東京無線電気「形式不明」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦前〜戦時中〜終戦直後のラジオその6 > 東京無線電気「形式不明」修復記

修理を依頼された、東京無線電気(TMDK)の「形式不明」 の修復をして見ました。


修復前の様子。外観はすごく状態が良く、戦前のプレーンダイアル式ミゼット型の高一5球ストレートラジオだった様だが・・・。


修復前の内部様子。内部は残念ながらオリジナルではなく、5球スーパーに改造されている様だ。スピーカーが外れていたりと、状態はよろしくない様だ。


シャーシー後ろのトランスの銘板を見ると、ヒーター出力に2.5Vと1.5Vの出力があるので、元々はUY−27(高周波増幅),UY−27(再生検波)、UX−26B(低周波増幅)UX−12A(電力増幅)、KX−12F(整流)の真空管構成だったと思われる。このまま5球スーパーに改造されたとすると、1.5V出力は使わず、3W−C5(周波数変換)、UZ−57(中間周波数増幅)、3Z−DH3A(検波&低周波増幅)、3Y−P1(電力増幅)、KX−12F(整流)という構成になっていた。であれば2.5V出力は、少々電流不足が予想されるが、トランスの2.5V出力電流は大食いの27を2本点火する為に3.5Aと余裕があるので、計算すると大丈夫みたいだ。しかし、どれも現在は入手困難で、高価な真空管である。いっそのこと、電源トランスを交換して、通常の6.3V管構成に改造した方が、今後の保守の心配が無いのだが・・・。特に3W−C5と3Z−DH3Aは入手は絶望的です。僕の所にも1〜2本しか在庫が有りません。


当時流行ったエアプレーンダイアルが見られる。


キャビネットには山梨電気商事株式会社という名称と、甲府市柳町3−25という住所が記載されている。甲府市には柳町という住所は存在するが、現在は跡形も無い。


修復前のシャーシー上部の様子。年代を考えると綺麗な方だろう。このラジオもシャーシーがキャビネットに固定されておらず、危険な状態であった。


修復前のシャーシー内部の様子。部品の配置など、苦労してスーパーに改造されたらしい。


スーパー改造時に交換されたらしいダイナミックスピーカーは、コーン紙も破れてボロボロであった。


依頼主の方と修復方針を相談して、今後の保守を考えると現状の真空管構成よりも、戦後の6.3V管を使用する事になった。費用を安く抑えるために、電源トランスは現状を使用し、6.3Vのヒータートランスを追加する事とした。そのため、シャーシーは完全分解して、全ての配線をやり直す事としました。


6.3Vのヒータートランスを発注中であるが、欠品で納期が遅れており、今月末の到着を待っているところ。回路は修復がほぼ完了し、ヒータートランスを取り付けると完了という所まで完成しています。元々の真空管ソケットの取り付け向きが悪く、部品の配置があまりよろしくないです。出力管が3Y−P1から6Z−P1に変更になったので、ソケットをUYからUZに交換しました。


外部入力端子を取り付けて欲しいとのご要望でしたので、ボリューム付き入力トランスを作製しました。


スピーカーは同口径(16cm)の新品を用意しました。後ろ側に出力トランスも取り付けたのですが・・・。


キャビネットにスピーカーを取り付けようと見ましたが、キャビネットのスピーカーの丸い穴が、実際のスピーカーの口径より大きく、ネジ止めが出来ないのである。元々は20cm位のマグネチックスピーカーが付いていたと思われるが、それがスーパーに改造された時に16cmのダイナミックスピーカーに交換され、そのスピーカーは真ん中に1本通っているバーに2本のネジで固定されていただけで、輸送中の振動で外れたらしい。ベストな方法として、別に20cmのスピーカーを探して取り付ける事とする。最近のスピーカーは、後ろ側に出力トランスを取り付ける事が考慮されてないので、取り付けに工夫が必要である。


電気回路の修復が完了したところ。ほとんどの部品が新品で、配線も全てやり直しているので、安心して使用出来ます。通電試験も良好でガンガン鳴ってくれました。後は口径の大きなスピーカーの到着を待っている所です。


新しく20cmのスピーカーを用意しました。これでキャビネットにしっかり固定出来ます。


修復が完了したところ。調子よくガンガン鳴ってくれる。ツマミは左が音量と外部入力の切り替え、中央が同調、右が電源スイッチである。外部入力用の入力トランスは、PU入力端子が付いた他のラジオでも使用できますので、ご利用ください。キャビネットの状態が非常に良いラジオです。是非とも大切に末永くご使用ください。


その後、依頼主の方から写真とコメントを送って頂きました。大切に飾って頂き、ありがとうございます。以下コメントを原文通り掲載させて頂きます。

修復いただきましたラジオの設置が終わりました。キャビネットの銘板に刻まれていたラジオ商の住所は今でこそ存在しないものの、気になって調べると柳町通りというのは戦前は甲府のメインストリートの一つだったようです。空襲で大打撃を受け、更に戦後区間整理で町名さえ消えてしまいました。戦火をくぐり抜けて今にあるラジオに敬意を表し、往時の柳町を写した古い絵葉書を手に入れフレームに収めてラジオの横に飾ってみました。もう二度と苦難の時代を迎える事無きよういつまでも平和が続いてくれることを祈るばかりです。

以上、修復作業時間は約18時間、交換部品代は約16,200円でした。

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月22日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」と、CQ出版社から2010年4月19日発売の「CQハムラジオ」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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また、私のHP上で公開している写真、回路図、文章などの無断での2次使用はお断りします。一言メールにて断って頂ければ、一向にかまいません。私にラジオを修理依頼された方は、自由に使って頂いてかまいません。以上、よろしくお願いします。(以前、文章をそのまま雑誌に転記された事、HPで無断使用された事がありますので・・・。)

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