素人組み立て品「million SPECIAL MADE」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦後ST管スーパーラジオその2 > 素人組み立て品「millin SPECIAL MADE」修復記

修理を依頼された、素人組み立て品の「million SPECIAL MADE」の修復をして見ました。


修復前の様子。使用真空管は、6W−C5(周波数変換)、UZ−6D6(中間周波数増幅)、6Z−DH3A(検波&低周波増幅)、UZ−42(電力増幅)、KX−80(整流)である。かなりたばこのヤニで汚れている。戦後直後のST管ラジオでは珍しい2バンド対応である。短波放送が解禁されて間もなくの物であろうか?キットだから2バンドに出来たのであろうか?


修復前の内部の様子。戦後直後に流行った5球スーパーラジオの組み立てキットである。内部の保存状態は年代相応に埃が積もっている。真空管はテストして、使えそうであるが、残念ながら出力トランスの1次側が断線している。この頃のラジオには多い故障である。断線したまま通電すると、出力管を痛める原因になりますので、必ずチェックしましょう!


修復前のシャーシー上部の様子。埃を取り払い、洗浄できる部分はきれいに清掃しました。ダイアル糸が切れているので、張替えが必要です。シャーシーには、若干錆びが見られるので、防錆剤を塗って錆防止処理を実施しました。IFTは古い規格の463KHzタイプが使用されています。


修復前のシャーシー内部の様子。素人が組み立てたキットだけあって、イモ半田や空中配線が多数見られ、あまり上手な出来ではない。配線の絶縁被覆の劣化が見られるので、すべての配線をやり直す事にする。もちろんすべての抵抗・コンデンサーも交換する。何と、このラジオ、電源スイッチが付いていない。電源は裏面のリモートコネクターにより、外部SWで入り切りしていた様だ。音量調整のスイッチは、PU切り替えに使用しているだけである。また出力管にUZ-42を使用しているのに、出力トランスは12KΩのタップに接続されている。6Z-P1と間違えたのであろうか?7KΩの端子に接続するのが正しい。また、B電圧のトランスのタップも310Vに接続されている。310Vを使うのはフィールドダイナミックSPの時である。ここでは250Vのタップを使うのが正しい。SPの出力トランスへ行くB電圧が、平滑回路の電圧ドロップ抵抗の後に接続されており、ドロップ抵抗に電流が流れてがかなり発熱したらしく、焼けている。組み立てキットだけあって、訳がわからない事が多い!


キャビネットは完全分解して、万能ワックスクリーナーにて清掃し、飾り金具は再塗装し、サランネットは張替えして見違える程綺麗になりました!どうです?


電気配線の修復が完成した所。すべての配線をやり直し、抵抗とコンデンサーをすべて新品に交換しました。また不都合のある配線を修正してます。これで安心してラジオを楽しむ事ができます。ダイアル糸の張り替えは作業がしにくく、大変苦労しました。糸の可動部分は潤滑剤で動きを良くしました。また、ボリュームはガリ防止の為、分解して接点復活剤にて清掃を実施してあります。電源コードも新品旧式の丸形プラグと袋打ちコードに交換してあります。また電源SWは、ボリュームのSWを利用し、PU(ピックアップ)切り替えは使用出来なくなりました。


修復が完成したところ。バンド切り替えスイッチが多少接触が悪い様だ。またいくら調整してもダイアル目盛りがぴったり合わない。これは特に終戦直後の混乱期に、バリコンやコイルなどのラジオの部品の規格が統一されていなかった頃に多発した現象である。適当な所で妥協するしかない。各種調整後、1時間程テストして問題が無さそうなので、完了とする。是非とも大切にお使いください!


その後、依頼人宅で活躍しているラジオの様子の写真をお送り頂きました。本当にありがとうございました。末永くご愛用ください!

以上、ここまでの修復作業時間は、約11時間でした。


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