「国民受信機Z−3」修復記その2


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修理を依頼された、松下無線(NATIONAL)の「国民受信機Z−3」 の修復をして見ました。


修復前の様子。亡き父親が大切に使っていた思い出のラジオという事で、修理を依頼される。このラジオはまた、僕が初めて戦前のラジオの修理に挑戦した思い出のラジオである。以前の修復記はこちら。使用真空管は、UY−24B(高周波増幅)、UY−24B(再生検波)、3Y−P1(電力増幅)、KX−12F(整流)である。電力増幅管はオリジナルではUY−47Bであるが、現在ではこれはほとんど入手困難である。ツマミは幸いな事にオリジナルである。サランネットは汚いので、張り替えを実施する事にした。キャビネットはそれほど汚れていないので再塗装は無しで、万能ワックスクリーナーで洗浄する。


修復前の内部の様子。シャーシーの錆も少なく、状態は良い。再生検波段のUY−24Bはグリッドキャップが取れているので、代わりに保守用に同封されたUY−57Sを使用する。配線に一部ビニールコードが見られるので、最近修理の手が加えられた様だが、電源コードが根本から付いていない。残念な事に、裏蓋が欠品である。僕の持っているZ−3より、状態が良さそうである。後ろの「国民受信機Z−3」のエンブレム(銘板)が欠品である。


修復前のシャーシー上部の様子。多少の汚れはあるが、錆は少ない。依頼主の方が清掃してくださった様だ。


ダイアル目盛りも反りも無く状態は良いが指示針駆動用の糸が切れていたので、苦労して張り直した。照明用の豆電球ソケットの台座がシャーシーとの間で絶縁不良なので、念のために新品に交換した。せいぜいヒーター電圧しか掛からない部分であるがショートすると困るので・・・。ここに灯が灯る日も近い。


修復前のシャーシー内部の様子。所々新しいビニール線が使われているが、抵抗やコンデンサー類の交換された跡は見られない。アンテナコイルとRFコイルは断線無し。電源平滑用のチョークコイルは断線無しであるが、24Bのプレート負荷用のチョークコイルは断線していた。これば僕の持っているZ−3と同じ故障である。マグネチックスピーカーのコイルは幸いな事に断線は無し。電源平滑用の大型ペーパーコンデンサーは不思議なことに膨張もなく原型を保っている。再生調整の100KΩのボリュームが経年変化で40KΩ程度しか無く、交換する事にした。大型(0.6W型)なので、VRも結構高い!


シャーシーの再塗装は不要との事であったので、とりあえず全ての部品を取り外して、シャーシーを丸洗いして綺麗にする事にする。配線もすべてやり直し、抵抗やコンデンサー類はすべて新品に交換する。これで綺麗に安全に使用出来るであろう。心配な電源トランスは絶縁試験も良好で動作もOKであった。ここまで徹底的にレストアすれば安心である!僕の持っているZ−3もここまでやりたかったのであるが、あの頃は残念ながらここまで出来る技術と度胸を持ち合わせて居なかったのである!本当はここまで分解したら、シャーシーも再塗装したいところなのだが・・・。


電気配線の修復が完了したシャーシー内部の様子。すべての配線を組み直しておりますので、綺麗になり安心してお使い頂けます。電源コードも新品の袋打ちコードと丸形プラグに交換してあります。この色の袋打ちコードは製造中止で、現在はレアです。


修復が完了したところ。サランネットも張り替えて、大変綺麗になりました。1時間程度テスト後、問題がなさそうなので完了とする。思い出のラジオ、是非とも大切にお使いください!

以上、修復作業時間は約15時間でした。

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