テレビアン「形式不明」修復記その1


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦前〜戦時中〜終戦直後のラジオその2 > テレビアン「形式不明」修復記その1

修理を依頼された、山中電機(テレビアン)の「形式不明」 の修復をして見ました。


修復前の様子。戦前の高一ラジオの様だ。ダイアル目盛りにテレビアンの文字があるが、シャーシーなどに形式を示す銘板等はない。刺さっていた真空管は、UY−58,UY−57,UY−56、KX−12Fであった。通常ならUY−58(高周波増幅),UY−57(再生検波),UY−47B(電力増幅)、KX−12F(整流)なら、つじつまが合うのであるが・・・?昔、UY−56を出力管代わりにしていたラジオも有ったそうであるが、果たしてこのラジオはどうなのであろうか・・・?47Bと56は、ソケットは同じであるが、そのまま差し替えは出来ないはずである・・・?元の回路はこんな感じであろうか?

 − 読者の方から、こんな意見を頂きました。なるほど、話のつじつまが合いますね!ありがとうございます! −
 「出力管はやっぱり元は47Bだったのですね。56が使われていた件ですが、戦後47Bが製造中止のまま再開されず、47B使用のラジオの保守に困って、同じ5ピンで2.5V球で割とプレート損失が大きい56を、やむを得ず「代用する方法」という雑誌記事をどこかで見た事があります。もちろん配線は変更しなくてはなりませんが、そのラジオが使えなくなるよりはマシだったのでしょう。56のプレート損失は1.4Wありますから、47Bの4Wには全然及ばないですが、並四の12Aの1.8Wに割と近いですので、そこそこの音量は出たのかも知れません。 後に3Y-P1が開発されると、この様な変則代用の必要は無くなったのでしょうが、それまではこうするしかなかったのでしょう。」


修復前の内部の様子。電源コードが切断されている。結構錆が出ている様だ。マグネチックスピーカーも見られる。幸いな事に、スピーカーのコイルの断線はなかった。


修復前のシャーシー内部の様子。状態はあまり良くなさそうである。ブロック型のペーパーコンデンサーに並列にケミコンが追加されている様だ。高一コイルの1次側のB電流が流れる側が切れていたので、新品に交換する事にする。1次側は切れ易く巻き直しは困難である!


修復前のシャーシー上部の様子。あちこちに錆が多く見られるので、シャーシーは再塗装する事にする。よく見るとソケットに真空管名称が書かれていた。やはり出力管はUY−47Bが使われていた様だ。では、なぜUY−56が刺さっていたのであろうか?不思議である。このままでは使えないはずである!!!現在UY−47Bの入手は困難であるので、代替え管の3Y−P1を取り付けるしかない・・・。こちらも貴重で高価であるが・・・。


文字盤にはテレビアンの文字が。戦前のラジオなんで、時計回り方向で周波数が下がる方向で、現在のラジオとは逆である。受信周波数も戦前なんで、550KHz〜1500KHzと現在に比べ、若干狭い範囲である。周波数の指示針が折れている。今回は現在の規格の製品の高一コイルに交換するので、目盛りと実際の受信周波数に若干のずれが生じる事が予想される。


マグネチックスピーカーは、コイルの断線はありませんでしたが、錆びて汚かったので、再塗装して綺麗にしました。コイルは断線防止の為に、依頼主の希望によって、巻き直しを実施する事にしました。


キャビネットは家庭用洗剤で洗浄後、万能ワックスクリーナーで汚れを落とし、サランネットを張り替えて綺麗になりました。


このラジオに使われていた膨張して破裂しかかっているブロック型ペーパーコンデンサーである。こんなに大きくても容量は6μFである。手前のコンデンサーは現在の10μFのケミコンである。ずいぶんと小型化されているのが解りますね。


シャーシーは錆がひどいので完全分解し、再塗装する事にしました。


サンダーで錆を落とした後、防錆剤にて錆止め処理を実施後、銀色に再塗装しました。どうです?


真空管のシールドケースや、電源トランスなども、再塗装してあります。


再塗装後のシャーシー前面。ボリュームは接触不良が改善されなかった為に、新品に交換し、軸を延長しました。目盛りの軸は、針金で製作する事にします。


主要部品を取り付けて、配線を待つだけのシャーシー内部の様子。ソケットや豆コンなどの部品も洗浄し、接触不良を防止する為に、ヤスリで磨いてあります。電源スイッチも接点部分を磨いて絶縁試験も実施しました。電源トランスは入出力線が布巻き線であるので多少不安であるが、交換すると高価で同じ形の物が入手出来ないので、絶縁試験後、使用するか交換するか判断する事にしました。


電気配線が完了したシャーシー内部の様子。すべて配線をやり直しました。心配な電源トランスの絶縁は、測定の結果何とか使えそうなレベルであったので、このまま使用する事にした。


修復が完成したところ。ツマミが緩いので、板バネを取り付けました。高一コイルを現在の規格の製品に交換してあるので、若干周波数目盛りにずれが生じている。ダイアル指針も自作しました。しばらくテストして問題無さそうなので完了とする。是非とも大切に末永くお使いください!

以上、ここまでの修復作業時間は約17時間程度でした。

その後、同型のラジオを修復しました。詳しくはこちら

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