東芝「51型」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦前〜戦時中〜終戦直後のラジオその2 > 東芝「51型」修復記

修理を依頼された、東芝(マツダ)の「51型」 の修復をして見ました。


修復前の様子。戦前の高一ラジオである。東芝の51型は昭和15年前後の製品で、いわゆる放送局型第123号受信機の原型となったST管トランスレスラジオの初期の貴重な製品である。詳しくは林様のページをご参照ください。真ん中の電源スイッチが欠品である。元々の真空管構成は、12Y−V1(高周波増幅)、12Y−R1(再生検波)、12Z−P1(電力増幅)、24Z−K2(整流)、B−37(安定抵抗管)であったはずだが・・・。キャビネットの状態は大変良く、傷や塗装の痛みもほとんど無い!


修復前の内部様子。残念な事に、マグネチックスピーカーが交換されて、パーマネントダイナミックスピーカーが付いている。マグネチックスピーカーはコイルが断線し易いので、交換されてしまったのであろう。おや、大きなトランスが見られる。東芝51型は、トランスレスラジオであるはずであるが・・・?残念ながら、改造された物らしい。123号もそうであるが、この頃のトランスレスラジオは、まだ初期の段階なので製品回路と真空管の完成度が悪く、ヒーターとカソードの絶縁耐圧の問題からこのラジオも故障が多く、やむを得ずトランス付きに改造されてしまったのかもしれませんね。付いていた真空管は、UZ−78(高周波増幅)、UZ−6C6(再生検波)、UZ−42(電力増幅)、KX−80BK(整流)と、何とも凄い構成である。トランスもやたらと大きい。何ともアンバランスである。一般的な(戦後直後の)高一ラジオの真空管構成は、UZ−6D6(高周波増幅)、UZ−6C6(再生検波)、6Z−P1(電力増幅)、KX−12F(整流)といった所なのだが・・・。


このラジオ、何と驚く事に鳴るんだそうである。レストアされた物であろうか?でもこの頃のラジオは鳴ると言っても危険な場合が多いですから、実用的に使うには、修理&点検が必要です。修理方針は、依頼主の方のご希望によりマグネチックスピーカーに交換したいとの事なので、出力管をUZ−42から6Z−P1に交換して進める事にしました。


修復前のシャーシー上部の様子。シャーシーの汚れがひどく、錆も見られる。シャーシーにあちこち加工がなされており、改造前の面影は真空管ソケットの旧真空管名称のみである。


修復前のシャーシー前面の様子。ダイアル目盛りは、緑色の半円が周波数、赤の四角は0〜100目盛りである。戦前のラジオなんで、時計方向が周波数が下がる方向で、現在のラジオとは逆である。


修復前のシャーシー内部の様子。大幅に改造され、オリジナルの姿は何処にも見られない。タンゴの立派な電源トランスと、スターの高一コイルが使われている。SW付きのボリュームが付いているが、何故かスイッチに配線されておらず、電源は直結で切ることが出来ない。また何故か再生バリコンも無く、再生回路も配線されていない。


シャーシーは完全分解し、いつもの様に再塗装しました。改造の為、シャーシーは大きな穴が開けられており、そこに別の鉄板がリベット止めされており、トランス等が取り付けられていました。


再塗装したシャーシーに主要部品を取り付けたところ。トランスも黒く再塗装しましたので、新品の輝きです。ブロック型ケミコンは、飾りで実際には使用しません。


オリジナルと思われる音量調整用の可変抵抗器は10KΩなのに、経年変化で実際は4KΩ程度しかなく、新品に交換しました。欠品だった再生調整用のミゼットバリコンは、新品のタイトバリコンを取り付けました。これから電気配線を実施するところです。


修復が完了したシャーシー内部の様子。全ての配線をやり直し、抵抗やコンデンサー類も全て新品ですので、安心です。


依頼主のご希望により、コイルを巻き直して再塗装したマグネチックスピーカーを取り付けました。これで本来の戦前の高一ラジオの音が楽しめます。


修復が完了したところ。調子よく懐かしい音を聞かせてくれます。5球スーパーより、感度は悪いですが、独特の音がします。ツマミは左が再生調整、中央が電源、右が音量調整と、オリジナルの状態に戻しました。是非とも大切にお使いください!


その後、依頼主の方から使用している写真をお送り頂きました。大切に使って頂いている様で、うれしく思います。ありがとうございました!

以上、修復作業時間は約15時間でした。

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