リンカーン「5M−W1」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦後mT管トランス付きスーパーラジオその2 > リンカーン「5M−W1」修復記

修理を依頼された、リンカーン(RINCAN)の「5M−W1」 の修復をして見ました。


修復前の様子。一見mT管のトランスレス機に見えるが、きちんとトランス付きである。骨董屋さんから購入したそうであるが、キャビネットの汚れはすさまじく、下の脚の部分に割れがあり、接着されている。トランスが付いているのでシャーシーがずいぶん重たく、ちょっと落としただけでプラスチックのキャビネットが割れてしまったのであろう。使用真空管は、6BE6(周波数変換)、6BA6(中間周波数増幅)、6AV6(検波&低周波増幅)、6AR5(電力増幅)、5M−K9(整流)である。このラジオは、昭和30年代中頃に販売されていた5球スーパーラジオのキットだったみたいです。(ラジオ工房の記載による)


修復前の内部様子。なんと、真空管が抜かれている。裏蓋が欠品である。回路図も貼られていた様であるが、剥がれている。ご丁寧にマジック書きで、IFTに1と2の番号が書かれている。別に書かなくても良い様な気がするが・・・。それとアンテナ端子とアース端子に、EとAとマジックで逆に書かれている。意味不明である。キット組み立て時に書かれたものであろうか・・・?


修復前のシャーシー上部の様子。ものすごい埃の山である!何とIFTの陰に隠れている真空管2本が抜かれずに残っていた。6BE6と6AV6である。他の真空管配置図は、回路図が失われているのでわからないが、配置から容易に推測できる。整流管はトランスのヒーター電圧が5VでB巻線が片波整流なので、5M−K9と推測できる。現在、この5M−K9は、国産の規格の球なので、大変貴重な真空管です。良く見ると、トランス上部のヒューズが飛んでいた。事故でもあったのであろうか・・・?


修復前のシャーシー内部の様子。火を噴いた跡は無い。危険なペーパーコンデンサーが数個、見える。


修復が完了したシャーシー内部の様子。危険なペーパーコンデンサーを全部交換しました。ケミコンはケミコンテスターでテストしたところ、漏洩電流が多くて危険なので、交換しました。堅くて危険な電源コードも交換しました。これで安心して使用出来ます。通電チェックしてみるとボリュームが最小にしても音が絞れないので、交換することにしました。ところが付いているボリュームはPU切り替え付きなんで、3Pのスイッチ付きなのですが、これは現在入手が困難です。現在容易に入手できるボリュームのスイッチは2Pなんで、PU切り替えが出来ません。


ボリュームは手持ちの新品とほとんど同じ形状であったので、可変抵抗部のみ新品に交換し、スイッチ部分はオリジナルから移植し、PU切り替え機能を残そうと思いましたが、スイッチの回転位置が微妙に合わずに、残念ながらPU機能は諦める事にしました。


修復が完了したところ。キャビネットは水で洗って綺麗さっぱりになりました。各種絶縁試験も実施しましたが、絶縁は良好でした。しばらくテストして問題無さそうなので完了とする。大切にお使いくださいね。

以上、修復作業時間は約10時間、交換部品代は約3,500円でした。

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