アリア「J−100」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦前〜戦時中〜終戦直後のラジオその4 > アリア「J−100」修復記

修理を依頼された、ミタカ電機(ARIA)の「J−100」 の修復をして見ました。


修復前の様子。倉庫の中から出てきたという戦前のラジオである。状態はあまり良くない様だ。キャビネットがばらばらになりかけている。使用真空管はUZ−57(高周波増幅)、UZ−57(再生検波)、3Y−P1(電力増幅)、KX−12F(整流)が付いているが、オリジナルはソケットの刻印から、UZ−58、UZ−57、UY−47B、KX−12Bである。こんな回路であろうか?上の同調つまみのネジが錆び付いていて回らないので、無理矢理取るしかない。


修復前の内部様子。シャーシーに多少錆びが見られ、整流管が1本割れている。電源コードもボロボロの状態でプラグが付いていない。


銘板はきれいに残っているが・・・。


マグネチックスピーカーのコイルは、奇跡的に断線はしていなかった。パイオニアの文字が見られる。取り替えられた物なのであろうか?


修復前のシャーシー内部の様子。事故の痕は見られないが、電源回路にペーパーブロック型コンデンサーと並列に、ブロック型のケミコンが追加されている様だ。


修復前のシャーシー上部の様子。エアガンで埃を飛ばして、少し綺麗になりました。再塗装すれば見違える様になるのですが、今回は金額を抑えるために再塗装せずこのままとします。ダイアル回転機構が外れており、同軸つまみを回してもバリコンが回転しないので、調整を実施しました。所々見える後から追加されたと思われる赤の線は、ナショナルラジオのPL線と同じく、ゴムの皮膜が劣化してボロボロになって剥がれ落ちて来ます。


マグネチックスピーカーはコーン紙の破れもコイルの断線も無く、良好であるが・・・。コイルは一度断線して交換されたのか、サトーパーツ製が付いている。この頃のコイルは線の材質が悪いので、断線を防ぐ為に巻き直しを実施することにします。


ダイアル目盛りは、戦前のラジオらしく周波数表示ではなく0〜100の数値のみである。戦前のラジオの同調周波数範囲は現在の中波帯より狭く、上限は当時の放送帯の〜1500KHz程度であろうか?


バラバラに分解しかかっていたキャビネットを修復して洗浄し、万能ワックスクリーナーで磨きました。サランネットを張り替えし、何とか部屋の中に持ち込めるレベルになりました。上部をビニールテープで貼っていた痕は、アルコールで拭きましたが残ったままで取れません。これから電気回路の修復に取りかかります。


修復が完了したシャーシー内部の様子。安全の為に全ての抵抗やコンデンサーを交換し、一部危険な配線をやり直しました。割れていた整流管は、状態の良い中古品を差しました。他の真空管は真空管試験器で検査しましたが、一部劣化してますがまあまあ使えるレベルでした。


修復が完了したところ。各種試験や調整後、問題無さそうなので完了とする。戦前の貴重なラジオです。大切に末永く音をお楽しみください!

 その後、依頼主の方から下記の様なコメントを頂戴しましたので、原文のまま転載させて頂きます。

 半世紀を越えたボロボロのラジオが生き返りました。 驚愕すべきは、現代のラジオより感度がよいのです。 私の自宅は鉄筋コンクリです。 バーアンテナではダメな局が、このラジオに外部アンテナ(垂直7m程度)を接続しますと現代ラジオより鮮明な音声が出ます。  マグネチックSPの音は初めて聴きました。 筐体の設計が良かったのか、現代のTRラジオが悪いのかわかりませんが、100%満足な音質です。 5球スーパーも持っていますが、正直な話、アリアの音が自然です。 レストアの状態は私にとって100%です。 レストアの依頼の際に、私の父に紅白歌合戦を聴いてもらう為に12月30日の到着をお願いしました。 到着日は19日です。 充分な準備が出来ます。 このラジオは私の父は驚愕すると思います。  この度のレストア作業は私には不可能でした。 感謝致します。

以上、修復作業時間は約15時間、交換部品代は約4,900円でした。

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月22日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」と、CQ出版社から2010年4月19日発売の「CQハムラジオ」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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