三洋「SS−820」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦後mT管トランス付きスーパーラジオその2 > 三洋「SS−820」修復記

修理を依頼された、三洋電機(SANYO)の「SS−820」 の修復をして見ました。


修復前の様子。しばらくは鳴っていたが、最近スイッチの後ろからパチパチ火花が出るとの事で、修理&点検を依頼される。スイッチの接触不良だけなら良いのであるが・・・。使用真空管は6BE6(周波数変換)、6BD6(中間周波数増幅)、6AV6(検波&低周波増幅)、6AQ5(電力増幅)、5M−K9(整流)、6Z−E1(同調指示)である。高音と低音それぞれ3つずつの押しボタンスイッチで、9通り(16通り?)の音質が選べ、また感度もDX、HiFi、RT(?)と切替が出来るマニアックな設計である。ところでRTとは何の略であろう???ちなみに当時(昭和31年)の定価は17,900円だったそうである。日本ラジオ博物館ここにも、同じラジオが見つかった。


修復前の内部様子。それなりに汚れている。シャーシーにはかなり錆が出てきている。年代にしてみれば、保存状態が悪かったのであろうか?


修復前のシャーシー上部の様子。戦前のラジオ並に錆びている。よほど湿度が高い所に保存されていたのであろうか?昭和31年製にしては、状態はあまりよろしくない。


修復前のシャーシー内部の様子。修理や事故の跡は見られないが、一部のペーパーコンデンサーが絶縁不良で発熱したと思われ、パラフィンが溶解しているのが見受けられる。


キャビネットは完全分解し、プラスチック部分は水洗いしました。


修復が完了したシャーシー内部の様子。全てのコンデンサー類を交換しました。シャーシー上部に付いている出力トランスも、保存状態が悪く、断線の危険が有るので念のために交換しました。ケミコンテスターで高圧を掛けてみると、異常に電流が流れます。調べてみると、ロータリーSWのB電圧が掛かる部分が、僅か数ミリの間隔でアースになっている。この部分の絶縁不良らしい。清掃して炭化した埃を取り除いて清掃して、異常電流は流れなくなったが、根本的な解決にはならず、イマイチ不安が残る。他の絶縁試験も実施しましたが、全体的に絶縁の劣化が激しいので、注意してお使いください。


修復が完了したところ。マジックアイは新品にて撮影しました。HiFiラジオなりの良い音がします。高音と低音の独立した切り替えにより、お好みの音が出せます。安全にお使い出来る様に修復はしましたが、絶縁の劣化とロータリーSWの配置は対策出来ません。使うときは人の目を離さず、異常に気づいたらすぐに使用を中止するなど、安全には特に注意して末永く大切にお使いください!

以上、修復作業時間は約10時間、交換部品代は約4,600円でした。

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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