シャープ「特選受信機」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦前〜戦時中〜終戦直後のラジオその1 > シャープ「特選受信機」修復記

修理を依頼された、早川金属工業(SHARP) の「特選 四球」受信機の修復をして見ました。


修復前。戦前のラジオなのに保存状態が良かったのかシャーシーの錆も無く、そんなに汚れていなくとても良好である。内部の文字から、昭和13年6月の製造らしい。真空管はすべてオリジナルと思われるマツダ製が使用されている。整流管の12Fは、戦前型の4本足のタイプが刺さっていた。使用真空管はUY−56(再生検波)、UX−26B(低周波増幅)、UX−12A(電力増幅)、KX−12F(整流)で、戦前並四のオーソドックスな球構成である。


シャーシー上部、錆も無くて一見良好ではあるが・・・。


シャーシー内部は、一度派手に燃えたらしくて、焦げた抵抗があり、内部はすすけている。やはり真空管ラジオという物は、よく火を吹くらしい。あ〜恐ろしや〜っ!!電解コンデンサーはブロックコンデンサーが付いており、一度修理されたらしい。幸いな事に、チョークコイルも段間トランスも断線はしていない。(よかった、よかった・・・。)


マグネチックスピーカーはコーン紙が補修された跡がある。多少虫食いになっている。残念ながらコイルが断線しており、巻き直しを実施した。この頃のコイルはよく断線している場合が多い。コイルの巻き直しは髪の毛程の太さの0.1mmのUEW(ウレタン線)を3500回ほど、途中で切れない様に慎重に巻く必要があるので、結構手間と時間が掛かる作業である。フレームは汚れているので、再塗装を実施して美しくなった。


シャーシーは完全分解後洗浄して、再塗装を実施した。もちろんシャーシー内部も再塗装してあります。ついでに電源トランスも再塗装を実施した。再塗装は手間が掛かるが、修復後は大変美しく仕上がる。取り外した部品はすべて洗浄し、真空管ソケットなどは接触不良を防止するためにヤスリで接点部分を磨き、接点復活剤を塗布した。


修復が完成したシャーシー内部。我ながら綺麗に出来たと思う。部品が小型化しているのですっきりしている。抵抗やコンデンサーはすべて電力や耐圧に余裕を持たせた新品に交換した。今後のメンテナンスの為にスピーカーの線を取り外せる様にコネクターを取り付けた。配線は10色に色分けした耐熱電線を使用し、またトランスの出力線もエンパイアチューブをすべて交換した。これで安心してラジオを使用出来る。心配なのは真空管の寿命だけ!


シャーシー上部もご覧の通り、大変美しい。電源プラグは当時の新品丸形プラグと袋打ちコードを使用して、雰囲気を出している。


修復が完成した所。木製キャビネットはワックスクリーナーで汚れを落とし、つやを出している。調子も大変良く戦前の並四のマグネチックスピーカーの独特の音を聞かせてくれる。是非とも大切に使ってください。


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