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(続)真空管ラジオ修復記 > ラジオ歴史館

ここでは、真空管ラジオの年代別の発達の過程、歴史を振り返ります。各時代背景と、回路技術の発展や好まれたラジオのスタイルから、その頃の庶民の生活を想像してみては如何でしょうか?これらの綺麗に修復されたラジオから流れてくる音を楽しむのも、ささやかな贅沢です。暗い戦争時代を生き抜いたラジオは、戦争時代には、きっと庶民を勇気付けてくれた事でしょう・・・。皆さんは、どの頃のラジオがお気に入りでしょうか?ラジオの発達の歴史を振り返りましょう!

学生時代は興味が無くて日本史をよく勉強しなかった僕は、昭和の歴史を知る為にユーキャン出版局の「昭和と戦争〜語り継ぐ7000日〜」というビデオを購入してみました。結構おもしろかったし、ショックでした・・・。 (^ ^ ;) ちゃんとそれらしきラジオも映ってました・・・。

各年代別の、代表的なラジオを紹介します。多少の間違いはご容赦!(なお、それぞれのラジオの写真をクリックすると、詳細紹介が表示されます。)

誠文堂新光社から2007年11月中旬に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

<鉱石ラジオ>
 ← このラジオは、僕が修理したラジオではありません。
大正13年〜昭和初期頃
ラジオ放送が始まった頃は、さぐり式鉱石ラジオが主流であったが、放送局の出力も弱く、聞く事が出来る人は限られていた。音はレシーバーで聞くので、1人しか聞けない欠点があった。

<初期型レシーバー受信機>
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東京電気(CYMOFONE)「B−1」
昭和初期頃
鉱石受信機に増幅器を付けた程度で、まだレシーバーで聞くUX-199やUX-201などの真空管を利用した、電池式の1〜2球のラジオが出現したが、電池式で取り扱いが面倒で、まだまだ高価であまり普及しなかったらしい。この頃は不景気であったが、まだ平和な時代であった。世界恐慌の影響を日本も受け始める。

<ラッパ付きエリミネーターラジオ>
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山中電機(TELEVIAN)「エリミネーター」
昭和5年〜7年頃 2.5V系ナス管使用/AM、1バンド
使用真空管 : UY−227(高周波増幅)、UY−227(再生検波)、UX−226(低周波増幅)、UX−112A(電力増幅)、KX−112(整流)
整流管や傍熱管の発売により、ラジオの電源が電灯線から取れるいわゆる「エリミネーター・ラジオ」の出現で、ラジオが普及し出す。この頃は1つの真空管で高周波と低周波の2回増幅をするレスレックスラジオなどという回路も有ったが、発振し易かったりして、使いにくかった。スピーカーは本体とは別で、感度が良いラッパ型のスピーカーなどが使われた。真空管はまだナス管と呼ばれる、電球の様な形で、性能も悪かった。昭和6年に満州事変が起こり、日本は海外侵略戦争への道を歩む事になる。またこの事件によって、ラジオ放送史上初めての臨時ニュースが放送され、ラジオ視聴者が増えたそうだ。
戦前型五球エりミネーター回路図

<カセドラル型ラジオ>
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大阪IMPERIAL PHONORADIO社製の「KNIGHT RECEIVING SET」
昭和10年前後頃 2.5V系ナス管使用/AM、1バンド
使用真空管 : UY−227(再生検波)、UY−247(電力増幅)、KX−112(整流)
スピーカーがマグネチックスピーカーになり、ラジオ本体に内蔵された。グリット再生検波回路の出現で、ラジオは高性能になった。いわゆるカセドラル型という、てっぺんが丸い形のラジオが流行った。
戦前型並三回路図2

<ミゼット型ラジオ>
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日本精機(CROWN)「R10」
昭和11年前後頃 2.5V系ST管使用/AM、1バンド
使用真空管 : UY−27A(再生検波)、UX−26B(低周波増幅)、UX−12A(電力増幅)、KX−12B(整流)
いわゆるミゼット型と呼ばれる縦型のラジオである。この頃、航空機が流行り、エアプレーンダイアルという飛行機の計器にの様な同調指示部分がラジオに流行ったのである。真空管も、ナス管に代わり、性能の良いST管も使われ始めた。昭和11年に2.26事件が勃発し、次第に軍部の勢力が増して、日本は軍国主義に突入するのである。ここでもラジオのニュースが重大事件を放送するのである。
戦前型並四回路図1

<戦前型・並四&高一ラジオ
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松下無線(NATIONAL)「国民受信機Z−3」
昭和13年前後頃 2.5V系ST管使用/AM、1バンド
使用真空管 : UY−24B(高周波増幅)、UY−24B(再生検波)、UY−47B(電力増幅)、KX−12F(整流)
真空管も4極管・5極管の出現で高性能化し、ラジオセットは小型化し、横型のラジオが多くなる。戦争の足音がだんだん近づいて来る。「贅沢は敵だ!」という言葉が流行り、ラジオも次第に粗末になってゆく。この頃(昭和14年)の日本放送協会のラヂオ案内パンフレットはこちら
国民受信機Z−3回路図

<戦前型・スーパーラジオ>
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松下無線(NATIONAL)「6S−10」
昭和13年前後頃 2.5V系ST管使用/AM、1バンド
使用真空管 : UZ−58(高周波増幅)、Ut−2A7(周波数変換)、UZ−58(中間周波増幅)、UZ−2A6(検波&低周波増幅)、UZ−2A5(電力増幅)、KX−80(整流)
戦前にも、国産で僅かながらスーパーへテロダインラジオが製造されていた。しかし、放送局がNHKの1〜2局だけなので混信の心配も無く、高価なスーパーラジオはほとんど製造されなかった。
6S-10標準回路図

放送局型受信機
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松下無線(NATIONAL)「放送局型第123号受信機」
昭和16〜18年頃 トランスレス用ST管使用/AM、1バンド
使用真空管 : 12Y−V1(高周波増幅)、12Y−R1(再生検波)、12Z−P1(電力増幅)、24Z−K2(整流)、B−37(安定抵抗管)
昭和16年にパールハーバー奇襲により太平洋戦争が始まり、戦局が悪化すると、NHKがラジオの規格を制定して金属資源節約の為に、トランスレス受信機を各メーカーが同じ回路と価格で製作したが、粗末な作りと回路上の欠陥から、よく故障が起きたらしい。日本の敗戦も色濃くなり、零戦で体当たりする神風特攻隊などが、出現する。昭和20年の各地への空襲で、ラジオもたくさん失われる事になるのである・・・。
放送局型第123号受信機回路図

<戦後型・並四&高一ラジオ>
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原口無線電機(CARAVAN)「M−14」
昭和21年〜23年頃 6.3V系ST管使用/AM、1バンド
使用真空管 : UZ−6D6(高周波増幅)、UZ−6C6(再生検波)、6Z−P1(電力増幅)、KX−12F(整流)
戦争終了直後の混乱期には、真空管の製造が間に合わず、また各メーカーが真空管のヒーター電圧をそれまでの2.5Vから6.3Vに変更したので、だいぶ混乱した様だ。ヒーター電圧の6.3Vは、その頃の自動車のバッテリーの電圧から決まったもので、カーラジオにも使用する為である。外観は戦前の横型ラジオとあまり変わらないが、内部の真空管の性能は向上している。終戦時、昭和天皇の玉音放送によって、戦争が終結して平和な生活が取り戻される頃である。終戦後は日本はGHQ(占領軍)の支配下にあるのである。戦後の混乱期で、ラジオの生産もままならない時代だった様だ。
戦後型高周波1段増幅4球回路図

<ST管・5球スーパーラジオ>
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八欧無線(GENERAL)「6S−6」
昭和25年〜27年頃 6.3V系ST管使用/AM、1バンド
使用真空管 : 6W−C5(周波数変換)、UZ−6D6(中間周波数増幅)、6Z−DH3A(検波&低周波増幅)、UZ−42(電力増幅)、KX−80BK(整流)、EZ−6E5(同調指示)
戦後の混乱も収まって、民衆が娯楽をラジオに求め、各ラジオメーカーもそれまでの並四や高一ラジオに代わって、アメリカのGHQの指示でスーパー・ヘテロダイン受信機を製作した。マジックアイ(同調指示管)が流行り、ラジオも豪華になってきた。民間放送も始まり、放送周波数範囲も若干拡大された。短波放送も解禁されたが、まだ短波放送を受信できるオールウエーブ受信機は少なかった様だ。GHQの占領も終了し、日本はやっと独立した頃である。戦後の混乱もだいぶ収まって、素人が組み立てたラジオキットもだいぶ出回った様だ。
標準トランス付き5球スーパー回路図2

<電気蓄音機>
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メーカー不詳「大型電蓄」
昭和25年〜30年頃 6.3V系ST管やGT管使用/AM、1バンド
使用真空管 : 6SA7−GT(周波数変換)、6SK7−GT(中間周波数増幅)、6SQ7−GT(検波&低周波増幅)、6SJ7−GT(低周波増幅)、6V6−GT(電力増幅)、5Y3−GT(整流)、EZ−6E5(同調指示)
終戦後は娯楽が少なく、一部の余裕がある家庭ではこの様な立派な大型電蓄によって、SP盤レコードやラジオ放送を楽しんだ。

<mT管・5球スーパーラジオ>
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松下電器産業(NATIONAL)「UA−625」
昭和33年〜35年頃 6.3V系mT管使用/AM・SW、2バンド
使用真空管 : 6BE6(周波数変換)、6BD6(中間周波数増幅)、6AV6(検波&低周波増幅)、6AR5(電力増幅)、6X4(整流)、EZ-6E5(同調指示)
日本ではST管の次のGT管はあまり普及せずに、すぐにmT管に移行した。短波放送もほとんどのラジオで受信可能になり、ダイアル照明も派手なラジオが巷にあふれた。戦後の混乱から復興し、「もはや戦後ではない」という言葉が流行った。皇太子(現天皇)を皮切りに、テレビもだんだん普及してきた。
標準トランス付き5球スーパー回路図

<mT管トランスレス・5球スーパーラジオ>
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松下電器産業(NATIONAL)「DX−490」
昭和35年〜37年頃 トランスレス用mT管使用/AM・SW、2バンド
使用真空管 : 12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)
ラジオは一家に一台から、1人に一台の時代になり、小型・軽量・安価のトランスレスラジオが主流になった。マジックアイは省略されている物が多い。トランスレスラジオは、パイロットランプが薄暗く1個しか点灯できないので、かなり地味になった。一方、国民の生活はかなり豊かになった。
標準トランスレス5球スーパー回路図

<Hi−Fi・スーパーラジオ>
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松下電器産業(NATIONAL)「LA−720」
昭和35年〜38年頃 6.3V系mT管使用/AM・SW1・SW2、3バンド
使用真空管 : 6BA6(高周波増幅)、6BE6(周波数変換)、6BA6(中間周波数増幅)、6AV6(検波&低周波増幅)、6AV6(低周波増幅)、6BQ5(電力増幅)、6CA4(整流)、6CD7(同調指示)
一方では安価なトランスレス機に対して、高級HiFi仕様の豪華な大型ラジオも発売され、ラジオの価格帯は2極化しました。こちらはトランス付きなので、パイロットランプもたくさん点灯させて、とても派手で豪華です!

<FM付き・スーパーラジオ>
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春日井無線(TRIO)「形式不明」
昭和38年〜40年頃 トランスレス用mT管使用/AM・SW・FM、3バンド
使用真空管 : 17EW8(FM用高周波増幅&AFC)、17EW8(FM用局部発振&周波数変換)、12BA6(FM用中間周波数増幅)、12BE6(AM用周波数変換)、12BA6(FM&AM用中間周波数増幅)、12AV6(低周波増幅)、30A5(電力増幅)
トランジスターの出現により真空管ラジオも末期の頃、FM放送も始まり、整流もセレン整流器を用いたFM付き3バンドトランスレスラジオが発売された。整流管を使っていないので、パイロットランプは普通の豆電球を使用する事が出来ずにネオン管を使ったものが多く、ますます暗くて寂しいのである・・・。トランジスターラジオが主流になりつつあり、真空管ラジオは姿を消していくのである・・・。東京オリンピックを皮切りに、テレビもカラー放送が主流となってきた。
標準FM付き3バンドトランスレススーパー回路図

<トランジスターラジオ>

昭和30年頃〜現在
トランジスターの発明により、その後はトランジスターラジオへと、またIC&LSI等の集積回路の発明により、ワンチップラジオへと発展していくのであるが、本HPは真空管ラジオ専門なので、以降のラジオに関しては、省略させて頂く。ちなみに、日本最初のトランジスターラジオは、東通工(現SONY)が昭和30年に発売している。

不明なラジオの用語は、新ラジオ用語辞典を参照ください。
ラジオ放送の歴史は、日本電気公論社様の、ラジオの昭和史をご参照ください。
戦前の写真や広告などは、ごちゃまぜ歴史写真をご参照ください。
太平洋戦争開戦時の臨時ニュース音声一部はこちらです。是非お聴きください。!
終戦を告げた昭和天皇の玉音放送音声全文はこちらです。是非お聞きください!
戦後からの、昭和の懐かしい物品などは、昭和レトロコレクター天国をご参照ください!
ラジオのメーカー別一覧は、メーカー別インデックスをご参照ください!
今でも見られる懐かしい物は、写真で見る昭和の時代をご参照ください!
歴史上の記載やラジオの年代など、多少の間違えはお許しください!

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」と、2009年10月22日に発売の「真空管レフレックスラジオ実践製作ガイド」と、CQ出版社から2010年4月19日発売の「CQハムラジオ」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!


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