「テレビアン」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦前〜戦時中〜終戦直後のラジオその1 > 「テレビアン」修復記

修理を依頼された、山中電機(TELEVIAN)の修復をして見ました。


修復前、前面のサランネットが無く、飾り金具も錆びている。外観からは戦前の並四か高一ラジオと思って、修理を引き受けたが、実は内部を見て、びっくりする事になった。昭和15年12月30日の電力会社の検査印が付いているので、戦前のラジオに間違いない。


IFTがある事から、戦前の高一ラジオが戦後に5球スーパーに改造された様である。挿してあった真空管を見ると6W−C5、UZ−58,6Z−DH3A、6Z−DH3A、整流管欠品と、中間周波数増幅にUZ−6D6の代わりに戦前の2.5V管のUZ−58が使用されていたので、元々はこの球を使用していた高一ラジオだったのと推測される。オリジナルの球構成は、UZ−57、UZ−58、UY−47B、KX−12Fであろうか?ただし出力管の場所に、通常は6Z−P1あたりが挿さっているハズなのにヒーター切れの不良6Z−DH3Aが挿して有るのは全然わからず。整流管も欠品であることから、骨董品屋さんが訳もわからずに適当な真空管を挿しておいた物であろう。電源プラグもヒューズも欠品だった事から、単なる飾りとしてのラジオの位置づけで売られたのだろう。戦後にスーパーに改造されていなければ良かったのに残念である!


シャーシー内部。IFTの穴が綺麗に開いていない事から、素人が後から開けた穴であろう。でも戦前の2.5V管と戦後の6.3V管が混成で使われているが、電源トランスはヒーター巻線が追加巻き直しされた物だろうか?外見はオリジナルらしい縦型のトランスが付いているが、詳細は不明。少し錆が見られる。さて、修復は依頼主と相談して修復金額を抑えるためと、戦前のラジオの音を再現するために戦後6.3V管で高一ラジオに戻す事にする。真空管構成はUZ−6D6、UZ−6C6,6Z−P1、(ダイオード整流)とする。左の100KΩの可変抵抗器は戦前のオリジナルらしいが、配線が繋がっていないので、元々から付いていた物らしい。真ん中が電源スイッチ、右側が追加改造された音量調整の様である。


シャーシー上部。錆びが出ていて汚い状態。スピーカーはフィールドダイナミックスピーカーが使われている。埃は少ないので、清掃された物であろう。戦前の高一ラジオにしては、大きめのシャーシーなんで、5球スーパーへの改造も比較的容易だったであろう。


目盛り板を見ると、いかにも戦前のラジオの雰囲気。でも通常は時計回りで周波数が増加する方向なのに、これは逆で時計回りで周波数が下がる方向。とりあえず指針も黒く再塗装しなおした。潤滑剤を塗布して、動きも良くなった。


とりあえずサランネットを張り、飾り金具を塗装した。これだけでも見た目は大分良くなった。今回はキャビネットはそのままとする事にする。またいつものとおり、部品をすべて取り払ってシャーシーを再塗装した。ついでに電源トランスも再塗装して動作試験も実施した。フィールドダイナミックSP使用なんで、B電圧が高めである。そのスピーカーも残念ながら、フィールド励磁側のコイルが切れており、交換が必要な事がわかった。やはりこの頃のラジオはコイルの断線故障が多い。


修復が完了したシャーシー。電源トランスなども再塗装して綺麗になったが、IFTの余計な穴が気になるので、後ほどアルミ板でフタをした。使用真空管は入手し易い戦後の6.3V管でUZ−6D6(高周波増幅),UZ−6C6(再生検波)、6Z−P1(電力増幅)、(ダイオード整流)とした。


シャーシー内部の様子。配線は10色の耐熱電線を使用してあり、抵抗、コンデンサー類も新品を使用。整流はダイオードにて行っているが、整流管のソケットも付けてあり、すぐに真空管を使用できる様にしてある。5球スーパーに比べると部品も少なく、すっきりしている。修復前と比べると歴然の差!


修復が完成したラジオ。時代を感じさせる独特の発振がかった再生式ラジオの音である。


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