真空管ラジオの安全について


(続)真空管ラジオ修復記 > 真空管ラジオの安全について

真空管ラジオを修理している人はわかると思いますが、いつもどこまで部品を交換すれば安心出来るかという見極めがあります。
僕の修復のポリシーは、「外観はできるだけオリジナルで綺麗に、内部は安全第一で最新に」なんですが、では何処まで部品を交換すれば安全なのでしょうか?

まず最低限の安全を確保するためには、信頼性の低いペーパーコンデンサーは全数交換します。ケミコンですが、これも全数交換することが望ましいです。僕の場合、ケミコンテスターにて漏洩電流をチェックしてますが、昭和30年代のトランスレスラジオ以外は、交換しています。この頃以降のケミコンは信頼性が向上したからです。古い電源トランスは、レイヤーショートなどの心配がありますので本当は交換したいところですが、特に戦前のラジオのトランスは現在の物と交換すると、特に形が異なりシャーシー上部に違和感がありますので、絶縁試験を実施して危険な場合を除いては交換は実施していません。ただし、トランスの入出力線が布巻きのコードの場合や、エンパイヤチューブの場合は、安全の為にコードやチューブを交換してます。

戦前のラジオの場合は、内部の全ての配線と抵抗やコンデンサー類を交換します。真空管ソケットも洗浄し、絶縁不良が無い事を確認します。絶縁のチェックはメガテスター(絶縁抵抗計)を用います。戦後のラジオでも、ST管ラジオの場合は、抵抗類も交換することにしています。抵抗類はコンデンサー類に比べると比較的信頼性が高いのですが、値が大幅に狂ったりしている物が多く、火や煙を噴くのは抵抗類なんで、規格に充分余裕のある難燃性に優れた金属皮膜抵抗を使用しています。

電源コードや、ヒューズ、電源スイッチは特に安全上重要な部品ですので、必ず交換し、スイッチの絶縁抵抗は必ずチェックします。絶縁抵抗はPSE法では1MΩ以上あれば良い事になっていますが、最低でも20MΩ以上は欲しいところです。

とは言っても特に戦前のラジオはもう製造後60年以上が経過しています。いくら絶縁をチェックしても思わぬ所が故障する場合も考えられます。ラジオを使用する場合は、特に安全に気を配り、異常な音や臭いなどに注意し、使わない時はコンセントを抜くなど、安全にご使用ください。

今まで僕の修理して来たラジオで、発煙や発火などの重大な事故は発生しておりません・・・。

真空管ラジオの安全に関するポリシーは、人それぞれ違うと思います。本ページは安全に関するポリシーを第三者に強要するものではありません。僕の考え方を書いただけです。誤解の無いようにお願いします。違った意見の方もおられると思いますので、念のため。

inserted by FC2 system