ナショナル「6S−10」修復記その2


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修理を依頼された、松下無線(NATIONAL)の「6S−10」 の修復をして見ました。


修復前の様子。使用真空管は、UZ−58(高周波増幅)、Ut−2A7(周波数変換)、UZ−58(中間周波増幅)、UZ−2A6(検波&低周波増幅)、UZ−2A5(電力増幅)、KX−80(整流)である。キャビネットは綺麗な状態である。以前の修理の時に用意した回路図が役に立ちそうである。オークション出展者は鳴るという話しであるが、本当であろうか?ツマミは下側の左が電源兼用音質調整、中央が当時の広告にも記載が有る音質重視か感度重視かを切り替えるマジックスイッチ、右がピックアップ切り替え兼用音量調整である。上側の同調ツマミは2重になっており、中側が微動調整、外側が粗動調整である。中波帯専用機なのに微動調整が有るとは、さすが高級機である。


修復前の内部様子。年代の割には綺麗な方である。重量があり、ずっしり重たい。何と、UZ−2A6(検波&低周波増幅)の所に、UZ−57が挿してある。用途が全然違う真空管であるが、これで本当に鳴ったのであろうか?この頃2A6はあまり出回ってなかったらしいので、ひょっとして2A6が入手出来ずに57を使った回路に改造されているのかもしれない。(まさかや〜!良くわかりません?)残念な事に、今僕の所にこの2A6の在庫がない。ちょうどオークションでジャンク品が格安で出品されていたので、早速落札して使ってみる事にする。(思ったより格安で落札出来ました!)


修復前のシャーシー上部の様子。所々錆が見られるが、戦前のラジオとしては良い方だ。


修復前のシャーシー内部の様子。幸いな事に大幅な改造の跡は見らいと思ったが実は改造されていた。また出力館管の結合コンデンサー等が交換された跡が見られる。当時の最高機種で、部品も多い。良く見ると、出力管のカソードにバイアス用の抵抗とコンデンサーが追加されている様だ。このラジオはフィールドダイナミックスピーカーのフィールドコイルが、B回路のマイナス側に接続されており、その電圧降下で出力管のグリッドバイアスを作る回路であるし、回路図にもこのバイアス用の抵抗とコンデンサーは記載されていないので、元の回路に戻す事にする。何かいや〜な予感が・・・!


ダイアル盤も綺麗に残っている。


ところが、重大な故障が発見されました。2段目のIFTの1次側のコイル(写真手前側)が断線しています。このスーパーのIFTは、中間周波が455KHzではなく175KHzなので、戦後のIFTに交換する事も出来ませんし、同等品の入手は不可能です。巻き直すしか手はないですが、写真の様なハニカム巻は手では巻けません。さ〜て、どうしようか?


IFTのコイルの巻き直しに使うボビンには、100円ショップで売られているビーズを通すビニール糸が巻いてあるプラスチックのボビンを使う事にしました。以前のラジオで同様に巻き直しで使った時のよりは、形が大きくなってしまった様で、使いにくいです。


巻き直しの為に、IFTのコイルを取り外したところ。木の棒の上に、コイルが巻いてある。所が、切れたコイルを取り外す為にほどいたら、巻始めすぐの所で断線箇所を発見したので、多少コイルの巻数が減るが、ここから線を取り出した。


そんな訳で、ほどいた部分が多少目立つが、巻き直さなくて済んだ。目出度し目出度し・・・。


フィールドダイナミックスピーカーは、出力トランスの1次側の巻線が断線していた。当初は回路図のピンコネを見て、フォールドコイル側が断線していると勘違いしたが、回路図のミスで実物をよく見たら、断線しているのはトランス側だった。フィールドコイルは巻き直しが出来ないので、本当に良かったです。出力トランスは、ご覧の様に新品に交換しました。


電気配線の修復が完了したシャーシー内部の様子。実際の回路を見てみると回路図とは違って、音量調整は初段の高周波増幅段のゲインを可変する様になっているし、2A6の辺りの配線が回路図とかなり違っている。スーパー受信機はAVCが働くので、ストレートラジオと違って高周波増幅段のゲインを可変しても、音量調整は出来ないはずである。良く調べると2A6の変わりに刺さっていた真空管57に合わせて回路が改造されて、AVC回路が殺されている。当時2A6の入手が困難で、57に改造された様だ。当然この回路ではAVCは効かないので、AVC回路も殺されていました。これを元の回路に復元するのに、結構な手間が掛かりました。ボリュームは一般的な500KΩではなく、200KΩの3P切り替えスイッチ付きなんで、在庫がありません。秋葉原に行って買って来ましたが、200KΩな無く、250KΩの2Pスイッチ式しか入手出来ませんでしたので、PU切り替えは簡略回路にて配線しました。通電試験してラジオの音は出るのですが、異常に小さな音ですので、現在原因を調査中です。ラジオとしての回路は動作している様なので・・・?


修復が完了したところ。いろいろと苦労したラジオです。修復作業時間も、交換部品代もたくさん掛かりました。中間周波が低いので、イメージ受信が多いです。貴重な戦前のラジオ、大切にお使いください!

以上、修復作業時間は約24時間、交換部品代は約8,700円でした。

このラジオは以前にも修理の経験があります。詳しくはこちら。またラジオ工房のこちらのページにも、姉妹機の6S−3の修理記録がありました。また日本ラジオ博物館のこちらのページにも紹介があります。最高級機ながら、結構たくさん売れたのでしょうか?

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月22日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」と、CQ出版社から2010年4月19日発売の「CQハムラジオ」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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