ナショナル「R−3D1」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦前〜戦時中〜終戦直後のラジオその4 > ナショナル「R−3D1」修復記

修理を依頼された、松下無線(NATIONAL)の「R−3D1」 の修復をして見ました。


修復前の様子。倉庫を整理していたら、父の形見のラジオが出てきて、是非とも動作状態にしてお店に飾りたいとの事で修理にやってきた。当時流行ったエアプレーンダイアルが見える。使用真空管は、UY−24B(再生検波)、UZ−2A5(電力増幅)、KX−80(整流)と、戦前の並三としては豪勢である。左側の再生ツマミが1個欠品である。


修復前の内部様子。UY−24BとKX−80が刺さっており、出力管の2A5の真空管1本が欠品である。戦前の並三ラジオにしては、フィールドダイナミックスピーカーが搭載されており、立派な作りだ。スピーカーは輸送中の振動で脱落していた。さすが佐川急便である・・・。真空管が割れてなくて本当に良かった!


後ろの銘板には、金澤市電気水道局と記載があり、電圧・電流・電力の記載がある。当時は電力料金は電力メーターによる従量制ではなく、電気器具1台につきいくらとの料金で、各電気器具の消費電力によって値段設定があったので、その検査漂であろう。


本体の銘板にはナショナルシャシーR−3D1と記載がある。


当時流行ったエアプレーンダイアルである。


修復前のシャーシー上部の様子。数十年分の埃が溜まっていて、ものすごかった!あちらこちらに、若干の錆も見られる。ツマミのネジが錆び付いており、取り外しに苦労した・・・。再生コイルはSTAR製が付いているので、交換されたのであろう。右手前のトランスらしき物は、低周波の段間トランスかと思ったら、線が2本しか出ていないので、チョークコイルらしい。フィールドダイナミックスピーカー搭載なのに、何故?プレート負荷用でも無さそうだ。チューニングツマミが錆び付いており、スムーズに回る様にするのに、苦労した。


修復前のシャーシー内部の様子。大きなブロック型ペーパーコンデンサーが2個見られる。この大きさで1個6μFの容量である。


そのうち1個は不自然に斜めに取り付けられており、メーカー名もナショナルでは無いので、後から追加された物らしい。大幅な改造がなされていなくて、良かった。


部品や配線を全て取り払ってすっきりしたところ。写真上部の右側のスイッチは、電源スイッチではなく、ラジオとPUの切り替えだった。電源スイッチはキャビネット右側に、トグルスイッチが付いている。シャーシーの左側にAC100Vの出力コンセントが付いているが、キャビネットに入れると、構造上プラグを差し込めません!


ダイアル目盛りも、取り外して綺麗に洗浄しました。


ところで大変な事が判明した。電源トランスをチェックしたら、無負荷でも電流が流れすぎる。入力に10V印可しても6W以上消費する。10V印可で端子電圧を計測してみたら、350VのB巻き線の片側は正常の35V程度出ているが、もう一方側は7V程度しか出ていない。レイヤーショートしているらしい。交換するしかないが、ヒーター電圧が2.5Vで4A程度流せるトランスは東栄変成器P−150があるが、価格が11,238円と大変高価である。出力管2A5を、ヒーター電圧だけが異なる42に変更すれば、P−120でも使えそうだが、それでも9,707円もする!依頼主の方と相談し、出力管は戦後のUZ−42に変更し、保守性と金額を優先する事とした。トランス交換はお金も掛かり、シャーシーにあちこち加工が必要で意外と大変な作業であるが、今後安心して使用出来るという利点もある。古いラジオで一番心配なのが、電源トランスなので・・・。


届いた東栄変成器の電源トランス。真空管アンプ用なんで、さすがに大きくて重たいし、ラジオに使うのはもったいない位だ!シャーシーと穴の大きさが合わないと思うので、加工が大変だ!アルミシャーシーなら簡単なのだが・・・。


新旧の電源トランスの大きさを比較したところ。新しいトランスは小型化しており、現状のシャーシーの穴は大きすぎて取り付けが出来ない事が判明した。アルミでアダプターの取り付け板を作製しなければならない・・・。


トランスの厚さにも結構差がある。旧電源トランスのてっぺんの蓋を開けると、ヒューズが現れたので、新しいトランスは別にヒューズを取り付ける必要もある。いろいろと手間が掛かって面倒である。


輸送中の振動で脱落していたフィールドダイナミックスピーカーは、出力トランスの1次側が断線していたので、交換しました。


新しい電源トランスをシャーシーの取り付け穴に取り付けられる様に、アルミ板を加工して取り付けアダプターを製作しました。やれやれ・・・。


電源トランスを取り付けたところ。ヒューズも新しくシャーシーに穴を開けて取り付けました。


電気配線の修復が完了したところ。全ての配線をやり直し、全ての抵抗やコンデンサーやトランスも交換してあるので、安心です。ただ戦前の真空管UY−24Bは、試験しましたら残念ながらかなり劣化しておりましたので、音が小さくなってきたら早めに交換してください。UY−57Sにも交換できますが、どちらも貴重で高価です。出力管はUZ−42です。ソケット記載はUZ−2A5のままですので、交換時には間違わない様に注意してください!


修復が完了したところ。各種試験を実施して問題なさそうなので完了とする。並三ラジオですが、意外と大きな音で鳴ってくれます。左のツマミは再生調整、中央がチューニング、右のツマミはPUとラジオの切り替えで、右側に回すとラジオ・左側に回すとPUです。お間違いの無いようにご使用ください!貴重な戦前のラジオ、是非ともお店に飾って末永く大切にお楽しみください!


その後、お店に飾って頂いたところの様子の写真を送って頂きました。大変喜んで頂き、恐縮です。たくさんの方々の目に触れられて、興味を持たれると幸いです!ありがとうございました!

以上、修復作業時間は約16時間、交換部品代は約17,000円でした。

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月22日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」と、CQ出版社から2010年4月19日発売の「CQハムラジオ」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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