ハムズ・オフィス「TS−7st2」修復記


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修理を依頼された、ハムズ・オフィスのST管スーパーラジオキット、「TS−7st2」 の修復をして見ました。

このラジオは、僕の所に修理依頼された、ちょうど100台目の記念となるラジオです。今までたくさんの方々に修理依頼を頂き、誠にありがとうございました。この場をお借りして、お礼申し上げます。今までの所、僕の修理したラジオで致命的な事故などのクレームは入ってきておりません。今後とも安全第一でラジオを修理して行きたいと思います。よろしくお願いします。

また、このラジオの修理にあたり、こちらのサイトも参考にさせて頂きました。お礼申し上げます。

こんな貴重な、また豪勢なキットを企画・立案・販売されていたハムズ・オフィス様に、敬意を表します。(現在は、このキットは完売です!)


修復前の様子。使用真空管は、6W−C5(周波数変換)、UZ−6D6(中間周波数増幅1)、UZ−6D6(中間周波数増幅2)、UZ−75(検波&低周波増幅)、UZ−41(電力増幅)、KX−5Z3(整流)、EZ−6E5(同調指示)と大変豪勢である。お値段も7万円以上と、大変豪勢である?!ツマミは左が電源兼音量、中央が帯域切り替え、右が中波・短波切り替えである。短波の受信範囲は、7MHz〜15MHzだそうである。受信範囲や調整に関して、説明書に一切記述が無かったので、問い合わせを実施しました。


修復前のシャーシー上部の様子。ヒーターに5V/3Aも消費する大型の整流管、KX−5Z3が目立つ。電源トランスも大型で頼もしい。写真には、マジックアイは付いていない。受注生産なので、シャーシーも手加工の様で、大変手間が掛かっている様である。電源平滑用のケミコンは、回路図では20μF+20μFであるが、実際に付いているブロックコンデンサーは10μF+10μFであり、整流管に比べてちょっと少ない気がする。


修復前のシャーシー内部の様子。組み立てでかなり苦労された跡があちこちで見られる。バンド切り替えのロータリーSW周りの配線が解らないとの事で、バンド切り替えは配線されていない。中波はミズホ通信の局発コイルとアンテナコイルが後付けされており、一応鳴るらしい。


このキット、出力管はUZ−41であるが、出力トランスがこんなに小さくていいのでしょうか?スピーカーは5Wの物が使われているのに、この出力トランスでは、心許ない・・・。電源トランスの豪華さに比べると、何とも小さい。この大きさだと、1Wも入らないのでは・・・?ちなみにUZ−41は6AR5相当で、負荷抵抗7KΩで3.2W程度の出力が出る球である。確かにボリュームを大きくすると、音が飽和してしまうのである。日本の家庭事情では、そんなに大きな音は出せないのであるが・・・。読者の方が組み立てた同じキットは、出力トランスを交換したら、かなり音が良くなったと報告を頂いております。


それと気になっているのですが、ソケットの端子の固定部分に出ている頭が、シャーシーの下に隠れているが(写真の矢印部分)、ここは電圧が掛かる部分であるから、この間に異物が入ったとするとスパークやショートの原因となり、大変危険である。改善して欲しい物である。このままだと、電気用品安全法は絶対に通らないだろうなぁ・・・?(キットだから関係ないけど!)他のソケットも同じです。高電圧が掛かる整流管ソケットが、特に不安ですね。


このキットの目玉、帯域を切り替えられるトリオのT-48というIFTである。中間周波2段増幅なので、IFTは3個ある。大変貴重な物である。これが高いんだろうな〜ぁ!バリコンの隣にある小さな2つの箱型の部品が、中波と短波の本来の局発コイルである。


電気配線が完了したところ。バンド切り替えのロータリーSW周りの配線を実施し、いくつかの配線ミスを修正し、マジックアイの消耗を防止するための消灯用のスイッチを後側に取り付けました。


局部発振周波数や同調周波数を調整しているところ。調整箇所が多くて、結構大変な作業です。短波帯の受信周波数は、設計値の7MHz〜15MHzより、実際は若干狭かったです。中波帯は、アンテナコイルが交換されたミズホ通信製であり、局発コイルはキット付属のを使用している為、うまくトラッキングが取れない。短波帯は両方キット付属のコイルを使用している為、良好なのであるが・・・。結局、発振コイルはミズホ通信製を使用することにした。


ここまで直しましたが、この後依頼主の方から、Sメーター方式に改造して欲しいとの連絡が入りましたので、急遽改造する事になりました。このキットには、マジックアイ式と、Sメーター式の2種類のバージョンが存在する。早速ハムズ・オフィス様から、Sメーターバージョンの回路図を送って頂きました。


修復が完了したところ。キットの説明書に調整に関する記述が一言もありませんし、短波帯の受信周波数範囲も記載がありませんでした。説明書に調整方法に関して、もう少し説明が欲しかったですね!おとなの工作読本No.7という書籍に書いていて有るみたいですが・・・。各種調整等を実施したら、かなり感度も良くなった。後ろ側に、Sメーター0点調整用のボリュームを取り付けてあります。またIFTの帯域切り替えによって、HiFiモードではかなり良い音も楽しめるし、短波帯の同調も楽である。パイロットランプが付いていないので、少し寂しい。今後、ハムズ・オフィスでは、USA製のIFTを使用したST管5球スーパーラジオキットを販売予定であるとの事です。期待しております。貴重で高価なラジオです。大切にお使いくださいね!


その後、中波用のアンテナコイルが見つかったとの事で、再度ラジオをお送り頂きました。やはり専用のコイルという事で、トラッキング調整もぴったりになり、中波帯もかなり感度が向上しました。


ついでに、貧弱だった出力トランスも適切な大きさの物に交換しました。これで音の歪みも少なくなり、大きな音もクリアに再生出来る様になりました。

以上、修復作業時間は約16時間でした。

その後、同じキットを組み立てたという、読者の方から写真を送って頂きました。こちらです。

誠文堂新光社から2007年11月中旬に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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