アリア「44号型」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦前〜戦時中〜終戦直後のラジオその3 > アリア「44号型」修復記

修理を依頼された、ミタカ電機(ARIA)の「44号型」 の修復をして見ました。


修復前の様子。使用真空管は、オリジナルではUY−24B(再生検波)、UX−26B(低周波増幅)、UX−12A(電力増幅)、KX−12B(整流)であったらしいが、再生検波はソケットが交換され、UZ−57に改造されている。キャビネットは接着が剥がれ、分解しそうである。状態はあまりよろしくない。UYからUZにソケットを交換してUZ−57に改造するより、UY−24BをUY−57Sにそのまま差し替えた方が楽だと思うのですが、何故こんな改造をしたのであろうか?


修復前の内部様子。結構錆がみられる。修理は苦労しそうである・・・。青の線は、スピーカーへ繋がる。電源スイッチが外付けになっている。12Aと26Bが反対に挿してあるので、26Bのフィラメントが切れているかと思ったが、幸いな事に断線は無かった!良かった、良かった・・・。ところが・・・。


銘板はご覧のとおり残っている。


修復前のシャーシー上部の様子。並四コイルがスター製の物に交換されている。錆だらけで状態は悪いが、マグネチックスピーカーはコイルの断線もなく、コーン紙の破れもなく、良好であった。ツマミを取り付けているイモネジが錆びていて回らなく、30分以上格闘して無理矢理外す事が出来たが取付は出来ない。さてさてどうしようか・・・?並四コイルは、スター製に交換されている。何故交換されたのかは不明である?


チューブラー型のケミコンも追加されており、一度修理の手が入ったらしい。電源平滑用のブロック型ペーパーコンデンサーは膨張して破裂しており、大変な状態であった。ヒューズには針金でショートされており、大変危険な状態である!


錆だらけのシャーシーは、再塗装をする為に完全に分解した。もうすぐ製造から75年も経過するラジオである。それを考えると原形をとどめているだけマシなのかもしれないが・・・?これからサンダーで錆を落とします。


ネジが錆び付いていて取付が出来なかったツマミは、錆びたイモネジをドリルで強制的に穴を開けて、一回り大きい4mmでネジを切り直して新しいイモネジを取り付けてなんとか取り付け出来る様に修理した。ツマミを割らない様に慎重に作業して、何とか成功した!いろいろと修復に苦労するラジオである!


真空管を試験器で試験してみると、なんと低周波増幅のUX−26Bの針がほとんど振れないだけ、エミ減が激しい状態である。こんなに劣化した球を見るのは、初めてです。これは交換しなければ音は出ない程劣化してますが、戦前の真空管の26Bや12Aは、現在大変貴重で特に高価です!戦前のラジオの修理は、いろいろと大変ですねぇ!


シャーシーの再塗装が完了したところ。見違える様に綺麗になりました。これから電気配線に取りかかります。


電気配線が完了したシャーシー内部の様子。全て新品を使用してますが、電源トランスだけは当時の物なので不安ですので絶縁試験を実施しましたが、やはり若干の絶縁低下がみられます。


修復が完了したところ。パイロットランプが付いていないので、ちょっと物足りないですね。サランネットも張り替えし、エンブレムも再塗装しました。戦前のラジオの音が蘇りました。是非とも大切に末永くお使いください!

以上、修復作業時間は約14時間、交換部品代は約6,000円でした。

このラジオの修理記録は、Une mansarde de la maniaqueのココに、また外観が若干違ってますが、ラジオ工房のココにも記載があります。

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月22日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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