東芝「6FM−20」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦後mT管トランスレススーパーラジオその1 > 東芝「6FM−20」修復記

修理を依頼された、東京芝浦電機(TOSHIBA) の「6FM-20」の修復をして見ました。


修復前。FMバンドのみ動作するが、AMとSWは動作しない。どうも局部発振が発振していない様だ。
使用真空管は17EW8(FM用高周波増幅&周波数変換)、12BA6(FM用中間周波数増幅)、12BE6(AM用周波数変換)、12BA6(FM&AM用中間周波数増幅)、12AV6(低周波増幅)、30A5(電力増幅)と、FMレス機の標準的な構成である。東芝の真空管ラジオは鳥の名前+アルファベットであったが、いつの間にか無味乾燥な品番になってしまっている。


さっそくシャーシーを取り出してみる。内部は埃も少なく綺麗である。


シャーシー内部。まずは安全の為、すべてのペーパーコンデンサーを交換する。また抵抗値の狂っている物と、セレン整流器も念のため交換した。電源コードなども汚れを落とす。故障原因特定はその後。


今後のメンテナンスの為、スピーカーやイヤホンジャックなど、キャビネットと接続されている線を取り外しやすくするために、コネクターを取り付けた。いつもの様にボリュームのガリを防止するために接点復活剤にて清掃、またダイヤル可動部分には潤滑剤を塗布した。ダイアル糸も堅くなって切れそうだったので交換して張り直した。


プラスチックキャビネットはいつもの通り水洗いして、40年間の汚れを落としてすっきり綺麗になった。安心して通電できる状態になった事から、故障原因を捜す。トランスレス受信機なので、感電防止の為に絶縁トランスを使用して通電する。やはり局部発振が発振していない。持ち主の話では、AMもSWも当初は聞こえていたが、そのうち聞こえなくなり、電源を一旦切るとまた鳴り出すという事だったので、周波数変換管12BE6のエミッション不足による局発停止が原因かと思って、真空管を新品の球に交換したが、やはりダメだった。


回路図が貼ってある為、回路を追っかけて故障原因を特定する事にする。局発が発振しない原因は、ロータリーSWがFMの位置でAM系の局発を停止する様に12BE6のG1を落とすスイッチ回路のスイッチの回転接点が動かなくなっており、発振が強制的に停止状態となっていた。3バンド機でスイッチ周りが複雑で、原因特定には苦労した。まさか接点が閉じっぱなしとは・・・。これで鳴ると思ったら甘かった。今度は局発の発振が確認出来たが、放送は入感せず。ボリュウムを最大にするとかすかに放送が聞こえる。おやと思い、いろいろといじっていると12AV6へ入るラインをいじると大きなガリが出る。原因はこの部分の半田不良による接触不良であった。半田付けをやり直したら大きな音で鳴りだした。mTレスなんで簡単に直ると思っていたが苦労した。


修復が終わってIFTやトリマなどを調整後、1時間程試験したが問題がなさそうなので完了とする。ところでこのラジオ、下側のシャーシー取り付けネジが絶縁もされずにそのまま下に出ている。ラジオの電源を入れたまま移動などしてこのネジに手が触れると、感電の危険性があるので注意が必要である。
是非とも大切に使ってください。


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