マツダ「タイマーラジオ」修復記


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修理を依頼された、東京芝浦電気(TOSHIBA)の「タイマーラジオ、5EA−72」 の修復をして見ました。


修復前の様子。ピアノラジオに続く、変な名前のラジオシリーズ第二弾である。電源コードが途中から切られているので、過去に事故でも有ったのであろうか?怪しさ満点である!使用真空管は12BE6(周波数変換)、12BD6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、35C5(電力増幅)、25M−K15(整流)である。整流管の25M−K15は、現在は大変貴重で高価である。タイマーが付いているのがウリであるが、名前までそうしなくても良い様な気がするが・・・?(あまり購買意欲をそそる名称ではない。)この名称は、”名は体を表す”の元祖的な存在で、その後「ラジオカセット」や「テレビデオ」などの解り易い名称の起源になったラジオである?(うそ!)最近の携帯電話は、ラジオも聞けるそうである。そこで提案である!そんなラジオ付きの携帯電話には「(マツダ)電話ラジオ」って名称は如何であろうか?東芝様?解り易いと思うのですが・・・。もちろんラジオ部分は電池管の4球スーパーで、どちらかと言えば黒電話に電池管のラジオが付いたというデザインで!携帯の電波の強さは、3本の棒グラフではなく、是非ともマジックアイを使って欲しいものである!


修復前の内部様子。タイマーはどんな仕組みなのであろうか?またこのラジオは、ピアノラジオと同じ仕組みの、放送局プリセット方式で、ボタン一つで一発選局が可能なのであるが、機械式なんであまり精度は良くなく、ボタンを押す勢いで多少ずれるし、プリセット以外の放送局を選局するのには、横の周波数指示ダイアルを直接回さなくてはならないので、少し不便である。


キャビネットは薬品で浸食された様に、劣化している。残念である。ベークライトのキャビネットは、マジックリンやスーパーオレンジなどの強力洗剤に侵されます。このラジオもきっと汚れを落とそうとして洗剤によって浸食されたのであろう。これは洗浄しても取れないので、磨き込んでいかないといけないであろう。洗剤が使えないので、磨き粉によって少し磨きましたが、塗装してあるみたいで地の色が出てきてしまいました。綺麗にするには再塗装するしかないでしょうが、文字盤部分をどうするかが問題です。。


修復前のシャーシー上部の様子。何故か電源コードが途中で切られており、ヒューズもネオン管のパイロットランプも欠品である。汚れも少なく状態は良さそうに見えるのであるが・・・。


修復前のシャーシー内部の様子。ペーパーコンデンサーは使われておらず、すべてオイルコンデンサーが使用されている。特に大きな事故は発生した形跡はないのであるが・・・。


タイマーはユニットになっており、指定時間になったらラジオが切れるとか、入るとかが設定できる。ラジオを聞きながらお休みやお目覚めには最適である。ただし残念ながら、タイマーはモーターの断線か、動かないのである。


修復後のシャーシー内部の様子。信頼性の低いオイルコンデンサーはすべて交換しました。ケミコンテスターでブロック型のケミコンの漏洩電流を測ると、なんと流れる流れる!まるでショートしているみたいである。電源コードが切られていた訳がわかった。このまま通電したら、恐ろしい事になったであろう!外観を見る限り何ともないので、ケミコンテスターが無ければ、そのまま通電していた事であろう!ああ、恐ろしや!そんな訳でケミコンもすべて交換して通電テストの前に導通を測ってみると、導通がない。真空管のヒーターの断線がある様だ。1本ずつ導通をチェックしてみると、出力管の35C5が断線している。貴重な整流管の25M−K15が断線してなくて、良かった良かった!自分の在庫の35C5を挿して導通を測ったが、まだ導通がない!順番に導通をチェックしていくと、ヒューズホルダーが接触が悪い。これは新品に交換して解決!やっと導通も確認でき、いよいよ通電テストしてみるが、今度はウンともスンとも言わない。さすが怪しさ満点のラジオである。音が出ない原因は、普通は出力トランスの1次側の断線や、イヤホーンジャックの接点不良などが多いのであるが、このラジオは通電前に出力トランスの導通は確認済みであるし、イヤホーンジャックは付いていない。調べてみるとスピーカーのボイスコイルの断線であった。全く同じスピーカーの在庫が無いので、少し小さいが取り付け穴が同じ新品のスピーカーに交換した。ただし、現代のスピーカーには、出力トランスを取り付ける場所がないので、仕方が無く出力トランスは、スピーカーの取り付けネジに挟んで取り付けた。通電テストしてみると、一瞬放送が聞こえて、すぐに聞こえなくなった。まだ問題があるらしい!原因は自分の所に有って適当に挿した35C5がたまたま不良であったのである。何と運の悪いラジオなのであろうか!別の35C5を挿して、無事解決!たかがmTトランスレスラジオなのであるが、これだけ故障箇所も多く、苦労したのは久々である。悩ましいラジオであった。


修復が完了したところ。パイロットランプでマツダのマークが光るのであるがネオン管なので、暗くて寂しいのである。バーアンテナ内蔵なので、感度は良い。タイマーが動かないし、12の所で切れないで8のところで切れるのである。プリセット方式のボタン選局は、動作するのであるが・・・。1時間ほどテストして問題が無さそうであるので、完了とする。不運のラジオで、修復にはかなり苦労しました!大事に使ってくださいね!


その後、依頼主の方から、キャビネットを別の状態の良い物に入れ替えた写真を送って頂きました。状態の良いキャビネットが入手出来て、本当に良かったですね!

このラジオの修理依頼者の方のブログはこちらです。併せてごらんください。

以上、修復作業時間は約6時間でした。

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