嘉穂無線「TU−896」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 自作ラジオとその他のラジオその4 > 嘉穂無線「TU−896」修復記

修理を依頼された、嘉穂無線の「TU−896」 の修復をして見ました。


修復前の様子。昭和50年代に、福岡の嘉穂無線という会社が販売していた真空管ラジオキットである。自分で組み立てて改造したが、うまく鳴ってくれないとの事で修理&点検にやってきた。使用真空管は、6BE6(周波数変換)、6BD6(中間周波数増幅)、6AV6(検波&低周波増幅)、6AQ5(電力増幅)、6X4(整流)、6E2(同調指示)である。オリジナルでは、電力増幅が6BM8の5極管部分を使用し、ダイオード整流だったらしい。また6BM8の3極管部分は、使用されていなかった。だったら6AV6を省略して3球でも良いのであるが・・・。


修復前の上部様子。電源と出力のトランスを交換したそうである。一応鳴るが、感度が悪く音が歪むという事で修理&点検にやって来た。同調バリコンのトリマーの誘電体の雲母板が欠品しており、トリマーの役を果たしていなかったので、代用品で修復した。これでトラッキング調整が可能となった。感度が悪かった原因はトラッキング調整がうまく出来ていなかったからであろう。


修復前のシャーシー内部の様子。とても綺麗に配線がなされている。実体配線図に一部誤りが有るが、回路図どおり正しく組み立てられていた。さすがである。IFTの端子に表示がなく、推測で配線したとの事であるが、発振器とオシロスコープで確認したところ、配線と同調周波数は大丈夫であった。


出力トランスを交換したとの事であるが、出力管が6AQ5なのにトランスは7KΩに配線されている。おまけにスピーカーは16Ωの物が付いている。これだと実質的に、出力負荷は14KΩとなってしまう。6AQ5の負荷抵抗は5KΩなので、このミスマッチングが音の歪みの原因かもしれない。スピーカーを8Ωの物に交換し、トランスのタップも5KΩに配線し直しました。


チューニングはバーニアダイアルに改造されており、マジックアイ(6E2)も付加されている。左下側の赤いスイッチは、マジックアイの消灯用である。なかなか立派に改造されている。この時点で通電確認し、IFTとトラッキングの調整を実施し、感度や音の歪みは改善されました。出力管のカソード自己バイアス抵抗が680Ωと6BM8用が付いていたので、6AQ5用に420Ωに交換しました。出力管のカップリングコンデンサーも、念のためオイルコンデンサーからフィルムコンデンサーに交換しました。これで安心して使用できます。


アンテナコイルをバーアンテナに変えて欲しいとのご要望でしたので、バーアンテナを取り付けました。


修復が完了したところ。各種試験と調整後、問題無さそうなので完了とする。調子よく柔らかな音で鳴ってくれる。大切にお使いくださいね!

以上、修復作業時間は約7時間、交換部品は全て支給品を使用しました。

以前、同型のラジオを読者の方が組み立てました。詳しくはこちら

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月22日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」と、CQ出版社から2010年4月19日発売の「CQハムラジオ」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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