シャープ「SR−280M」修復記


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修理を依頼された、早川電機工業(SHARP)の「SR−280M」 の修復をして見ました。


修復前の様子。使用真空管は、6W−C5(周波数変換)、UZ−6D6(中間周波数増幅)、6Z−DH3A(検波&低周波増幅)、UZ−42(電力増幅)、KX−80HK(整流)、EZ−6E5(同調指示)と、オーソドックスな構成である。電源を入れたら、異臭がしたそうで、修理&点検にやってきた。デザイン的に、非常にユニークな顔をしていますね!いつも汚いラジオを見慣れているので、新鮮である。販売当時は、みんなこんなに綺麗だったんでしょうね・・・。僕の所有しているデッドストック新品真空管ラジオ並に、綺麗です?!


修復前の内部様子。外観は大変綺麗で、状態も良い!キャビネットはひょっとすると、再塗装されたのか不明?裏蓋は、新規に自作されたみたいだ。内部のシャーシーは、年代相応でそれなりで、使われた痕跡がある。外観が綺麗だからと言っても内部は当時の部品ですので、そのまま使うのは大変危険です。今回は予算の関係から、必要最低限の部品交換とします。マジックアイは交換の予定ですので、輝度低下防止の為に消灯用のスイッチを取り付ける事とします。


マジックアイの輝度はご覧のとおり暗い。一度交換されたらしく、トーヨー製のが付いていた。最初はテストしてもヒーターが点火しなかった。ベースの半田付けをやり直して復活。よくある話であるが・・・。


修復前のシャーシー上部の様子。エアガンで埃を飛ばして、すっきりしました。


修復前のシャーシー内部の様子。おや、レストアがされているみたいだが・・・。抵抗やブロック型ケミコンなど、一部はオリジナルのまま。


シャーシーを前面から見ると、こんな感じです。


どうやら電源トランスは交換された物らしい。何か不都合が有ったんだろうか?小型D.S.用PTと記載があるけど、D.S.って何だろう?B電圧が290V40mAとある。フィールドダイナミックスピーカー用みたいで高すぎる。どおりで整流管に入る前に1KΩ3Wの抵抗が付けられている。高圧が印可されて、ケミコンが心配だ。ケミコンの漏洩電流を計ってみると、やはり漏洩電流が大きく、危険な状態であった。450V耐圧のケミコンに交換する事にする。


出力管のカソードの自己バイアス抵抗のバイパスコンデンサーに160Vの物が使われている。普通は50Vで十分なのに・・・。


トランスの変な所から線が出ている。どうやらオリジナルのヒューズホルダーのみを利用しているみたいだ・・・。


修復が完了したシャーシー内部の様子。漏洩電流が多くて危険なケミコンを交換しました。危険なB電圧の配線も交換しました。マジックアイ消灯用のスイッチも追加しました。出力トランスも交換しました。これで完成と思いきや、とんでもない不具合が・・・。何と電源スイッチの絶縁が0.38MΩしかない。普通は1000MΩ以上あるのに・・・。これは火災が発生するかもしれない危険な値です。普通のテスターで測定しても普通なんですが、絶縁抵抗計にて500Vで計測すると、こんな値でした。電源を入れて異臭がした原因はここかもしれない。困った事に電源スイッチとトーン切り替えのこのスイッチは入手が出来ません。回転式スイッチに交換すると、電源スイッチのみで、トーン切り替えを殺す事になりますし、トーン切り替えを生かすとすれば、電源コードに中間スイッチを付けて電源スイッチにするしかありません。状態の良いラジオだっただけに、非常に残念です。


修復が完了したところ。各種試験を実施して、問題無さそうなので完了とする。結局トーンコントロールを生かして、電源スイッチは電源コードに中間スイッチを取り付けました。マジックアイも交換しました。感度も良くガンガン鳴ってくれます。火災が起きる前に絶縁不良が対策できて、本当に良かったです。是非とも大切にお使いくださいね!

以上、修復作業時間は約7時間、交換部品代は約5,800円でした。

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月22日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」と、CQ出版社から2010年4月19日発売の「CQハムラジオ」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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