コロンビア「R-53」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦後ST管スーパーラジオその7 > コロンビア「R-53」修復記

修理を依頼された、日本コロンビア(COLUMBIA)の「R-53」 の修復をして見ました。


修復前の様子。廃業した喫茶店に飾ってあったラジオを譲って頂いたそうである。ボリュームとチューニングのみの、かなりシンプルな印象である。使用真空管は回路図上では、12W−C5(周波数変換)、12Y−V1A(中間周波数増幅)、12Z−DH3A(検波&低周波増幅)、12Z−P1A(電力増幅)、KX−80BK(整流)と、戦後直後の5球スーパーで、かなり貴重なヒーター電流が0.175A系の真空管ばかりである。これらはもう、今となっては入手は絶望的です。実際刺さっていた真空管は12Y−V1Aではなく、12Y−V1である。これではヒーター電流が0.15Aと違っており、ヒーターを直列に接続しているこのラジオでは、ヒーター電圧にアンバランスが生じ、よろしくないのである。最初からヒーターを直列接続ではなく並列接続にしておけば、この様な問題は発生しないのに・・・。


修復前の内部様子。埃が積もっておりかなり汚れている。電源コードが切られている。


キャビネット下部には、回路図も貼られている。セミトランスレスラジオで、整流管を除く4球のヒーターが直列に接続されているらしい。回路を見ると、整流管直後のB電圧が、出力トランス以外の回路にも使用されている。回路上にはPU切り替えが付いているが、電源スイッチ兼用のボリュームと連動となっているが、一体どんなスイッチなんだろう・・・?不思議だ!


修復前のシャーシー上部の様子。これでもエアガンで埃を吹き飛ばしたのですが・・・。上の円盤状の物が、バリコン直結のチューニングである。この頃からペーパーコンデンサーではなく、ブロック型のケミコンが使用されている。


修復前のシャーシー内部の様子。事故や修理の跡は見られない。貴重な終戦直後の5球スーパーである。当時はかなり高価な製品だったのであろう・・・。部品の実装密度が結構高いのである。


電気回路の修復が完了したシャーシー内部の様子。全てのペーパーコンデンサーと電解コンデンサーを交換しました。ガリの予想されるボリュームも交換しました。回路をチェックすると、一部おかしな配線だったので、修正しました。断線の予想される出力トランスも交換しました。切られていた電源コードも付け直しました。前述のヒーター電流の関係で、12Y−V1Aはヒーターが12V/0.175Aなので、定常での抵抗値は68.6Ωであるが、12Y−V1は12V/0.15Aなので、抵抗値は80Ωである。これを補正するために、ここのヒーターに計算値では480Ωを並列に接続すると良い事になるので、近似値の510Ω1Wの抵抗を接続した。これでヒーター電圧のアンバランス問題も解決です。


修復が完了したところ。各種試験後、問題無さそうなので完了とする。内蔵アンテナでも受信出来ますが、感度が悪ければアンテナ端子に線を延ばしてお使いください。終戦直後の貴重な5球スーパーラジオです。柔らかな音をお楽しみください。

以上、修復作業時時間は約10時間、交換部品代は約4,600円でした。

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月22日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」と、CQ出版社から2010年4月19日発売の「CQハムラジオ」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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