石井ラヂオ商會特製「エリミネーター」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦前〜戦時中〜終戦直後のラジオその6 > 石井ラヂオ商會特製「エリミネーター」修復記

修理を依頼された、石井ラヂオ商會特製の「エリミネーター」 の修復をして見ました。


修復前の様子。昭和6〜7年頃のラジオであろうか?年代の割に、状態が良さそうだ。オークションで、かなりの高値が付いたラジオである。幅49.7cm、奥行31cm、高さ65.7cmとかなり大型で重たい。


修復前の内部様子。状態も良さそうだ。大変貴重なラジオである。使用真空管は、UX-226(高周波増幅)、UX-226(高周波増幅)、UY-227(再生検波)、UX-226(低周波増幅)、UX-112A(電力増幅)、KX-112B(整流)である。


操作パネルの様子。各つまみの動きはなめらかで問題ない。右側の目盛り板は、錆びて真っ白の粉が噴いている。つまみは左が再生調整、中央が2段目と3段目の同調、右が1段目の同調である。当時は三連バリコンが無かったのか、同調が2個に分かれている。


エンブレムもご覧のとおり。石井ラヂオ商會特製と記載があり、その下に兒島郡琴浦町田ノ口と読める住所の記載がある。旧、岡山県児島郡琴浦町には、田ノ口と言う地名もあるし、このラジオの出品者も岡山県倉敷市だったので、ここで間違いないであろう。現在は市町村合併して、倉敷市児島という地名に変更になったらしい。何と、2000年までその倉敷市児島に、石井ラジオ商会は実在していたらしい・・・!現在は、どうなのであろうか?非常に興味がある!


Google Earthでこの住所を検索してみると、残念ながら石井ラジオ商会は現在は廃業してしまってるらしい。ここが以前電器屋だった証拠に、上部にVictor JVCの看板の跡が見られる。非常に残念である。


UY-227が1本、UX-226が3本、UX-112Aが1本、KX-112Bが1本の合計6本のナス管である。これだけでも、かなり貴重である。真空管は試験したら、ほとんどが良好の状態であった。すばらしい!


電源はインレット式で、電源スイッチはラジオ本体には付いていない。古いタイプの中間スイッチが入手困難なので、残念ながらこたつ用の現代のスイッチを取り付ける事になる。


内部のシャーシー部分を取り出したところ。いろいろな所がネジ止めされており、取り出しに苦労した。予想どおり、2個の低周波段間トランスは断線していたが、チョークコイルとマグネチックスピーカーは導通があった。また板の上には薄い鉄板が敷いてあり、アースとなっている。


修復前のシャーシー下部の様子。白く四角く見えるのは、全てペーパーコンデンサーである。中央のコイルはアンテナコイルである。


電源トランスの銘板。UX-226用3本に1.5V/3.15A、UY-227用に2.5V/1.75A、UX-112A用に5V/0.5A、KX-112B用に5V /0.5A、B電源用に180V/15mAの出力である。左右のヒューズホルダーで、1次側の入力電圧を95Vと105Vに切り替えるらしい。


断線した低周波段間トランスを分解したところ。内部がタールで固められており、これを取るのは結構手間が掛かり、手も真っ黒に汚れるあまりやりたくない作業である。


やっとの事で、内部を取り出したところ。ここに新品のトランスを挿入しますので、外観は変わりません。もう1個の低周波トランスも断線していたので、もう1回同じ作業を繰り返さなければならない。やれやれ・・・。


マグネチックスピーカーは、コイルの導通はあるが、使っているうちに断線の可能性が高いので、コイルの巻き直しが可能か、スピーカーを外してみました。


よく見ると、いろいろと調整できる構造である。一般的なスピーカーと構造が少し違うので、コイルの取り外しは難しそうだ。


コーン紙は破れもなく、良好であるが・・・。今回は巻き直しはしない事とした。


電気回路の修復が完了したところ。ほとんどの配線をやり直しました。低周波トランスとチョークコイルは新品に交換してあります。四角いペーパーコンデンサーは残ってますが、配線は外してあります。部品数は少ないですが、いろいろと大変でした。通電確認したら、最初は無音だった。原因を調査したら、3段目の再生検波コイルの接触不良であった。直したら爆音で鳴りだした。さすが高周波2段増幅である。


インレット式の電源コードは、パイロットランプ付きのコタツ用の中間スイッチを取り付けました。これから組み立てて完成です。


修復が完了したところ。高周波2段増幅でガンガン爆音で鳴ってくれる。当時、旧、岡山県児島郡琴浦町は、電波が弱かったので2段増幅の仕様にしたのであろうが、今の強電界地域では音が大きすぎるのである。貴重な大型の高級ラジオ、大切にお使いください!

以上、交換部品代は約6,800円、修復作業時間は約15時間でした。

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月22日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」と、CQ出版社から2010年4月19日発売の「CQハムラジオ」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!


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