徳田商店「TRC-52型」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦前〜戦時中〜終戦直後のラジオその6 > 徳田商店「TRC-52型」修復記

修理を依頼された、徳田商店(TRC)の「52型」 の修復をして見ました。


修復前の様子。エリミネーターラジオが登場する前の、蓄電池式のラジオである。一応鳴るらしいが、安全に使用するために、修理&点検にやって来た。


修復前の内部様子。使用真空管は、UX−201A(高周波増幅)、UX−201A(再生検波)、UX−201A(電力増幅)の3球である。電源部分は、別途購入したそうである。


徳田商店の当時の卸商報にも記載がある。卸値で22円と記載がある。


これが別途購入したという、誰かが自作した電源装置であるが、半田付けなどを見るとあまり上手ではない。電圧を計測したところ、このラジオにはB電圧が高すぎて不向きであった。このラジオには、A電源として6V/750mA程度、B電源として45Vと90V/30mA程度の電源が必要であるのに対し、この電源装置は無負荷であるが、A電源で8V以上、B電源で140V以上の電圧が出ていた。負荷電流が流れると多少下がると思うが・・・。この電源トランスの出力は、6.3Vと100Vが出ているので、それをそのまま整流している電圧が出ているらしい。出力の70Vタップを利用して、電圧を下げて使用する事にした。


立派なWaltzのホーンスピーカーも別途用意したそうである。


ホーンスピーカーはコイルの巻き直しが必要らしい。


ラジオ内部を見てみると、ずいぶん簡単な作りである。電池式のラジオなので、バリコンとコイル、低周波トランスとレオスタットのみで構成されており、ペーパーコンデンサ−などは使用されていない。一応鳴るとの事でしたので、低周波トランスの断線も無さそうだし、ラジオ本体は電気回路上は、特に手を付ける所は無さそうだ。キャビネットの補修のみ実施する事となる。


一応鳴るとの事で安心していたが大嘘で、1段目の低周波トランスの1次側に導通がない。オークションの記述は、信用してはいけないのである!!!


2段目の低周波トランスにおいては、1次側も2次側も導通がないのである。何ともいい加減だ!


再生コイルの正帰還量を調整するのは、ミゼットバリコンではなく、上側のコイルが物理的に動いて、下のコイルへの帰還量を可変させる仕組みらしい。昔のラジオでは、よく見かける仕組みである。


断線していた2つの低周波トランスを交換しました。形状が合わないので、端子台だけを利用する形で取り付けました。


ホーンスピーカーを見てみると、今まで見たことが無い形状であった。コイルは導通が無く、簡単には巻き直しが出来ない様に見えるが。


よ〜く見ると、コイルの引き出し線が途中で切れて、端子から取れていた。切れていた所から線をつなぎ直して見事復活!良かった良かった!


フィラメント用の電源スイッチであるが、接触が悪いみたいで、残念であるが普通のトグルスイッチに交換する事にします。


修復が完了したところ。このラジオ、バリコンの可動範囲が180度有るのに、目盛りの指針の関係で可動範囲が約90度に限られている。調整は出来るのであるが、この頃の放送局は1局しか無かったので、広い受信周波数範囲は不要だったのかもしれない。とりあえず受信周波数範囲を800KHz〜1300KHzあたりに設定しました。何とか音は出ましたが、感度も良くないし音も小さい。かなり調整がシビアである。慣れるまで受信は難しいかもしれません。依頼主の方から、アースを付けたら、かなり音が大きくなったと報告を受けました。昭和初期のバッテリー式ラジオ、大切にお使いください!

以上交換部品代は約5,200円、修復作業時間は約12時間でした。

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月22日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」と、CQ出版社から2010年4月19日発売の「CQハムラジオ」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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