シャープ「K−20B」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦前〜戦時中〜終戦直後のラジオその2 > シャープ「K−20B」修復記

修理を依頼された、早川金属工業(SHARP)の「国策型、K−20B」 の修復をして見ました。


修復前の様子。秋葉原の東京ラジオデパート内のキョードーから購入したとあって、状態は良さそうである。一応鳴るそうであるが、安全と末永く使用するために点検と修理を依頼される。裏蓋の銘板には、昭和14年6月製造とある。使用真空管はUZ−57(再生検波)、UY−56(低周波増幅)、UX−12A(電力増幅)、KX−12F(整流)である。国策型なんで、使用真空管は決められている。シャープはこの頃にキャビネットのデザインがほとんど同じで、スピーカーグリルの部分のデザインが多少異なっている形式の違うラジオを多数販売していた為、オークションなどでも同じ様なラジオをよく見かけるのである。


回路図も状態が良いまま、残っている。修復にはありがたい!電源トランスのヒーターの巻線は1つで57と56を直列につないで12Aと共に5Vで点火し、中点で自己バイアスをかけてある。PLも2個直列で、5Vで点灯させている。他は非常にオーソドックスな並四の回路で、解りやすい!


修復前のシャーシー上部の様子。内部は思ったより綺麗ではなく、かなりの汚れと埃が見られる。紙ケースのケミコンまで付いている。大丈夫なのであろうか・・・?縦型のトランスが珍しい・・・。


修復前の内部の様子。なんと、当時のままの様である。この状態で通電するのは、大変勇気が要る!(僕には出来ない!)店で売っている物も、ちゃんとレストアしないと危険である!左側のツマミは電源スイッチ、中央のスイッチはアンテナコイルのタップ切り替え(感度重視/分離重視)、右側は再生調整のミゼットバリコンである。アンテナコイルのタップ切り替えスイッチが付いているのは大変珍しい!良く回路を見ると、トランスのヒーターのタップが、12A用の5V巻線と、57と56用の2.5V巻線に分かれており回路図と若干違う。依頼主の希望により、外から見える部分は出来るだけオリジナルにという事で、シャーシー上部は簡単な清掃のみで、再塗装は実施しない。


修復が完了したところ。安全の為に全ての抵抗とコンデンサーを交換し、配線もすべてやり直しました。電源トランスのエンパイアチューブも交換しました。パイロットランプはオリジナルの様に上下2個に交換しました。依頼主の方のご希望により、電源コードとSPへの配線コードはこのままとしてあります。絶縁試験を実施して良好でしたが、古い電源コードは特に危険です。交換した方が安心です。


修復が完了したところ。オリジナルな雰囲気を残しています。中央のツマミだけがオリジナルでなくて残念です。戦前の並四なんで感度はあまり良くはありませんが、長いアンテナコードを付けると充分実用になります。安全の為に、使用しない時は必ず電源プラグを抜いてお使いください!

以上、修復作業時間は約14時間程度でした。

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