日本コロムビア「VA−71」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦後mT管トランス付きスーパーラジオその1 > 日本コロムビア「VA−71」修復記

修理を依頼された、日本コロムビア(COLUMBIA)の「VA−71」 の修復をして見ました。


修復前の様子。低音・高音のトーン調整ツマミと、音量ツマミによって前面のグラフが変化する非常に凝った作りになっている、マニアックで高級な製品だ。以前、真空管式ステレオでもこんな仕組みを見た事がある。使用真空管は、6BE6(周波数変換)、6R−HV1(中間周波数増幅2段)、6BM8×2(低周波増幅2段&電力増幅プッシュプル)、5R−K16(整流)、6Z−E1(同調指示)と大型整流管や複合管を使用した8+1球相当のかなり珍しい豪華な構成である。製品としては、スピーカーが外付けでラジオという位置付けではなく、ラジオチューナー付きアンプとなっている。PHONO入力とAUX入力が有り、入力端子には比較的新しいRCAピンジャックが付いている。音は出るそうであるが、音量が絞りきれず、ロータリーSWの接触不良や、ガリなどの不都合があるそうであるので、修理&点検を依頼される。


修復前の内部の様子。シャーシーの後ろには、赤黒のスピーカー出力端子が付いており、スピーカーのインピーダンス切り替えのロータリーSWも付いている。内部は汚れも少なく保存状態は良好であるが、キャビネットの表面に若干の剥がれが見られる。一応音は出るが、ガリや雑音が多いそうである。大きな故障は無いであろうが、ロータリーSWあたりに何か塗られており、接触が悪いそうである。以前にもロータリーSWの絶縁不良で苦労したラジオがあったので、今回はどうなることやら・・・。マジックアイは、マジックアイテスターで確認したが、かなり明るくコロムビア製のオリジナルであるし、大変貴重な物である。ラジオとして使われるより、アンプとしてレコード再生などに長く使われたのであろう。裏蓋が欠品だったので、製作することにした。


前面のグラフ表示部分である。ラジオのトーン調整と、音量調整によって、視覚的に周波数特性のグラフが表示される仕組みである。なかなか凝った仕組みである!修復完成が楽しみである。


修復前のシャーシー前面の様子。トーンコントロールや、ボリュームコントロールの軸に、それぞれダイアル糸が掛けられて、棒グラフを動かす複雑な動きをする。糸が切れたら大変そうだ!可動部分には、潤滑剤を塗布して動きが良くなった。真空管の6BM8は、2本とも何故かソルベック(ロシア製)が付いている。交換された物であろうが・・・。


修復前のシャーシー上部の様子。埃もなく状態はいいが・・・。


修復前のシャーシー内部の様子。比較的新しい時代の製品らしく、信頼性の低いペーパーコンデンサーは使われておらず、すべてオイルコンデンサーが使われている。回路は増幅段が多いので、部品も通常の5球スーパーの2倍程度と大変多い。豪華な回路である・・・。トランス周りの配線が交換されており、トランスも交換された物か付いている。B巻き線のタップは275Vであり、少々高すぎるので、ドロップ抵抗を追加した。新しく取り付けられているトランスは、真空管アンプ用のトランスらしい。元々トランス上部にヒューズホルダーが付いていたらしく、元々電源コードが出ていたと思われる穴が広げられて縦型のヒューズホルダーが取り付けられており、電源コードは別の穴から出ている。ボリュームやロータリーSW周りに、CRCが塗りたくられており、大変な状況だ!ロータリーSWの接点を磨いたが復活するだろうか・・・?修復には時間と手間が掛かりそうである!ケミコンはケミコンテスターで漏洩電流を検査して、大変良好な試験結果だったので、そのまま使用する事にする。信頼性の低いオイルコンデンサーと抵抗類は、すべて交換する事にした。


電気配線の修復が完成した所。信頼性の低い部品をすべて新品の余裕を持った部品に交換しました。音量が絞りきれない原因は、可変抵抗器の劣化で、最小に回しきっても抵抗値が20KΩ近く有る。秋葉原の専門店で同じ物を見つけて交換した。500KΩ/A型のロングシャフトボリュームは、現在高価で貴重品です!ロータリーSWの接触不良は接点を丹念に磨いたので、接触も良好で問題はなくなった。良かった、良かった・・・。電源コードも安全の為に交換してあります。安全確認の為にメガテスターで各種絶縁試験を実施し、結果も非常に良好でした。


修復が完成した所。各種調整後、1時間程度テストして問題が無さそうなので完了とする。貴重なマジックアイの輝度の消耗を防ぐため、消灯用のスイッチを後部に取り付けた。普段は是非とも消灯してお使いください!高級HiFiラジオだけあって、音も迫力が違う。周波数特性を示すグラフが格好良く、高級感を引き出す。修復は苦労しましたがやり甲斐のある修復でした!是非とも大切にお使いください!

以上、修復作業時間は約14時間でした。

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