松下無線「形式不明」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦前〜戦時中〜終戦直後のラジオその2 > 松下無線「形式不明」修復記

修理を依頼された、松下無線(NATIONAL)の「形式不明」 の修復をして見ました。


修復前の様子。かわいい戦前の並三ラジオの様である。使用真空管はUY−56(再生検波)、UX−12A(電力増幅)、KX−12F(整流)である。この構成のラジオは見かけた事がない。ダイアルツマミは左側がオリジナルであろうか?キャビネットの右横にトグルスイッチの電源スイッチが付いている。


修復前の内部様子。幸いな事に、マグネチックスピーカーはコイルの導通がある。シャーシーの状態は、錆も少なく良い方である。


修復前のシャーシー上部の様子。ブロック型のペーパーコンデンサーが絶縁不良で発熱したらしく、内部のタールが融けてシャーシーに染み出ていて汚い!


戦前のラジオには珍しく、ダイアル糸による同調駆動機構である。ダイアル糸に赤い球が付いていて目盛り上を動いて指示するという物で、その後のダイアル指針での指示の原型になっている機構である。その赤い球も糸に固定されていないので、勝手に位置がずれてしまうのである・・・。


修復前のシャーシー内部の様子。電源コードが見事に切られている。改造はされていない様だ。やはり中央のブロック型ペーパーコンデンサーから、タールが溶融して汚くなっている。電源平滑回路のチョークコイルが残念ながら断線している。段間の低周波トランスとマグネチックスピーカーは珍しく導通がある。シャーシー再塗装の為に、完全分解する必要があるので、回路図を書いてみた。


キャビネットは洗剤で洗浄後万能ワックスクリーナーで仕上げました。サランネットを張り替え、ダイアル窓の飾り金具も再塗装しました。どうです?


あの汚かったシャーシーも完全分解し、タールと埃を落として再塗装しました。トランス類も別途再塗装してます。見違える様に綺麗になりました。


部品を取り付けてみました。ブロック型ペーパーコンデンサーは配線はしませんが、オリジナルの外観を保つために飾りで取り付けてあります。これから電気配線をやり直して完成です。どうです?かなり綺麗になりました!断線していた電源平滑用のチョークコイルは、今週秋葉原に行って購入して来て、別途取り付ける予定です。


電気配線が完了したシャーシー内部の様子。すべての配線をやり直し、ボロボロだったトランスの引き出し線のエンパイアチューブも交換してあります。これで安心してラジオを楽しめます!切れそうだったダイアル糸も張り替え、接触の悪かった電源のトグルスイッチは、内部を分解し接点を磨き、接点復活剤を塗布して良好になりました!


修復が完了したところ。各種絶縁試験も実施し、結果も良好でした。戦前の並三ラジオなんで、感度も悪く音も小さい。場所によっては長いアンテナが必要です。是非とも大切にお使いください!


その後、依頼主の方から使用している写真を送って頂きました。休息の一時に、コーヒーを飲みながら庭でラジオを楽しんでいるそうです。喜んで使って頂いて、大変うれしく思います。大切に末永くお使いください!

以上、修復作業時間は約14時間でした。

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