トリオ「FM−100」修復記その2


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修理を依頼された、春日無線工業(TRIO)の「FM−100」 の修復をして見ました。


修復前の正面の様子。貴重な日本初のFMチューナーである。FMの本放送が開始される前の昭和32年に販売された製品だそうだ。調子が悪いらしく、末永く安全に使用するために、修理&点検にやってきた。外観はそれなりの汚れである。使用真空管は6U8(高周波増幅)、12AT7(局部発振&混合)、6AU6(中間周波増幅)、6AU6(中間周波増幅)、6AU6(中間周波増幅)である。


修復前の後ろ側の様子。内部にヒューズが付いていないので、ヒューズは依頼主の方が中継ホルダーにて後から追加したそうだ。


修復前のシャーシー上部の様子。依頼主の方が清掃したみたいで、多少の埃がある程度である。


修復前のシャーシー内部の様子。よーく見ると・・・。


電源の1次側についているコンデンサーとケミコンが追加されている。電源の1次側に取り付けるコンデンサーは、普通のが付いているので、安全の為に専用の安全規格を満たした物に交換しておきます。他のペーパーコンデンサー1個はそのままだったが、カップリングコンデンサーはオーディオ用の(?)高級品に交換されていました。依頼主の方が追加で付けた100μFのケミコンですが、耐圧が160Vです。このチューナーはB電圧はトランスで125Vに昇圧して整流している為、真空管のヒーターが暖まるまで、B電流が流れないので最大で175V程度が印可され、ケミコンの耐圧をオーバーしてこのままでは危険ですので、250V耐圧のケミコンに交換しました。セレン整流器に並列にシリコンダイオードが付いているが、セレン整流器が故障してショートした時に危険なので、セレン整流器は取り外しました。


キャビネットは分解出来る部分は水洗し、綺麗になりました。


修復が完了したシャーシー内部の様子。安全の為に、ペーパーコンデンサーを交換しました。電源のブロック型ケミコンも交換しました。完成かと思いきや、テストすると鳴るのですが音が非常に小さい様です。現在、原因を調査中です。オークションの説明文では、感度良く鳴りましたと記載がありましたが・・・?それと同じくオークションの説明文には真空管は全てマツダ製と書いてましたが、実際は6AU6の2本はナショナル製だったし、6AL5は付いていないしと、かなりいい加減な記載ですね!よくある事ですが・・・。


以前修理したFM−100は6球であったが、今回のは5球で、検波に6AL5ではなく、2つのゲルマニウムダイオードを使っている。後期モデルらしい。どうりでシャーシーに1球分の穴が空いているのがわかる。この辺のダイオードの不良を疑ったが、正常だった。どちらにせよこの頃の半導体は信頼性が低いので、新品のゲルマニウムダイオードに交換しておきます。いよいよ、本格的な測定器の出番となりそうです・・・。


修復が完了したところ。シグナルジェネレーターやオシロスコープまで総動員して回路の動作をチェックしていきましたら、最終段の中間周波増幅段がおかしい?ここの真空管を新品に交換してみたら、見事に動作した。最終段のナショナル製の6AU6が不良という訳でした。苦労して損した感じですが、信頼性の低い部品を全て交換してますので、今後は安心してご使用になれます。各種絶縁試験と真空管の試験なども実施し問題ありませんでした。それにしても、パイロットランプがトランスレスラジオみたいに薄暗くて寂しいのである。せっかくトランスがあるので、もっと派手に明るくしても良いのでは?思ったより修理に時間と手間が掛かったチューナーでした。受信周波数範囲は80〜90MHzなんで、一部の放送局は受信出来ませんが、日本最初のFMチューナーです。是非とも大切に末永くお使いくださいね!

以上、修復作業時間は約8時間、交換部品代は約1,900円でした。

これと同じチューナーは以前修理経験があります。詳しくはこちら

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月22日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」と、CQ出版社から2010年4月19日発売の「CQハムラジオ」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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