KORTING「NECKERMAN」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 自作ラジオとその他のラジオその4 > KORTING「NECKERMAN」修復記

修理を依頼された、(KORTING)の「NECKERMAN」 の修復をして見ました。


修復前の様子。綺麗な状態のドイツ製の4バンドラジオである。海外で購入したそうであるが、聞いてみると電源トランスが焼けたとの事で、かなり重傷らしい。使用真空管はECC85=6AQ8(FM高周波増幅)、ECH81=6AJ8(AM周波数変換&FM中間周波増幅)、EBF89=6DC8(AM中間周波増幅&検波)、ECL86=6GW8(低周波増幅&電力増幅)、EM84=6FG6(同調指示)と、日本では馴染みのない真空管が使用されている。残念ながら全て手元に在庫が無く、真空管の不良の場合修理出来ません。また、これらはマジックアイを除いて複合管であり、通常の真空管9球分相当+セレン整流器での整流である。長波(150〜340KHz)、中波(550〜1600KHz)、短波(6〜7.4MHz)、FM(88〜104MHz)の放送が聴けるが、若干日本と帯域が異なる。回路図など技術的資料は、全くありません。


修復前の内部様子。埃が若干見られる。何と配線はプリント基板だ。220V仕様なので、国内で使用するのにはステップアップトランスが必要である。焼けたという電源トランスは、それ程でもないが、使用出来るであろうか?100V入力への電源トランスに交換となると、ものすごく大変である。残念ながら裏蓋が欠品である。回路図は裏蓋にでも付いていたのかもしれない・・・?0.315A指定のヒューズの所に、何と5Aのヒューズが付いていた。どうりでトランスが焼けた訳だ。


前面の目盛り部分の拡大写真。押しボタンスイッチが、いかにも欧州のラジオってデザインである。右側5個の押しボタンスイッチがくせ者で、接触不良などの場合は修理が難しいです。左側2個は音量調整と音質調整です。


修復前のシャーシー上部の様子。若干の埃が見られる。左側に見えるFMフロントエンドは、ユニット化されている。同調部分のプーリーの軸が錆び付いており、動かなかった。これをスムーズに動かせるまでになるのに、相当時間が掛かってしまった。やれやれ・・・。ちなみにAM系とFM系はバリコンも同調ツマミもダイアル指針も別々である。右端に、電源トランスが縦に取り付けられているのが見える。


修復前のシャーシー内部の様子。プリント基板が上下の2層構造になっている。上下基板の中にある、電源スイッチ兼用バンド切り替えスイッチの、電源スイッチ部分の接触が悪かったが、接点復活剤で何とか復活した。他の接点は大丈夫であろうか?基板が邪魔してスイッチ部分が見られない。


焼けたと言われる電源トランス。確かに焼けた跡が見られる。使用出来るであろうか?電源入力が220Vであるが、直接整流ではなく、一応B巻き線が出ている。以前修理した欧州のラジオは、電源電圧を100V〜240Vまで何段階か切り替えができたのに、このラジオは切り替え出来ないみたいだ。整流管がないので、基本的にトランスの巻き線は220V電源入力に、232VのB電圧と6.3Vのヒーター電圧のみである。


電源トランスが焼けた原因は、この整流器のショートが原因だった。これがショートしヒューズが飛んだが、新たに5Aの大きなヒューズに交換され、再度電源を入れられてB巻き線に過大な電流が流れてトランスが焼けたと考えられる。この頃の整流器は信頼性が低いです。原因が解って良かった。他の回路が無事である事を祈るのみである・・・。まったく無理な使い方をするから・・・。


このラジオ用に、電源電圧を220Vに昇圧するために用意したステップアップトランス。これを秋葉原で買って持って来るのに、どれだけ重たかった事か・・・。ちなみにこのトランスは、100V系と200V系が絶縁されている複巻きトランスに見えますが、0Vの赤線が共通の単巻きの絶縁されていない、オートトランスです。同じ容量(100VA)で、単巻きと複巻きのトランスは、2,000円程度の価格差がありました。結局せっかく用意したこのトランスですが、使わなかったので、後日別途ケースに入れて、ステップアップトランスユニットを製作しました。


世界中の電源プラグが差し込めるテーブルタップに、上記トランスを接続して試験します。通電試験するだけで、いろいろと面倒くさいです・・・。


最初は焼けた電源トランスのチェックから実施しましたが、B巻き線がやはりレイヤーショートしているらしく、無負荷でも電流が流れ過ぎます。不良の電源トランスを取り外しました。調べてみるとB巻き線の電圧は232Vである事がわかりました。電源電圧が220Vなのに、微妙に昇圧する必要があったのでしょうか?


ケミコンテスターでケミコンの漏洩電流を測定したら、流れすぎて危険な状態だったので、ケミコンを交換しました。その後、自作電源装置を用いて外部からヒーター電源とB電源を供給し、動作確認を実施しました。ラジオ放送が受信できる事を確認しましたが、マジックアイ(EM84)は、あまり光りませんでした。電源トランスを交換して完了と思いますが、同じ形状のトランスが入手できないので、取り付けに苦労しそうです。電源プラグも日本仕様に交換してあります。


購入した新しいトランス。僕も賛助会員で所属しているラジオ少年製のBT−2H−DXXである。余裕を見たので、ちょっと大きくなってしまいました。果たして無事に取り付けできるやら・・・?


電源トランスを交換したところ。何とか取り付けが完了しました。整流器も新たにダイオードブリッジを取り付けました。これで100Vで使用出来ます。B電圧はシリコンダイオードを使ったので、真空管をいたわる為に、低めの200V端子を使いました。


修復が完了したところ。柔らかな音で鳴ってくれます。今話題のワイドFMに対応しています!大切にお使いくださいね!

以上修復作業時間は約15時間、交換部品代は約5,500円でした。

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月22日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」と、CQ出版社から2010年4月19日発売の「CQハムラジオ」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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