ナショナル「CM−375」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦後mT管トランスレススーパーラジオその4 > ナショナル「CM−375」修復記

修理を依頼された、松下電器産業(NATIONAL)の「CM−375」 の修復をして見ました。


修復前の様子。 使用真空管は12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)、EZ−6E5(同調指示)である。真空管を試験したところ、かなり劣化が見られる。マジックアイ付きセミトランスレスラジオの様である。


修復前の内部様子。パイロットランプとマジックアイのヒーター用のトランスが付いており、何だか中途半端な作りである。レス用のマジックアイ12Z−E8を使って、整流管を19A3にすれば、トランスは必要無いのに、何故こんな回路にしたのであろうか?


付いていたマジックアイは、ご覧のとおり、ほとんど光りません!ナショナル製なので、一度も交換されてなかったと考えられます。


修復前のシャーシー上部の様子。埃が積もっていたが、エアーガンで一気に吹き飛ばすとそれなりに綺麗になりました。


修復前のシャーシー内部の様子。事故や修理の跡は見られない。


修復後のシャーシー内部の様子。全てのペーパーコンデンサーを交換しました。ケミコンは漏洩電流も少なく良好でした。通電試験してみたが残念ながら鳴らない!調べてみると、AVC回路の抵抗2MΩが1本断線、その他致命的な故障として、PU(ピックアップ)切り替え付きのボリュームのスイッチの接点がPU側のまま切り替わらない。どうりでラジオの音が出ない訳だ。しかもこのボリュームはトランスファー接点2回路なんで、現在は入手できないタイプである。残念ながらPU切り替えを諦めて、接点を直結してラジオ専用にするしか方法はない。(リレーを付けて、PU切り替えという方法も有るのだが・・・。)ボリュームの切り替えSWをバイパスさせて通電テストしてみると、ハム音がものすごい。調べてみると出力管30A5のヒーターとカソード間の絶縁不良であった。真空管を交換して、やっと正常に鳴ってくれた。


修復が完了したところ。残念ながらPU切替は出来ません。マジックアイは新品を取り付けて撮影しています。各種試験後、問題無さそうなので完了とする。修復に、思ったより手間が掛かったラジオであった。大切にお使いくださいね!

以上、修復作業時間は約10時間、交換部品代は約2,400円でした。

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売された「真空管ラジオ製作ガイド」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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