真空管ラジオの修理について3


(続)真空管ラジオ修復記 > 真空管ラジオの修理について3

まず、はじめにお読みください!

最近のレトロブームの影響で、古い真空管ラジオを入手して修理しようと計画している方も多いと思います。ここでは簡単にヴィンテージ真空管ラジオの修理方法を述べさせていただきます。


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真空管ラジオを修理するのに当たって、症状別の対策をご紹介します。

1.電源を入れると、ヒューズが飛ぶ。あるいは電源が入らない。
 致命的な故障があります。レストアされていないラジオに、いきなり通電するのは止めましょう。電源スイッチや電源プラグの接触不良、ヒューズやコードの断線があると思います。トランスレスラジオは真空管の1本のヒーターが切れると、電源が入りません。チェックしましょう!

2.電源は入るが、スピーカーから全く音が出ない。
 全く音が出ないのは、出力トランスの1次側の巻線の断線、イヤホンプラグの接点の不良、マグネチックスピーカーのボイスコイルの断線、出力トランス1次側に並列で付いている0.002μF程度のコンデンサーのショート等が考えられます。テスターでチェックすれば解ります。

3.電源は入るが、スピーカーから軽く「ブーン」というハム音が聞こえるだけで、放送が受信できない。
 アンテナコイルの断線、局部発振の停止、IFTの断線、低周波増幅管の負荷抵抗(250KΩ程度)の断線、ボリュームの不良等。PU切り替えが有れば、PUモードにして、PU端子に指を触れて大きく「ブー」と鳴れば、低周波増幅回路は正常です。また、音量調整ボリュームのスイッチでPUモードに切り替えるラジオは、このスイッチの不良の場合もあります。

4.放送が受信出来るが、感度が悪い。
 アンテナコイルの1次側の断線や接触不良。スーパー受信機では、調整の不良。戦前のストレート受信機などでは、電波が弱い場合など。昔のラジオはアンテナが必要です。鉄筋コンクリートの住宅では、うまく受信出来ません。屋外にアンテナ線を延ばしてください!

5.放送が受信出来るが、がりがり音がする。
 どこか接触不良があります。真空管をそっと1本ずつ揺すってみましょう。ソケットの接触不良は、バネを強めたり、ヤスリで磨いたり、接点復活剤で清掃したりできます。半田付けの不良で、接触が悪い場合も多いです。ロータリーSWの接触不良の時は、B電圧の切り替え部分に接点復活剤を塗ると、絶縁不良を起こして泣きを見ます。注意しましょう。ボリュームのガリは接点復活剤を塗るか、新品に交換しますが、長軸のSW付きのボリュームは、特注品なので1000円以上と高価です。

6.ボリュームを最小にしても、音が絞り切れない。
 大体はボリュームを最小位置にしても、可変抵抗器の1と2の端子の抵抗値が0にならず、残留抵抗が数KΩある不良です。またSW付きでPUとの切り替え機能がついている場合、切り替えスイッチの接触不良の場合もあります。どちらにせよ、可変抵抗器を交換すれば解決です。

7.放送が受信できるが、数分経つとおかしくなる。周波数がずれる場合がある。
 しばらくするとおかしくなるのは、真空管のエミ減(寿命)か、コンデンサーの絶縁不良です。交換しましょう。受信周波数がずれてくるのは、ある程度仕方がないです。真空管ラジオの内部は、結構熱を持ち、局部発振の周波数がずれてきます。特に短波放送を受信していると、ずれてきますね。局部発振のバリコンに付いている470pF(短波では2200pF)程度のコンデンサーは、温度補償型に交換すれば、少しは改善しますが、全くずれなくすることは難しいです。

8.放送が受信できるが、一部の周波数の放送局が受信出来ない。
 バリコンの羽が、その部分でショートしてませんか?スーパー受信機では、調整が極端にずれている場合、高い周波数の感度が極端に悪くなる場合があります。また周波数変換管のエミ減で、高い周波数で局部発振が停止して、受信出来ない場合があります。別のラジオを近づけて、局部発振が正常な周波数で発振してるか確認し、してない場合は真空管を交換してみましょう!また6BE6などでは、寄生容量で局部発振がとんでもない高い周波数で発振する場合があります。数KΩ程度を局部発振のグリッドに直列に挿入し、寄生容量の影響を抑えましょう。まず、発振周波数の確認を!

9.スピーカーから変な音がする。異常発振している様だ。
 まず発振がどこで起きているかです。スピーカーからの音である程度判断できます。「ボコボコ」とか、「ボー」とかいう音がすれば、高周波回路での発振です。この場合、マジックアイが付いているラジオの場合、同調してなくてもマジックアイが閉じたりします。スーパー受信機の場合は、配線の引き回しや、部品の配置で発振する事があります。同調回路、局部発振回路、中間周波数増幅回路のそれぞれの配線や部品は、お互いに近づけない事。アンテナコイルと発振コイルは、シャーシーの上下に互いに90度の方向を向けて分離するなどが鉄則です。外部アンテナのリード線が、局部発振回路や、中間周波数増幅回路の近くを通らない様にしましょう!またIFTのP端子の配線と、G端子の配線は近づけないでください!スピーカーから「ピー」という音がするのであれば、低周波増幅回路の発振でしょう。グリッドとプレートの配線が近づいていませんか?グリッドの配線は、シールド線を使うと有効です。またST管の場合、トップグリッドの配線の方向(引き回し)で発振が起きる場合もあります。低周波増幅管のシールドケースはきちんと付いてますか?またスピーカーから「ブーン」というハム音が出る場合、電源回路の平滑コンデンサーの容量抜けが考えられます。ここの容量を増やす場合、あまり大きくすると整流管を痛めます。特にST管の場合は、初段のコンデンサー多くても22〜33μF程度で我慢しましょう!またシャーシーの部品のアース接続地点でもハム音が出る場合があります。アース母線の引き回しや1点アースなどの原則はありますが、なかなか一概には言えません。低周波増幅管の6Z−DH3A(6AV6)等の、プレート辺りの100pF程度のアース位置でハム音が消えた場合があります。電源のコンデンサーで解決しない場合は、アースを落とす位置を変えてみましょう。

10.再生がうまく掛からない
 戦前の並三や並四のストレートラジオで、再生が掛かりすぎて発振する場合や、逆に再生が掛からすに感度が悪い場合もあります。この場合は再生コイルの増減で調整するのですが、面倒なので、再生バリコンに並列にコンデンサーを入れて、帰還量を増やしたり、サプレッサー・グリッドの電圧を調整して帰還量を増減したりします。再生が全く掛からない場合は、再生コイルのMとPの端子を逆に繋ぎ変えるといい場合があります。

11.火や煙が出てきた。爆発した・・・。
 もう、あきらめたほうがいいです。危険ですので、そのラジオは直そうと思わず、すぐに捨ててください!僕が拾います!(汗)


<最後におまけです。>
 初めてラジオを通電試験する時は、誰でもドキドキするものです。怖いです!寿命が縮まります。そこで僕は安全の為に、こんな物を作りました。万が一の事故に備えて、たとえラジオがショートしても安全で、またトランスレス機でも感電しない様な電源です。回路は簡単で、絶縁トランスの出力に保護用の白熱電球が直列に入っています。白熱電球は、温度が低い場合は抵抗が小さいので、ラジオが正常な電流の場合は、電源電圧のほとんどがラジオ側に掛かりますが、万が一ラジオがショートしても、保護用のランプが点灯するだけです。またラジオに電流が流れすぎた場合でも、白熱電球の抵抗が上昇して光り、ラジオに掛かる電圧が下がるので事故が防げます。また、電流が流れすぎている事を、ランプが薄暗く点灯することで知らせてくれます。(正常時はあまり点灯しません。)手元の非常停止スイッチ(孫の手スイッチ)で、異常時にはすぐに電源を切れる仕組みです。白熱電球の電圧降下分を補正する為に、トランスで若干電圧を上げています。通電試験が怖い方、作ってみては如何でしょうか?これで僕の寿命も何日も延びた事か・・・。(ランプは、レス機など消費電流が少ないラジオでは40Wを、トランス付きのラジオなど消費電流が多いラジオでは60W〜100Wを使用します。簡易的には、トランス無しでもOKですので、安く簡単に作れます!)

 本機は、通電試験のスリルを味わいたい方には、お奨めしません!使用上の注意を良く読んで、正しくお使いください!


(この元となるアイディアは、ラジオ工房の内尾様が考えました。ここにお礼申し上げます。)


真空管ラジオの修理について1や、真空管ラジオの修理について2も参考にしてください!

各種ラジオの標準回路図はこちらからダウンロード出来ます。修理の参考にどうぞお使いください。ただしラジオの機種によって、接続や定数は若干の差があります。
不明なラジオの用語は、新ラジオ用語辞典を参照ください。
ラジオの歴史は、ラジオ歴史館を参照ください。

<注 意>
 
本ページは、素人修理をお薦めするものではありません。
古いラジオの修理はご自分の責任において実施してください。真空管ラジオはB電源に高圧が掛かります。感電事故には十分注意してください。古いコンデンサーは破裂(爆発)する場合があります。特に注意してください!下手な素人修理は火災や破裂などの重大事故の原因になります。ご自分で修理される場合は、リスクを十分ご理解して実施してください。当方ではご自分で修理した結果に関しては、一切責任を持てません。あしからずご了承ください。

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まず、はじめにお読みください!

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誠文堂新光社から2007年11月中旬に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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