品を実装したシャーシーの様子。再塗装できる物は、すべて再塗装しました!


綺麗ですよね?前の写真と比べて見てください!


再塗装後のシャーシー内部の様子。真空管ソケット等は、洗浄後接触不良を防止する為にバネを強め、接点はヤスリで磨きました。これから電気配線にかかります!


電気配線が完了したシャーシー内部の様子。全ての配線をやり直し、抵抗類やコンデンサー類も全て余裕を持った新品に交換しました。各種絶縁試験も実施しましたが、結果は良好でした。最初は回路の発振に悩まされましたが、初段のアースの位置を変えて解決しました。残念ながら、ナス管のUY−224がエミ減で、数分経つと音が小さくなったので、手持ちのUY−24Aに交換して良好になりました。


修復が完了したところ。しばらくテストして問題無さそうなので完了とする。僕の所は電波が強いので、結構大きな音がします。形見の大切なラジオ、末永くお使いください!

以上、修復作業時間は約14時間、交換部品代は約5,000円でした。

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