山中無線「ED−7」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦前〜戦時中〜終戦直後のラジオその2 > 山中無線「ED−7」修復記

修理を依頼された、山中無線(TELEVIAN)の「ED−7」 の修復をして見ました。


修復前の様子。戦前の並四か高一ラジオの様に見えるが・・・。


修復前の内部の様子。内部を見ると何とIFTが見える。残念ながら戦前の高一ラジオが、戦後に5球スーパー受信機に改造された物らしい・・・。終戦後、5球スーパーに改造するのが流行って、改造されたラジオは何度か修理した事があるが、きちんと改造されている物は少なく、無理に改造された物が多いので、修復は大変になる場合が多いのである。使用真空管は、6W−C5(周波数変換)、UZ−6D6(中間周波数増幅)、6Z−DH3A(検波&低周波増幅)、6Z−P1(電力増幅)、KX−12F(整流)であるので、まともな構成である。当然トランスも交換された物であろう。このラジオは戦前の改造前の姿に戻すか、性能がいいスーパーのまま修復するか悩む所である。依頼主の方と相談しながら修復したいと思う。ちなみに高一ラジオに戻すのなら、真空管はUZ−6C6(高周波増幅)、UZ−6D6(再生検波)、6Z−P1(電力増幅)、KX−12F(整流)と、1本真空管を交換(UZ−6C6)すれば済むのであるが、高一コイルと再生バリコンを用意しなくてはなりません。スピーカーはオリジナルでは8インチ(20cm)のマグネチック・スピーカーが付いていたのが、6.5インチ(16cm)のダイナミック・スピーカーに変更されている。残念な事に出力トランスの1次側が断線している。参考までに、5球スーパーの回路と、高一ラジオの回路をアップしておきます。この2つの回路の違いは、周波数変換するかそのまま検波するかの違いです。感度や分離は圧倒的に5球スーパーの方が勝りますが、高音の伸びは理論上は高一ラジオの方が勝ります。高一ラジオには、再生調整という独特の調整が必要なのが欠点です。それが戦前のラジオらしくていいのですが・・・。


修復前のシャーシー上部の様子。埃が積もっていて大変汚い状態!電源トランスは、改造の際に交換されている。2個あるIFTのうち、後段のは小型で調整ネジが下側の1本しかない珍しいタイプである。いずれもトリオ製である。こんなIFTは初めて見ました!


修復前のシャーシー内部の様子。改造は整然と行われているが、改造前のチョークコイルや、ミゼットバリコンもそのまま残っている。電源トランスのB巻線のタップが、320Vに接続されている。このタップは、フィールドダイナミックスピーカーを使用する特に、フィールドコイルを励磁する時に使用するタップなので、B電圧が高くなり過ぎます。ここでは270Vのタップの方を使用するのが正しいです。(本当は250Vで十分なのですが、250Vのタップがありません!)


ダイアル目盛りは、戦前の高一ラジオであるから、0〜100分割目盛りで、0側の方が周波数が高くなる逆回転タイプである。一応小さく周波数目盛りも書いてある。


キャビネットは洗浄し、万能ワックスクリーナーで磨き、サランネットを張り替え、ダイアル窓の飾り金具は金色に再塗装しました。見違える程、綺麗になりました!さーて、修復は5球スーパーのままにしましょうか?オリジナルの高一ラジオに戻しましょうか・・・?


シャーシーは完全分解し、再塗装を実施し大変綺麗になりました。電源トランスも別途再塗装しました。修復は、金額と性能を優先させて、5球スーパーラジオのまま修復を実施する事にしました。キャビネットと不釣り合いですが・・・。


シャーシーにおおまかな部品を取り付けてみました。修復前と比べてみてください!次は内部の電気配線に取りかかります。


修復が完成したシャーシー内部の様子。配線はすべてやり直し、抵抗やコンデンサー類はすべて交換しました。ヒューズホルダーも交換し、電源コードには袋打ちコードを使用しました。高一ラジオのなごりで、豆コンが付いているが、遊んでいる状態である。


修復が完成したところ。外観は戦前のラジオですが、内部は5球スーパーなので、感度良くガンガン鳴ってくれます。各種調整したが、戦前のラジオを無理に5球スーパーに改造してある為に、ダイアル目盛りがぴったり合わない。これは戦前と戦後の放送周波数範囲が若干異なる事と、コイルとバリコンの規格の違いからである。適当なところで妥協するしかない。1時間程テストして問題なさそうなので完了とする。是非とも大切にお使いください!


その後、依頼主の方の自宅で使用している写真をお送り頂きました!大切に使って頂いている様で、感謝いたします。ありがとうございました!

以上、ここまでの修復作業時間は約15時間程度でした。

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