ナショナル「6S−10」修復記その1


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦後ST管スーパーラジオその3 > ナショナル「6S−10」修復記その1

修理を依頼された、松下無線(NATIONAL)の「6S−10」 の修復をして見ました。


修復前の様子。このラジオも「ばさーら」さんからの修理依頼品である。戦前の昭和13年頃の6球スーパーである。使用真空管はオリジナルでは、UZ−58(高周波増幅)、Ut−2A7(周波数変換)、UZ−58(中間周波増幅)、UZ−2A6(検波&低周波増幅)、UZ−2A5(電力増幅)、KX−80(整流)であるが、Ut−2A7(周波数変換)、UZ−6D6(中間周波増幅)、6Z−DH3A(検波&低周波増幅)、UZ−2A5(電力増幅)、KX−80(整流)に改造されている。回路図はこちら。


修復前の内部様子。シャーシーの錆があって、あまり状態は良くない。2.5V管から6.3V管に変更されており、内部にヒータートランスが追加されている様である。


内部には幸いな事に、回路図も残っているが・・・。


内部はどこまでがオリジナルなのか解らない。


銘板もご覧のとおり。さてさて、うまく修復出来るであろうか・・・?


修復前のシャーシー上部の様子。錆がかなりひどく、キャビネットも虫食いで粉がたくさん出てくる。


修復前のシャーシー内部の様子。ヒータートランスが追加され、かなり改造されている。


なんと、IFT内部はこんな感じになっていました。中間周波数は175KHzです。


ダイアルパネルには、各放送局のコールサインが記載されている。中央の小さな目盛りはメインの指針が回る間に、ちょうど4回転する。ダイアルの駆動部分が、革のベルトを用いており、これが経年変化でボロボロで代替え品を捜すのにとても苦労しました。最終的には秋葉原の国際ラジオで、何かの駆動用の硬質ゴムのベルトを用いました。


これは何かと思ったら、パディングコンデンサーの様だ。板の締め付け具合で、容量が変わる仕組みである。上のIFTにも見られる構造である。


電気回路の修復が完了したところ。改造されていた部分を元の回路に戻しました。全ての抵抗やコンデンサーを新品に交換してあります。アンテナコイルは断線の為に巻き直しました。トランスは絶縁抵抗のチェックをしましたが、絶縁抵抗も良好で安心しました。いろいろと、回路がおかしな所が多数ありました。


修復が完了したところ。各種調整後、問題無さそうなので完了とする。調整箇所が、すべてシャーシー下部からなので、かなり苦労した。発振器とオシロスコープまで動員して調整したが、感度はそこそこである。修理に、ものすごく苦労したラジオでした。

以上、修復作業時間は約20時間、交換部品代は約4,500円でした。

その後、再びこのラジオと同じ機種を修理しました。詳しくはこちら。またラジオ工房のこちらのページにも、姉妹機の6S−3の修理記録がありました。また日本ラジオ博物館のこちらのページにも紹介があります。最高級機ながら、結構たくさん売れたのでしょうか?

このラジオはここにも紹介がありました。当時の広告はこちら

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月22日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」と、CQ出版社から2010年4月19日発売の「CQハムラジオ」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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