ナナオラ「70型」修復記
(続)真空管ラジオ修復記 > 戦前〜戦時中〜終戦直後のラジオその3 > ナナオラ「70型」修復記
修理を依頼された、七欧通信機(NANAOLA)の「70型」 の修復をして見ました。
修復前の様子。久々に戦前のラジオの登場である。使用真空管はUY−227(再生検波)、3Y−P1(電力増幅)、KX−12F(整流)であった。オリジナルはナス管使用でUY−227(再生検波)、UY−247(電力増幅)、KX−112B(整流)である。ナス管のUY−247とST管のUY−47は交換性があるが、UY−47Bは基本的に規格が別物である。それが47Bの代替管3Y−P1に置き換わったらしい。B電圧も47Bの方が、定格が低いので、注意が必要である。3Y−P1なら、何とかなるであろうが・・・。回路は基本的にはこんな感じであろうか?
修復前の後ろ側の様子。発掘されてそのままの状態であろうか?内部は埃まみれである。幸いにも、キャブネットの虫食いは無い。
修復前の内部の様子。ものすごい埃の量である。奥にナス管のUY−227が見られるが、果たして生きているであろうか?マグネチックスピーカーのコイルは、根元の線が切れており、元からつなげたら導通は有った。良かった、良かった・・・。
銘板には、ナナオラ70型と記載がある。戦前のラジオには珍しく、電源に90Vのタップが付いている。この電圧のタップは、特に終戦直後に電力事情が悪くて、夜に電灯線電圧が低下した時に利用されたので、戦後直後のラジオには標準装備なのであるが・・・。
修復前のシャーシー上部の様子。埃の下は、凄い錆であった!
修復前のシャーシー内部の様子。あまり状態は良くない様だ。まあ年代を考えると仕方がないが。
おや、配線の一部にビニール線が見られる。段間の低周波トランスと、電源のブロック型のペーパーコンデンサーが交換されている。
上部の電源ユニットらしき箱を外すと・・・。
電源トランスの隣に、新しく追加されたブロック型のケミコンが入っていました。昭和30年代頃に一度修理されたみたいですね。電源トランスは絶縁等をチェックして、何とか使えそうです。
交換されたと見られる段間の低周波トランスは、こんな変な形をしています。残念ながら、これも断線していました。
全ての部品を取り払って完全分解し、シャーシーはいつもの様に再塗装する事にしました。サンダーで錆を落とすのが結構大変です。
シャーシーを再塗装し、主要部品を取り付けたところ。どうです?かなり綺麗になりましたね!これから電気配線の修復に取りかかります。
ツマミはネジが錆びていて取り付けできないので、依頼主の方と御相談して、時間が掛かるみたいですがこちらで複製をして頂く事にしました。
電気配線が完了しました。全ての配線をやり直して部品も交換していますので、安心して使用できます。真空管は劣化してましたが、何とか音が出ました。
修復が完了したところ。各種絶縁試験も良好でしたので、これにて完了とする。戦前の並三ラジオですから、音は大きくないし、感度も悪いです。また戦前の受信周波数範囲なんで、周波数の上限は1500KHz程度です。また、ツマミの複製をこちらで実施して頂きました。本物と見分けが付かない程、完璧なすばらしい仕上がりでした!サランネットも張り替えをしてますので、見た目はかなり綺麗になりました。数十年ぶりにダイアル窓に明かりが灯り、当時の音で現在の放送を聞かせてくれています。どうですか・・・?大切にお使いください!
以上、修復作業時間は約16時間、交換部品代は約6,500円でした。
誠文堂新光社から2007年11月中旬に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!