KING「エリミネーター」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦前〜戦時中〜終戦直後のラジオその6 > KING「エリミネーター」修復記

修理を依頼された、KINGの「エリミネーター」 の修復をして見ました。


修復前の様子。かなり大型で重たい。使用真空管はUX−26B(高周波増幅)、UX−26B(再生検波)、UX−12A(電力増幅)、KX−12F(整流)であるが、元々はソケットの刻印からナス管だったらしい。


修復前の内部様子。マグネチックスピーカーが外れているが、これは輸送中に外れたのかもしれない?


そのマグネチックスピーカーだが、コイルの辺りが特殊に見える。コイルの導通はあるものの、簡単に巻き直しが出来るであろうか?


修復前のシャーシー上部の様子。小さな場所に色々と押し込められている。エアガンで埃を飛ばそうとしたら、埃が出るは出るは・・・。近所が大気汚染する位、埃が出てきた!


銘板にはKING RADIO、東京芝の里嶋商会と書かれている。


まな板シャーシーを取り出したところ。上部のネジ2本でこんな重たいシャーシー部分を固定しているだけだった。ラジオ本体を横にすると、取れて落ちそうである。段間の低周波トランスは奇跡的に導通があるが、よく見ると2個のトランスが並列接続されている。元々のが断線して、そのまま別のトランスが付けられたみたいだ。


まな板シャーシー下部にも多数部品が配置されている。色々と回路を確認していると、おかしな部分が多い。トランスの銘板から推測すると、真空管はUY−227,UX−226,UX−226,KX−112の仕様であるのに、ソケットの刻印はUX−226,UX−226,UX−112A,KX−112である。トランスの227用の2.5V巻き線で、5VのUX−12Aを点火している配線になっている。トランスのみ動作チェックして電圧を計測してみたら何と不思議な事に、227の2.5V出力から5Vが出ているではありませんか?トランスの銘板は何だったのであろう???


操作ツマミは左が再生調整、中央が再生検波段(2段目)同調、右が高周波増幅段(初段)同調である。受信周波数範囲は520KHz〜1300KHz程度と、現在の周波数範囲より少し狭いみたいだ。


2個のビクター製のバリコンには、おなじみのニッパー犬のマーク(?)が付いていたが、蓄音機のラッパが無いのである。この頃は2連バリコンが無かったのか、初段と2段目を別々に調整する必要がある。


内部には6年7月22日付と7年10月10日修の文字が記載されていた。昭和6年に購入で、昭和7年に修理であろうか?


電気回路の修復が完了したところ。新しい部品はシャーシー下部に配置し、上部からの見かけは変わりません。使っていない部品もそのまま残して配線を取ってます。


ボロボロだったサランネットも張り替えて、綺麗になりました。


修復が完了したところ。意外と再生調整とチューニングが難しい。感度も悪く音も小さいので、実用的にはかなり長いアンテナ線が必要である。珍しいラジオ、大切にお使いください!

以上、修復作業時間は約15時間、交換部品代は約5,500円でした。

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月22日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」と、CQ出版社から2010年4月19日発売の「CQハムラジオ」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!


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また、私のHP上で公開している写真、回路図、文章などの無断での2次使用はお断りします。一言メールにて断って頂ければ、一向にかまいません。私にラジオを修理依頼された方は、自由に使って頂いてかまいません。以上、よろしくお願いします。(以前、文章をそのまま雑誌に転記された事、HPで無断使用された事がありますので・・・。)

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