ナショナル「CF−610」修復記その2


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦後ST管スーパーラジオその6 > ナショナル「CF−610」修復記その2

修理を依頼された、松下電器産業(NATIONAL)の「CF−610」型 (通称ゴンゴー)の修復をして見ました。


修復前の様子。ST管からGT管への移行時期のラジオで、出力管のみがGT管という珍しい混成の編成である。使用真空管は6W−C5(周波数変換)、UZ−6D6(中間周波数増幅)、6Z−DH3A(検波&低周波増幅)、6V6−GT(電力増幅)、KX−80K(整流)、EZ−6E5(同調指示)である。入手当時は鳴っていたが、依頼主の方がレストアしたら鳴らなくなったそうである。


修復前の内部様子。依頼主の方が清掃したそうで、綺麗な状態である。電源には、インレットが付いている。


修復前のシャーシー上部の様子。清掃されており、かなり綺麗な状態であるが、一部手の届かない所に埃が残っており、エアガンで吹き飛ばして綺麗になりました。


シャーシー前面から見た様子。ダイアル目盛りなども一体化されている。依頼主の方が、ダイアル糸まで張り替えられている。またボロボロだった豆球の配線なども、綺麗に交換されてある。


修復前のシャーシー内部の様子。依頼主の方がレストアし、全ての抵抗やペーパーコンデンサーを交換してあるが、漏洩電流が心配なブロック型ケミコンや、1次側巻き線の断線が心配な出力トランスは、そのままであった。ケミコンは漏洩電流を計測したら、問題無いレベルだったので、このまま使うが、出力トランスは交換する事にする。


局部発振コイルはレストア中に破損したそうで、私も所属している、ラジオ少年製に交換されている。残念ながらラジオ少年の活動も、2023年3月末までになりそうです。ちなみにこの辺りの不良も疑ったが、オシロスコープで確認して局部発振は正常に発振していた。


矢印の2段目のB電圧のドロップ抵抗2KΩであるが、1Wが付いている。初段の200Ωに3Wの物が付いているのに、明らかに電力不足である。回路図にも2Wと記載があるので、交換する事にする。


オリジナルのマジックアイの輝度はご覧の通り暗いが、新品を用意しているとの事であるが、輝度の低下を防止する為に、消灯スイッチを追加する事にする。


内部を眺めていたら、致命的なミスが見つかった。6D6のカソード自己バイアスの抵抗に、270KΩが使われていた。通常は300Ω程度が付くはずである。抵抗のカラーコードで100KΩ台を示す黄色が見えて気がついた。これでは動作するはずがない。これを交換し解決と思ったが、まだ鳴らない。まだ他にミスが有るらしい。やれやれ・・・。間違い探しはやりたくない作業である。


またまた内部を眺めていると、B電源のラインで抵抗のカラーコードで1MΩ台を示す緑色が見えて気がついた。普通はB電源のラインに、メガオームの抵抗はつながらない。回路図を確認したところ、5KΩの所に4.7MΩの抵抗が付いていた。これを交換して、やっとラジオの音がでた。何だかな〜ぁ!どちらも抵抗値が大きくなる方向(電流が小さくなる方向)で、間違っていて良かった。逆の方向なら電流が流れすぎて発煙事故になったであろう・・・。これからマジックアイの消灯用のスイッチ取り付けと、出力トランスの交換作業に掛かります。


修復が完了したシャーシー内部の様子。値の違っていた抵抗を交換し、シャーシー後ろにマジックアイ消灯用のスイッチを取り付けました。断線の予想される出力トランスも交換しました。これで安心して末永くお使い頂けます。


修復が完了したところ。HiFiモードでは、かなりいい音でガンガン鳴ってくれる。マジックアイは新品で撮影してます。各種調整をして、問題なさそうなので完了とする。大切に末永くお使いください!

以上、修復作業時間は約6時間、交換部品代は約2,800円でした。

この同型のラジオは以前、修理の経験があります。詳しくはこちら

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月22日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」と、CQ出版社から2010年4月19日発売の「CQハムラジオ」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!


匿名でも結構ですので、是非ともアンケートにご協力お願いします!また、ご意見ご感想はこちらまでお願いします。(こちらは匿名と携帯メールはご遠慮下さい!)

また、私のHP上で公開している写真、回路図、文章などの無断での2次使用はお断りします。一言メールにて断って頂ければ、一向にかまいません。私にラジオを修理依頼された方は、自由に使って頂いてかまいません。以上、よろしくお願いします。(以前、文章をそのまま雑誌に転記された事、HPで無断使用された事がありますので・・・。)

inserted by FC2 system