ナショナル「DX−490」修復記その1


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修理を依頼された、松下電器産業(NATIONAL) の「DX−490」の修復をして見ました。


修復前、mTレス機ではあるが、普通の保存状態で汚れも程々である。依頼主の話しでは、ボンと音がして、鳴らなくなったそうなので、コンデンサーが破裂したのであろうか?依頼主の思い出のラジオだそうで、是非とも修復したいとの事で依頼を受けた。


内部を見てみる。年代相応の汚れ具合である。使用真空管は12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)と、トランスレス式のオーソドックスな構成である。短波付きである。チェックしたら35W4のヒーターが切れていた。ヒューズに2Aが付いていた事から、何かの故障が原因でヒューズが飛び、そのヒューズが2Aの大きな物に交換された事から、次はヒューズよりも先に整流管のヒーターが切れたと考えるのが自然な推理だろう。ヒューズは正規の物を取り付けましょう。(普通ヒューズは0.5A〜1Aで十分です。)現在、35W4は貴重で新品で1000円以上と高価です。パイロットランプのソケットが交換されている。


シャーシーを外して見たら、ダイアル目盛りごと取れるタイプであった。まず内部の埃を圧縮空気で吹き飛ばして清掃を実施した。状況はそんなに悪くなさそうであるが、若干錆が見られる。


とりあえずシャーシーからスピーカーなどへ線が繋がっていてメインテナンスがしにくい事から、いつもの様にコネクターを取り付けて、シャーシーを本体から分離できる様にした。破裂したコンデンサーも、焦げた抵抗もない。パイロットランプは何故か100V5Wの球が付いている。(普通は6.3V0.15Aの球を使用する。)また1箇所、コンデンサーがフイルムコンデンサーに交換された痕があることから推測すると・・・
1.ペーパーコンデンサーが絶縁不良で発熱してボンという音と共に破裂、ヒューズが飛ぶ。
2.ラジオが鳴らなくなり調べてみるとヒューズが飛んでいるので、とりあえず手持ちの大きな2Aのヒューズを挿して電源を入れてみる。
3.過電流が流れるがヒューズが2Aと以前の倍の電流の物を取り付けたので飛ばずに、まずパイロットランプが先に切れる。その後、35W4のヒーターにその分の電流が流れてヒーターが切れる。
4.ヒューズが切れていないのに電源が入らなくなり、修理しようと思った前の持ち主が中と開け破裂したコンデンサーを発見し交換する。またパイロットランプも切れていて交換するが、わからずに100V用を取り付けてしまった。
5.整流管のヒーター切れは結局わからずに修復出来ずに修理をあきらめてそのまま放置する。
・・・というストーリーでしょうかねぇ?


プラスチックキャビネットは、水洗いを実施して40年間の汚れを落としてすっきり綺麗になった。


修復が完成した所。1時間程テストしたが問題が無さそうなので完了とする。調子も良い。内部は信頼性の低いペーパーコンデンサーと電解コンデンサーをすべて交換し、電力系の抵抗も交換してある。接点は接点復活剤にて清掃を実施し、ダイアル可動部分は潤滑剤を塗って動きを良くしてある。電源コードも交換して保守用の真空管も一式新品で準備しました。これでしばらくは安心してラジオを楽しめます。是非とも大切に使ってください。


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