ナショナル「R−48」修復記5


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦前〜戦時中〜終戦直後のラジオその6 > ナショナル「R−48」修復記その5

修理を依頼された、松下無線(NATIONAL)の「R−48」 の修復をして見ました。


修復前の様子。実家の倉庫から出てきたというラジオだそうだ。このラジオは同じ形式名で、様々のキャビネットが存在するラジオである。このラジオはナショナルの当選号と同じ様なデザインのキャビネットである。ツマミは左が電源スイッチ、中央が同調、右が再生調整である。使用真空管は、UY−57S(高周波増幅)、UY−224(再生検波)、3Y−P1(電力増幅)、KX−12F(整流)である。このキャビネットなら、かなりの骨董的価値があると思う。


修復前の内部様子。時代を考えると綺麗な状態だ。シャーシーはキャビネットに固定されていない。全てのネジが欠品という状態であった。輸送途中で、箱を逆さまにされると、シャーシーが落ちてきて、真空管が割れる恐れがある状態であった。無事に到着して良かったです。


銘板も綺麗に残されている。


電源コードはE26電球のインレッドとなっており、まだ電源コンセントが普及していない頃の物だと考えられる。本体に電源スイッチが有るのに、何故か中間スイッチも付いている。


修復前のシャーシー上部の様子。おやおや、電源トランスが交換されている様で、残念ながらオリジナルではない。こんな小さい電源トランスで、大食いのヒーター電流を賄えるのかが、とっても不安である。元々の使用真空管は、ソケットの刻印からナス管の、UY−224(高周波増幅)、UY−224(再生検波)、UY−247B(電力増幅)、KX−112B(整流)だったらしい。


修復前のシャーシー内部の様子。ブロック型ケミコンが追加されていたりと、いろいろと修理の痕跡が見られる。中には半田付けされていないからげ配線も見受けられ、素人の修理と見受けられる。回路的にもおかしな配線もあった。


シャーシー横には、特許のラジオ受信機実施許諾証なる物がついているが、マツダ真空管専用とまで書かれている。東京電気(マツダ)の特許を使用して、松下(ナショナル)が組み立てたラジオと言う事らしい。


元々は交換される前のトランスに付いていたヒューズが、こんな所に付いていた。ところが、せっかくのヒューズホルダーも接触不良で、交換する事にした。


2段目の再生コイルは、手で巻き直した様に、グチャグチャである。こんなんで、大丈夫かなぁ?


電気回路の修復が完了したところ。全ての配線をやり直し、部品も新品に交換しましたので、安心して使用出来ます。心配なのは、容量が小さい電源トランスである。次はマグネチックスピーカーの巻き直しを実施します。


当選号型ラジオの特徴であるダイアル指針部分。上段の針は同調指示で、数字が大きくなる方向で、受信周波数が低くなる方向。下段の針は再生調整指示で、数字が大きくなる方向で、帰還量が増える方向である。最初はこちら側のメカ部分が外れてうまく動かず、調整してやっと針が動くようになった。電源トランスは、やはり容量不足みたいで、スイッチを入れた瞬間はヒーターが温まるまでヒーター電流がかなり流れるみたいで、パイロットランプが暗くなるのである。


漆塗りのキャビネットは傷も少なく、重厚な存在感がある。大切に使われた様で、状態がすこぶる良いのである。


スピーカー部分も傷も少なく、状態は良い。当選号型スピーカーでこれだけ状態の良い物は、珍しい。


コイルが断線していた、マグネチックスピーカーは、コイルを巻き直しする。


マグネチックスピーカーは、コーン紙の破れもなく、状態は良い様だ。


修復が完了したところ。劣化した2本の真空管を交換し、柔らかい音を聞かせてくれる。大変状態の良いラジオ、末永く大切にお使いください。


その後、トランスのヒーター電流不足解消の為、2.5Vのヒータートランスを追加し、安全性を向上させました。これで安心して使用出来ます。

以上、交換部品代は約12,000円、修復作業時間は約16時間でした。

このラジオと同機種は、それぞれキャビネットの形が違いますが、過去に修理経験があります。詳しくは、その1その2その3その4まで。

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月22日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」と、CQ出版社から2010年4月19日発売の「CQハムラジオ」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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