ハムズオフィス「TS−4st」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 自作ラジオとその他のラジオその4 > ハムズオフィス「TS−4st」修復記

修理を依頼された、ハムズオフィスの「TS−4st」 の修復をして見ました。


修復前の様子。使用真空管は、UZ−6D6(高周波増幅)、UZ−6C6(再生検波)、UZ−41(電力増幅)、KX−80(整流)である。シャーシーの保護フィルムも剥がしていない状態である。


修復前の内部様子。最近のキットなので、綺麗な状態である。これから念入りに、配線ミスをチェックする事になる。


電源トランスであるが整流管の5V巻き線の電流容量が5V/1Aと記載されているが、このキットの整流管KX−80のヒーター消費電流は5V/2Aである。定格の2倍の電流を流して良いものか?キットとしての完成度に疑問が残る。また、出力トランスが小さ過ぎて音量を上げると音が歪む可能性がある。これも前回のTS−7stと同じ問題である。


前回のTS−7stでも指摘した様に、シャーシーと高電圧が掛かるソケット部分に1mmの間隔もない危険な設計である。ここに埃やゴミが入った場合、B電圧がスパークする危険がある。是非とも改善して欲しいところだ!


致命的な配線ミスが見つかった。UZ−6C6のグリッドのシールド線が、芯線までアースに接続されていた。芯線は高一コイルのGと接続し直した。これで音が出ると思ったら、まだ配線ミスが有るらしく、まだ動作しない。


UZ−41の自己バイアスのバイパスのケミコンの極性が+−逆に接続されていたので、修正した。これは致命的ではありませんが、ケミコンが破裂する原因になります。


何とUZ−6C6のソケットが、180度逆である。そして恐ろしい事に、このソケットは太いヒーターの真空管の足が、180度逆でも刺さるのである。何と恐ろしいソケットなのか!真空管がどんな方向でも挿入できるソケットなんて!!!配線を全て外し、ソケットを反転しました。やれやれ・・・。


これが問題のソケットである。太いヒーターのピンと、細いその他のピンの大きさがあまり変わらず、真空管がどの方向でも刺さってしまうのである。真空管を挿入するときは、方向に注意が必要である。ヒーター部分に黒く印を付けましたので、真空管を刺す時に注意して挿入してください。また、各ピンのリベットの頭が出ていて、この頭とシャーシーの間に高電圧が掛かるピンが有って大変危険な箇所がある。改善して欲しい!


そのほか、アンテナコイルの1次側の配線を修正しこれで完了と思ったが、まだ音が出ず!原因はこのRFCの断線だった。まさかキットの新品の部品が断線してるとは・・・。やっとのことで原因究明してRFCを別の新品に交換したら、ラジオはかすかに聞こえるが、再生が掛からないのである。まだ配線ミスがあるのだろうか?


よーく回路図を眺めていると、再生回路の220pFのコンデンサーが、交換したRFCの前に付いている。これでは高周波成分がバイパスされて再生が掛からないのである。


220pFのコンデンサーをRFCの後側に付け替えて、無事に再生が掛かる様になった。これはキットの回路の設計ミスである。説明書には記載がないが、2つのトリマコンデンサーのトラッキング調整は、測定器がなければ難しい。トラッキング調整を実施して、やっとまともに放送が聴ける状態になった。


修復が完了したところ。スピーカーの効率が悪く、あまり大きな音が出ない。もっと簡単に修理が完了すると思ったが、ものすごく手間取ったラジオであった。キットとしての完成度はかなり低い気がする。大切にお使いください。


その後、依頼主の方から写真を送っていただきました。外付けで自作のスピーカーを取り付けて楽しんでいるそうです。喜んで頂き、光栄です。大切にお使いください!

以上、修復作業時間は約10時間、交換部品代は約200円でした。

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月22日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」と、CQ出版社から2010年4月19日発売の「CQハムラジオ」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!


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