昭和14年、「ラヂオ案内」


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ここでは昭和14年1月に社団法人日本放送協会が発行した「ラヂオ案内」という小冊子をご紹介します。一部当時の紙質が悪く、見難いところが有りますが、ご容赦願います。


これが昭和14年1月20日に社団法人日本放送協会(現NHK)が発行した「ラヂオ案内」の表紙です。12.6cm×18.6cmと割に小さく、全16ページと薄いです。


表紙をめくると放送協会の組織と放送設備に関しての記載があります。右側の写真は、上が「新装成れる東京放送会館」、中央が「150キロの強力電波を誇る川口の第一送信所」、下が「大阪放送会館の威容」となってます。組織に関しては、「日本放送協会は大正15年8月に創立された公益法人であります。放送事業の使命は国家的に極めて重大でありますので、その運営は全て逓信大臣の監督の下に行はれて居ります。(以下割愛)」と記載があります。(原文の仮名遣いのまま記載)


2ページ目には、全国放送局分布図があります。放送局は全国で35局ありました。当時日本の植民地だった、台湾、関東州(満州)、朝鮮、樺太等も地図に載っており放送局がありました。

3ページ目からは、以下の項目の様な記載があります。(以下原文のまま、旧仮名遣いと現代漢字で記載、一部割愛)

ラヂオと生活
 ラヂオと吾々の生活は今日に於ては最早や一日も引離すことが出来ません。若しも吾々の生活からラヂオを一日でもなくしたならば、どんなに寂しく物足りない事でせう。それなら吾々は一体ラヂオからどんな利益を受けて居るでせうか。

ラジオは修養の母です
 (割愛)
ラヂオは教養の国民学校です
 (割愛)
ラジオは慰安と娯楽の源泉です
 (割愛)
ラヂオは一番安価な娯楽機関です
 (割愛)
ラヂオ一つで山家も都です
 (割愛)
ラヂオは実況を放送します
 (割愛)
ラヂオは報道の王者です
 (割愛)
ラヂオは国際親善の契です
 (割愛)
ラヂオは国際宣伝戦の新鋭武器です
 (割愛)

ラヂオの受信機
ラヂオをお聴きになるに必要な費用
 ラヂオを聴くには費用は一体どの位かゝるだらうと云ふ事は、誰もがいちばん知りたい事だと思ひます。之に就いて簡単に申し上げませう。第一に受信機の値段ですが、一番簡単な鉱石式なら設備一切で10円位です。然し近頃一番よく使はれて居るのは直接電燈線からひくエリミネーター三球又は四球式の所詮交流式受信機で、之なら大体30円前後です。尤も放送所から遠く離れて居たり、電波の入る程度即ち感度の弱い山間地方などではやゝ高級な5〜60円程度の受信機が要ります。これには尚アンテナとか、引込線、切替スイッチ、アース棒などの費用として3〜4円位要ります。其の外に尚電燈線の引込料、内線工事費などいくらか電燈会社に支払はなくてはならぬ所もあります。それにラヂオを聴く為に必要な電気料として、定額制の所では35銭及至70銭程度支払ふ事になるでせう。また修理費は新設後2年位から部分品の取替等に小額を要すると思ひます。
受信機の選び方
 ラヂオをお聴きになるのに受信機の選び方ほど大切なものはありません。受信機の選び方が悪いと折角のラヂオの楽しみも目茶苦茶にになって仕舞ひます。初めての方は受信機の選択を往々他人委せにして失敗することが少なくありません。当協会に於きましては皆様が安心して而も極く手軽に最も良い受信機をお求めになる事が出来ます様にと、特に放送局型受信機と、認定受信機と云ふのをお薦めして居ります。
放送局型受信機
 是は特に放送協会の厳重な規格検査を経て販売されるものでありますから、その品質に於て性能に於て、受信機としては最も優秀と折り紙をつけて良いのです。目下製作を急いで居り近く市場に売出されることになって居ります。受信機の外面に貼られた局型マークでお解りになりますが、もしお買求めの際御不便でもありましたら直ちに放送局宛御一報頂ければ充分御便宜をお計りいたします。
 ← 局型受信機 ・・・これは幻の、放送局型第3号受信機です!詳しくは内田様のページを参照ください。
認定受信機
 是も放送局で行ふ一定の規格試験に合格したものですから安心しておすすめ出来るのです。是は一般にラヂオ商店で販売して居ります。お求めの際は受信機正面に貼られた認定マークに御注意下さい。
注意を要する受信機の取扱方
受信機の置き場所
 受信機の置場所としては先づ第一に取扱ひ易い場所であること、聴き易い位置におく事は勿論ですが、尚次の様な事は知って置いて頂きたいと存じます。即ち@アンテナ及びアースの引込線が短くて済む様な所。A振動の少ない所。B日光の直射しない所。蒸気塵埃等の少い所です。
受信機の調節仕方
 ラヂオを聴くには電源スイッチを入れる事は勿論ですが、スイッチを入れる迄には大抵次の準備が必要です。@アンテナ、アースの引込線を夫々受信機の所定の所にキチンと接続すること。A受話器又は高声器を所定の所に接続すること、B真空管を夫々ソケットに記入された型名と間違はぬ様一致させて挿し込むこと、C真空管の脚とソケットの接続が完全でない為故障を起こすことが多いのですから充分さし込む事が肝要です。鉱石式受信機だったら鉱石を受皿に挿し込まなくてはなりません。D電池を別に必要とする受信機なら其の(+)と(−)に誤りのない様に接続しなければなりません。E電池式受信機なら先ずA電池を接続し【コード赤線は(+)黒線は(−)です】フィラメントだけ点火して確かめた上更にB電池を接続することです。B電池をA電池を接続するコードに誤って接続すると真空管フィラメントを切断して仕舞ひます。Fエリミネーター受信機なら電源フューズを点検しなくてはなりません。Gこうして電源スイッチが入りラヂオが聞こえ出しましたら、余り大きい声を出して御近所迷惑をしません様に、充分音量を適当に御調整の上気持ちよくお聴き下さい。
受信機が故障を起こした時の取扱
 ラヂオの受信機は微妙な電気の働きによるのですから時々故障を起こします。勿論故障にも色々ありますがその原因は大抵共通な場合が多いのです。今代表的なものを挙げて見ますと@雑音が入って聞き悪くなった時はまづアンテナアースを受信機から取り外して見てください。Aそれでも尚雑音が同様入るならば原因はきっと受信機の内部に在るのです。Bアンテナアースを取り外すと同時に雑音が消えるならばアンテナアースの接続の不良、又は電燈電力線の故障、電熱器、電気治療器の妨害、又は近所の受信機など雑音の原因は外部に在る訳です。
だんだん聞こえなくなった場合
 この場合の原因には色々ありますが電源の電圧が大抵一定して居るエリミネーター受信機には電池式の様に電源の消耗による事は無い筈です。ラヂオの音が少さくなると同時にはっきりしなくなるのは、大抵真空管や鉱石の感度が悪くなった時、或はスピーカーの永久磁石の力が弱くなった時などです。
突然聞こえなくなった場合
 この場合は@低周波変圧器(オヂオトランス)の断線かA電源変圧器又は(オヂオチョーク)の断線かB広声器のコイルやコードの断線かCエリミネーターの平滑用コンデンサーの短絡などの場合です。D其他配線ハンダの分離E抵抗の切断などの場合にも突然聞こえなくなりますがこんな場合にはアンテナアースに故障があるかどうか調べて見て故障がなければ以上の原因であると見てよいのです。大抵以上の様な取扱に付いての事を一応知って居られますと大変便利です。
ラヂオ相談所
 ラヂオが故障のときはラヂオ相談所に御相談下さい。相談所は全国の放送局又出張所の所在地にあります。相談所では故障箇所の調査、簡単な修理、真空管の若返り其他受信機の御買求め、ラヂオの申込手順などラヂオに関する一切を取扱って居ります。尚最近は放送局公認のラヂオ相談所が各地に出来まして、放送局指定の料金で皆様のラヂオに関する御相談に乗ることになって居りますから充分御利用下さい。この公認相談所には【日本放送協会指定ラヂオ相談所】と云ふ標札が掛って居ります。
ラヂオをお聴きになる手順
 ラヂオをお聴きになるには、逓信局に願出てその許可を受けなくてはなりません。許可を受けずにお聴きになると処罰されます。ですからラヂオをおきゝになる場合は忘れずきっと許可をうけて下さい。手順は極く簡単です。放送局の案内所、ラヂオ相談所、御近所のラヂオ商、郵便局、電気会社などでラヂオ申込取次所の看板のかゝって居る所なら何処でも受け付けます。申込は申込用紙に所定の事柄を書き入れ、壱円の郵便切手を添えて御出しになればよいのです。申込書は直接御持参になられても、放送局宛郵送されても宜しいのです。此の壱円は逓信局に御願ひになる許可料なのです。申込書と引替へに「預り証」を差上げます。又十日程のうちに必ず、聴取許可書と、聴取章が御手元に届く筈です。許可書は紛失しない様に大切に保存して置いて下さい。聴取章はラヂオの正当な聴取者であることの登録なのですから、出来る丈見易い様に玄関とか門柱などにしっかり打ち付けて置いて下さい。又御転居なさる様なときは忘れず御転居先におもち下さいまして同様にいち付けて置いて下さい。
聴取料
 ラヂオをおきゝになるには前の許可料の外に毎月50銭宛聴取料を頂くことになって居ります。最も前に述べました聴取許可の日が月の16日以後になりました場合は、その月の聴取料に限って特に半額の25銭になります。聴取料金は放送局の集金員である証明書をもった者が、受取証と引替へに直接頂きに上るか、又郵便局で御支払を頂きます場合は、壱ケ年分6円を二度に分けて、3円づつ御払込を願ふことになって居りますから御承知置き下さい。


背表紙には、放送時刻表(番組表)があります。放送時間は、第一放送が午前6時30分から午後10時30分まで、第二放送が午前11時59分から午後10時20分まででした。朝の6時30分からは、ラヂオ体操が当時からやっていたのですね!

<感想>
 う〜ん、この頃は受信契約をせずにラヂオを聴くと、処罰の対象になったのですか・・・?みなさん、ちゃんと払ってますか〜ぁ?それと、放送局型受信機は、のちに回路上の欠陥から、よく故障するので有名だったと聞きますが・・・。ちゃんと2年位で若干の修理費用が掛かると記載されてますね!さすが!

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