Harmony「キット」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦後ST管スーパーラジオその3 > Harmony「キット」修復記

修理を依頼された、Harmonyの「キット」 の修復をして見ました。


修復前の様子。ST管ラジオには珍しく、短波付きかと思ったら、目盛りが付いているだけであった。どうもキットの様である。使用真空管は、UZ−6D6(高周波増幅)、6W−C5(周波数変換)、UZ−6D6(中間周波数増幅)、UZ−6C6(検波&AVC)、UY−76(低周波増幅)、UZ−42(電力増幅)、KX−80(整流)と、キットとしては変則的である。


修復前の内部の様子。フィールドダイナミックスピーカーが使われているが、何故かネジ1本でしか固定されていない。


修復前のシャーシー上部の様子。シャーシーにかなり錆が見られる。当時流行ったキットであろうか?その割に3連バリコンなんで、高周波1段増幅の7球ラジオらしい。(マジックアイは無し)最初は何とか鳴ったらしいが、調子が悪く依頼主の方が修理をチャレンジしたが、うまくいかなかったとの事で修理を依頼された。ダイアル糸が切れており、糸掛け図も無いことから、プーリーから糸が外れたり不安定だったりと、張り替えは大変苦労した。(糸掛けだけで、4時間程度掛かってしまいました・・・。)


修復前のシャーシー内部様子。7球の高周波1段増幅の割には、意外にすっきりしている。内部はまだまだ危険そうな、コンデンサー等が多数見受けられる。キットと思われるが、配線は大変綺麗に実施されている。セミプロ級の腕である。


修復が完了したシャーシー内部の様子。安全の為に、全ての抵抗類とコンデンサー類を交換しました。高圧が掛かる部分のエンパイアチューブも絶縁不良防止の為に交換しました。その他危険そうな配線も交換し、パイロットランプもソケット毎交換しました。通電してみると接触が悪い。原因はヒューズホルダーで、こちらも新品に交換しました。最近は2連のヒューズホルダーが売っていないので、こちらも貴重品です。電源コードは、ご希望により袋打ちコードに交換しました。ボリュームはガリが有るので、新品に交換しましたが、PU切り替えスイッチ付きのボリュームは特注品で高価な為に、今回はPU機能は殺して、音量調整のみにしました。(PU機能とは、当時レコードプレーヤーをラジオに接続して、ラジオをアンプとして使用し、SPレコードを聴く機能です。ちなみにピックアップが違うので、現在のレコードプレーヤーではうまく使用出来ません。念のため!)


修復が完了したところ。パディングコンデンサーがバリコンの直下だったり、バリコンのトリマが接着剤で固めていたりと、調整に大変苦労した。またこのラジオは整流管がKX-80であるが、フィールドダイナミックスピーカー搭載で、トランスのB巻線は380Vなんで、電源投入直後に他の真空管が起動する前はB電圧が500V以上になり、ケミコンの耐電圧を越えてしまします。真空管のプレート電圧250Vも遙かに超えるので、安全の為にKX-80Kを使用することを強くお薦めします!また、ツマミは左から電源・音質・音量・同調であるが、キャビネットの記載は左から電源・音量・切り替え・同調(英語で記載)であり、実際とは異なっております。

以上、修復作業時間は約14時間、交換部品代は約6,000円でした。

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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