山中無線「エリミネーター」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦前〜戦時中〜終戦直後のラジオその2 > 山中無線「エリミネーター」修復記

修理を依頼された、山中無線(TELEVIAN)の「エリミネーター」 の修復をして見ました。


修復前の様子。昭和1桁製造のラッパ付きのラジオの修復は初めてなので、めっちゃ緊張するのである・・・。(>_<)


状態はそれほど悪く無さそうだ。キャビネットは依頼主の方が再塗装しており、大変綺麗な状態である。ツマミもオリジナルであろう。修復は手強そうであるが、修復のやり甲斐があるラジオである!(^ ^ ;)


修復前の内部の様子。欠品は無さそうだが、平滑用のペーパーコンデンサーがブロック型電解コンデンサーに交換された跡があり、真空管も交換され回路もいじられている。オリジナルの真空管はUY−227(高周波増幅)、UY−227(再生検波)、UX−226(低周波増幅)、UX−112A(電力増幅)、KX−112B(整流)であったらしいが、現在付いている真空管は、UY−24B(高周波増幅)、UY−227(再生検波)、UX−26B(低周波増幅)、UX−12A(電力増幅)、KX−80(整流)である。整流管にKX−80を使うのはかなり無理があり、トランスが危ないので、KX−12Fに交換しなくてはならない。いずれの真空管もとりあえずヒーターの断線はなく良かった良かった・・・。ラッパ型のスピーカーは、振動板が欠品との事であるが、バラバラの状態である。AFT(段間トランス)も電源チョークコイルも断線は無く良好!内部には木製のシャーシーの上に、直接真空管やトランス類が木ねじで配置されており、抵抗やコンデンサー類は、板の下側に付いている構造となっている。また、電源スイッチは本体には無く、電源コードに中間スイッチが付いている。回路図はこんな感じである。(^ ^ ;)


内部の木製シャーシーを取り出した所。若干の汚れはあるが、時代を考えると大変保存状態は良好である。


木製の前面パネルも、シャーシーと一緒に取れる仕組みである。


修復前のシャーシー内部の様子。抵抗やコンデンサーは、ほんのわずかである。


電気回路の修復が完成した所。すべての抵抗・コンデンサー類を交換し、配線もほとんどやり直しました。配線は昔の雰囲気を壊さない様に、すべて目立たない黒のビニール線を用いて配線しました。また不要な大型ペーパーコンデンサーは配線は外してそのまま付けておきました。当然、電源コードとプラグは、丸形プラグと袋打ちコードを使用しました。中間スイッチは、オリジナルを清掃&レストアして使用しました。各種絶縁抵抗試験も実施しましたが、良好な結果でした。


ラジオ本体は、マグネチックスピーカーをつなげると音が出る所まで修復が出来ました。感動的な昔の音がします。真空管の数が多い割には、大きな音は出ません。ツマミは左側が再生調整・中央が同調・右側が同調微動調整となっている。調整箇所が3つもあり、やや受信がめんどうくさい。今度はラッパ型スピーカーの修復に取りかかる。早くラッパ型スピーカーから音を聞きたいものである。(^ ^ ;)


スピーカーは洗浄できる部分は洗浄し、綺麗になりました。内部は大変な汚れでした・・・。( -_-) 台座の裏面には、1926年5月と書いてあります。昭和元年製でしょうかねぇ?すごいですね!・・・と、思って分解したら、何と内部には普通の7cmのダイナミックスピーカーが入っていた。(>_<) どうもスピーカー部のコイルが断線して、内部をそっくり入れ替えたらしい。非常に残念であるが、年代を考えると仕方がないのかもしれない。内部の部品が入手出来ない為、残念であるが、このままとする。ダイナミックスピーカーを駆動する為には、出力トランスを介さなくてはならないので、依頼主の方の意向により中継ボックスを作り、スピーカーを別の物も流用できる様にした。


修復が完了したところ。ラッパ型スピーカーは、ちょっと偽物ですが、それなりの雰囲気で鳴ってくれる。製造から75年近く経ったラジオが、見事に生き返りました。戦火をくぐり抜けて来たこのラジオ、当時はどんな放送を聞いていたのでしょうかねぇ・・・?各種テストを実施して問題が無さそうなので完了とする。過去の歴史の遺産である大変貴重なラジオです。是非とも大切にお使いください!!!(また僕も、こんな貴重なラジオを修復出来た事を光栄に思います。自分もいつかは入手したいラジオです・・・が、高そうですね!)

以上、修復作業時間は14時間程度でした。

inserted by FC2 system