ナショナル「RE−860」修復記その3


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦後mT管トランスレススーパーラジオその6 > ナショナル「RE−860」修復記

修理を依頼された、松下電器産業(NATIONAL)の「RE−860」 の修復をして見ました。


修復前の様子。FM放送だけが受信出来ないそうである。FM受信回路に重大な不具合があれば、部品の入手が出来ないことから、最悪修理不能となります。使用真空管は、17AB9(FM用高周波増幅&周波数変換)、12BA6(FM用中間周波数増幅)、12BE6(AM用周波数変換)、12BA6(FM&AM用中間周波数増幅)、12AV6(低周波増幅)、30A5(電力増幅)、12Z−E8(同調指示)、(ダイオードによる整流)である。17AB9はmT管10ピンの特殊な形状の真空管である。前面のパネルの左の電源のツマミに何かぶつかったらしく、ヒビが入っており一部が欠けている。この影響かローレッド部分が半分欠けていて、電源兼用トーンのツマミが抜けやすくなっている。


修復前の内部様子。依頼主の方が、刷毛で埃をはらって掃除機で清掃して頂いたそうで、ある程度綺麗になっている。


修復前のシャーシー上部の様子。年代相応の状態だ。バーアンテナが回転出来る様になっている。


修復前のシャーシー内部の様子。実装密度が高い。事故や修理の跡は見られない。ケミコンの漏洩電流を測定したが、0.2mAと問題無いレベルであった。


マジックアイはご覧のとおり、ほとんど光らず。トーヨー製なので、1度交換された物らしいが・・・。レス用のマジックアイ12Z−E8は大変貴重品で、もう秋葉原でも入手出来ません。僕の所には、まだ在庫があるのですが・・・。


キャビネットを分解し、前面のパネルは水洗してすっきり綺麗になりました。


これが珍しいmT管10ピンの17AB9である。この球用の特殊な10ピンのソケットはもう入手出来ませんし、この球ももう入手困難で高価です。僕の所にも、在庫は数本しかありません。


修復が完了したシャーシー内部の様子。信頼性の低いオイルコンデンサーとセレン整流器を交換しました。抵抗値の大きくずれた抵抗も交換しました。電源スイッチ兼用のトーンコントロールは、ローレッドの片側が欠けており、つまみが抜けやすいので交換しました。FMが鳴らなかった原因は、1本の抵抗の断線だった。これを見つけるのに、大変苦労しました。これで完成かと思いきや、FMは受信できる様になったが、76〜80MHz程度の低い周波数しか受信出来ない。このラジオは、ヒーター電圧の合計が110Vもあるので、それを100Vで点火しているこの機種では、エミッションの弱い真空管では局部発振が停止する場合があるという記載を他のページで見かけた。17AB9のヒーター電圧を測定すると、やはり14V程度しかない。原因はこの辺か?せっかくパイロットランプ点灯用のオートトランスがあるので、ヒーター電圧もこのトランスで若干上げれば良いと思うのでありますが・・・?僕の所有している真空管試験器は、この10ピンの17AB9のエミッションが測定出来ないので、残念です!いろいろ調査した結果、受信出来ない原因は、予想どおり局部発振の停止であった。電源電圧を上げたり、抵抗値を少しいじったりいろいろやったが改善せず。17AB9を在庫の別の真空管と交換すると、少し受信周波数が広がり改善したが、やはりある周波数を超えると局部発振が停止してしまって、受信出来ない範囲がある。局部発振の停止なんで、発振回路と真空管の劣化を疑ったが、最終的な原因はAFC回路の1μFのケミコンの容量抜けが原因であった。これが解るまでかなり悩みました。交換して受信も全範囲良好となった。


修復が完成したところ。マジックアイは新品で撮影しています。各種調整&試験後、問題無さそうなので完了とする。真空管ラジオで聞くFM放送を存分にお楽しみください。

以上、交換部品代は約1,400円、修復作業時間は約10時間でした。

このラジオは以前にも修理経験があります。詳しくはこちらこちら

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月22日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」と、CQ出版社から2010年4月19日発売の「CQハムラジオ」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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