IMPERIAL修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦前〜戦時中〜終戦直後のラジオその2 > 「IMPERIAL」修復記

修理を依頼された大阪IMPERIAL PHONORADIO社製の「KNIGHT RECEIVING SET」 の修復をして見ました。


修復前の様子。人気で貴重な純カセドラル型ラジオである。現在の使用真空管はUY−56(再生検波)、3Y−P1(電力増幅)、KX−12F(整流)であるが、オリジナルはソケットの刻印からUY−227(再生検波)、UY−247(電力増幅)、KX−112(整流)でナス管であったらしい。ちょっと再生検波にUY−56を使うのは・・・。本来はUY−27を使いたい所であるが。依頼主の方は通電したが、放送は受信出来なかったそうである。非常に危険ですので、いきなり通電は避けた方がいいです。残念ながらツマミが1個欠品である。キャビネットの状態は年代相応であろうか?幸いな事に大きな損傷もない。


修復前の内部の様子。若干の汚れや錆が見られるが、年代を考えると保存状態は良い方であろう。残念ながら、いつもの様にマグネチックスピーカーのコイルが断線しており、巻き直しが必要である。このSPは見るからに高級品らしく、コイルを外すのもあちこちネジを外さないといけない。


修復前のシャーシー上部の様子。埃がものすごい!右上のAFC(低周波チョークコイル)は交換されて、AFT(段間低周波トランス)の2次巻線が使われているが、その巻線も切れたのか、3KΩの大型抵抗がパラに接続されている。これは新品のAFCに交換する事にする。回路図はこんな感じであった。227のプレートに250pFが付いているが、本来は4mHの高周波チョークコイルの後に付くべき物の様な気がするが、何度も確認したが間違えなくこの位置に付いていた・・・。組み立て時に間違えたのであろうか?


修復前のシャーシー内部の様子。幸いな事に、大きな改造や修理の跡はない。昔の半田の材質(組成)が悪かったのか、現在の半田より高温にしなくては溶けないので、配線を外すのに非常に苦労した。メーカー製なのかラジオ屋の組み立てセットなのか、非常に半田付けは下手くそである。半田が溶けにくかったからであろうか?内部の左側はブロック型のペーパーコンデンサーであるが、この大きさで2μFが2個と、1μFが2個である。また例の如く、AFT(段間低周波トランス)の1次側が断線しているので、これも交換する事にする。また、このラジオも恐ろしい事にヒューズが付いていない!ああ、恐ろしや・・・!( -_-)


まずキャビネットのレストアを実施しました。汚れはスーパーオレンジという家庭用洗剤で落とした後に、万能ワックスクリーナーで磨きました。サランネットも張り替えを実施し、大変綺麗になりました。ダイアル窓の飾りは、金属ではなくベーク製だったので、再塗装は実施せずに外して洗剤で洗浄しました。


修復が完了したシャーシー内部の様子。全ての抵抗&コンデンサーは交換し、配線もすべてやり直しました。AFCとAFTも交換しました。電源トランスの入出力線のエンパイアーチューブも安全の為にすべて交換しました。もちろんヒューズも取り付けました。各種絶縁試験も良好でした。


修復が完了したところ。戦前の並三ラジオなんで、感度も悪く音も小さい。高音ばかりキンキン出て、あまり聞き易くない音である。整流管12Fが、やや弱っている。是非とも大切にお使いください。

以上、ここまでの修復作業時間は約16時間程度でした。

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